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②カルディナーレという男-3-
しおりを挟むもし、ローザリアが癇癪持ちの我が儘でなければ、自分は二人の婚約を祝福出来たのだろうか?
『いや、出来ないだろうな』
月を眺めているカルディナーレが、エカルラートの隣に居るのがローザリアでなく、他の令嬢であっても当然の顔で彼の傍に居るところを想像しただけで虫唾が走るのだ。
誰よりも綺麗で優しくて芯が強いエカルラートの事を想うだけで、カルディナーレの心が満たされる──・・・。
『そうか・・・。俺はエカルラートを幼馴染みとしてではなく・・・』
エカルラートという人間を愛しているんだ
夜空に鮮やかに輝く月齢十二の時の月の光がカルディナーレを優しく照らす。
その時、カルディナーレの背中に巨大で淡い光を帯びている純白の一対の翼が出現したのだ。
『と、父様!母様!』
何の前触れもなく自分の背中に翼が生えたのだから、カルディナーレは声を上げて両親が居る居間へと駆け付けた。
『『カルディナーレ!?』』
突然、息子が羽を生やして現れたものだから驚いてしまった両親であったが、ここは【武のリヒトシュタイン】と謳われているからなのか、すぐに我に返った二人───カイザーとグレースはカルディナーレに先祖の事を話す。
五代前───カルディナーレから見て四代前に当たるリヒトシュタイン家の当主が、美貌と魔力に長けているのは天使の血を引いているからだと言われているエルグラード家の娘を娶った。
政略結婚であったが二人の仲は良好で、当主は愛妾を作らず彼女との間に数人の子供を儲けた。
その子孫がカイザーやカルディナーレである。
『王家が権威と箔付けの為に神の子孫を称する事はあるけれど、エルグラード家が天使の末裔というのは本当だったのね・・・』
『母様、今は感心している場合ではありません!どうすれば、俺に生えた羽が消えるのかを考える方が先でしょうが!!』
『言われてみればそうだな』
確か、離れの書庫に天使について書いている書物と、先祖の手記があったはずだと呟きながらカイザーは書庫へと向かう。
待つ事暫く
冊子を手にしたカイザーが居間に戻って来た。
『先祖の日記には天使についてこう書かれている。天使は男しか存在しない・・・らしい。この事は神話や伝説でも語られている通りだな。ならば、どうやって子を成したのかだが・・・人間の女性と交わるか、一部の天使が満月期の間だけ女性に変化していたようだ』
但し、それが事実かどうかは先祖も詳しく知らないみたいだが・・・
『えっ!?』
父親の『女性に変化』という言葉に驚きを隠せないカルディナーレが、慌てふためきながら自分の身体に触れる。
『・・・・・・あった』
男としての象徴が消えていなかった事にカルディナーレは安堵の息を漏らす。
『父様、聞いてもいいですか?エルグラードの血を引いている人間の全てが天使に変化するのですか?そして、ご先祖様の日記に元に戻る方法は書いていないのですか?』
『・・・・・・書いていないな』
『そう、ですか・・・』
カイザーの言葉にカルディナーレは力を落とす。
『カルディナーレ、仮に元に戻らなくても私達の息子である事に変わりないわ』
『母様・・・』
天使となった自分を優しく抱き締めてくれただけではなく息子と断言してくれた母の言葉に、カルディナーレは静かに涙を流す。
※エカルラートは腹黒なところもありますが、そういうところも欠点も含めてカルディナーレは彼の事をもっと知りたいと思うし愛しています。
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