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22 別離
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祀鶴歌は途中で何度も転倒し,彼を支えるあたしも転んで,石筍であちこちを傷つけた。
「もうすぐ杉の森に抜けるはずだから……ここに来たとき1度は逃げた……」
だが,鍾乳洞は延々とのびていき,果ては見えそうになかった。銃の部品と部品とのかちあう音を聞いた。
「そこまでだ――」
振りかえれば劉が立っている。既に狙いは定められていた。
「逃げろ!」劉の背後から,蜜瑠が銃を押さえた。銃口から火花が走り,銃弾が頭上を掠めて洞壁にあたった。
上方から鍾乳石が幾筋も落下する。劉と蜜瑠が銃をとりあい,激しく揉みあって洞内を転げまわった。
祀鶴歌に促されて先を急いだ。鍾乳洞の幅が急激に細くすぼまり,天井も低く押しせまっていた。徐々に身を低めて移動したが,ついに最後には匍匐で前進した。銃声が数度響きわたる。
祀鶴歌に足裏を強く押された。鍾乳洞を抜けて杉の森のなかに出た。
洞穴を這いあがってきた祀鶴歌と視線があって笑みがこぼれた。だが彼の表情が一瞬のうちに凍りつく。
劉の声が追ってくる。アレクサンドロフのもとへ帰るのかと悲鳴まじりに怒鳴っている。
抱きあって急勾配の崖道に重い足を進めた。
低い唸り声が耳を抉った。気まぐれな月影の夜に無数の眼が青光りしている。周囲を野犬の群れにとりかこまれていた。
満身創痍の2人を,血に飢えた狂気の両眼が八方から追いつめる。
劉の絶叫も間近に迫っていた。
「約束だよ。必ず日本に帰ってね――」祀鶴歌があたしの額に唇を寄せた。「さようなら」
崖の間際に立って野犬の集団をひきつけてから祀鶴歌は舞った。いきりたった野犬たちが咆哮をあげながら急斜面を駆けおりていく。
ヒトリシズカの群生する道が遥か彼方へとのびていた。
「もうすぐ杉の森に抜けるはずだから……ここに来たとき1度は逃げた……」
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「そこまでだ――」
振りかえれば劉が立っている。既に狙いは定められていた。
「逃げろ!」劉の背後から,蜜瑠が銃を押さえた。銃口から火花が走り,銃弾が頭上を掠めて洞壁にあたった。
上方から鍾乳石が幾筋も落下する。劉と蜜瑠が銃をとりあい,激しく揉みあって洞内を転げまわった。
祀鶴歌に促されて先を急いだ。鍾乳洞の幅が急激に細くすぼまり,天井も低く押しせまっていた。徐々に身を低めて移動したが,ついに最後には匍匐で前進した。銃声が数度響きわたる。
祀鶴歌に足裏を強く押された。鍾乳洞を抜けて杉の森のなかに出た。
洞穴を這いあがってきた祀鶴歌と視線があって笑みがこぼれた。だが彼の表情が一瞬のうちに凍りつく。
劉の声が追ってくる。アレクサンドロフのもとへ帰るのかと悲鳴まじりに怒鳴っている。
抱きあって急勾配の崖道に重い足を進めた。
低い唸り声が耳を抉った。気まぐれな月影の夜に無数の眼が青光りしている。周囲を野犬の群れにとりかこまれていた。
満身創痍の2人を,血に飢えた狂気の両眼が八方から追いつめる。
劉の絶叫も間近に迫っていた。
「約束だよ。必ず日本に帰ってね――」祀鶴歌があたしの額に唇を寄せた。「さようなら」
崖の間際に立って野犬の集団をひきつけてから祀鶴歌は舞った。いきりたった野犬たちが咆哮をあげながら急斜面を駆けおりていく。
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