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 「夏希殿、話がある」

 書庫から宮殿に戻った後、フェルゴヴェールさんに呼び出された私はフェルゴヴェールさんの部屋に向かったのだけど・・・・・・何で押し倒されちゃってるの?

 「夏希が私と同じ存在になれば・・・」

 この世界で家族が出来れば夏希の心からは望郷の念が消え失せ・・・潤一君とやらの事を思わなくなるのだろうか・・・?

 (ヤバい!顔面偏差値100イケメンがイケボで囁くのも、呼び捨てにするのもヤバいというより卑怯だって!!!)

 もしかして・・・・・・イケメンの悪魔が勇者や騎士の青年に淫紋を刻んでから子宮を作って子供を産ませるっていうBLのエロ同人誌的な展開が私に襲い掛かるって言うの!?

 だって・・・フェルゴヴェールさんの手が私のお腹に触れているもの!

 ああいうのは腐女子の妄想による産物を漫画や小説という形で楽しむのであって、実際に我が身に起こるのは嫌に決まっているじゃない!!!

 (い、嫌・・・)

 ゴンザレス先生の新作を読みたいんだからーーーっ!!!










◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆











 「あれ?・・・・・・ここってもしかして私の部屋?」

 私の瞳に映るのはアンティークで落ち着いた雰囲気のフェルゴヴェールさんの部屋ではなく、オタである事がバレないようにしている自分の部屋だった。

 どうやったのか分からないが・・・・・・私は自力で日本に帰る事が出来たらしい。

 通勤に使っている鞄も、鞄に入っている財布とスマホがないので日付を確かめる事が出来ない私はTVを点けたの。





 〇月〇日のニュースです





 TVが伝えた日付は正に私とタレントのそっくりさんが異世界召喚された日で、時計に目を向けたら時間は二~三分しか経っていなかった。

 つまり・・・





 日本に戻って来たーーーっ!!!





 「こ、ここは・・・?」

 ミドガルズ王国に召喚された頃の私だったら『日本に戻って来たーーーっ!!!』って感じで某芸人のように心の中で雄叫びを上げて狂喜乱舞していた。

 でも今は・・・

 ヴァナヘルム王国で過ごしていた時の事を思うと、もう二度とフェルゴヴェールさんに会えないのかと思うだけで胸が締め付けられるように苦しくて思わず泣いてしまいそうになってしまうのは確かだけど。

 (・・・・・・フェルゴヴェールさん)

 フェルゴヴェールさんを想って思わず泣き出してしまいそうになっていた私の耳に聞き覚えのあるイケボが入って来たの。

 (えっ?)

 振り向くと、そこにはフェルゴヴェールさんが座り込んでいた───。














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