フィジーメール王国物語

イチイ アキラ

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「どちらの国の王様になられるのですか?」

02

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 場所をかえて。
 ひたすらジェラルドの兄の公爵令息に頭を下げられながら案内されて。
 自国よりついてきている護衛の騎士たちとぞろぞろと。
 その先の広い部屋に案内されるとすぐにこの国の国王も飛び込むように、部屋に。
「申し訳ないー!」
 スライディングに何かしそうな勢いだ、とルーナに控えていたお付きが小さく。吹き出させるなと肘打ちしたルーナは偉い。
「あらまぁ、転ばないようにお気をつけて?」
 ルーナの声かけは優しく。その手をつく直前を「やめろや」と。一国の王が頭を下げるのはさすがに。
 まだ、甥っ子さんのおいたな段階なのだし。

 正直なところ、ルーナはまったく怒ってない。

 むしろ――おもしろい見世物だった。褒めてつかわす。
 そんな気分。

 そしてこれから第二部が始まる。

 公爵令息が弟をとっちめる――何故あのようなことをしでかしたのかを聞き出すと、なんとも呆れるお話し。
「だって、母さまも伯父さまも、兄さまだって、僕がそのうち王さまになれるって……」
 ひっくひっくと……十五歳にもなろう男がしゃくりあげながら話す内容は。

 ジェラルドは幼い頃より「いつか自分が王に」と聞いて育ってきたと。
 特に母は「いつかジェラルドの国に……楽しみだわ。物語の舞台に行きたいわ」と、自らもそこで暮らしたいと、友人である侯爵夫人に話をしていて。それを早いうちから母についてお茶会に出ていたおませな・・・・フローディア嬢も、聞いていたそうな。
 そして幼馴染なふたりはいつかジェラルドが王さまになったら……な、お話しを良くしていたそうで。

「あー……」
 聞いてルーナは何とも呆れる。
 ちゃんと教育できなかったのですねー、と。
 だからジェラルドに、もう一度尋ねた。

「どちらの国の王様になられるのですか?」

 と。

「え、この国のだろ?」
 きょとんと。
 何を言っているんだと、むしろまだルーナを馬鹿にしたような表情のジェラルドに拳骨を落としたのは兄と、同じく駆け込んできて事情を聞いた――王太子。ジェラルドの年の離れた従兄弟。
 そうこの国の、ちゃんとした王太子。
「この無礼者めが!」
「ぴぇん!? 父さまにも殴られたことないのに!」
「ならば私がかわりにだ!」
 兄がもう一度。一発目より痛そうな音が。
 母も母だと、血走った目で公爵令息はため息をつく。母は自分も殴られるとぶるぶる震えている。公爵ご自身は本日は領地にどうしても外せないご用事があったとかで不在であったのが。お兄さんがその分、総責任者。
 集められた王族と、関係者だからと侯爵家のフローディアとその保護者。
 これで揃ったかしらと、ルーナは怒る兄君を「まあまあ」と制して。
「おかわいそうに。理解してらっしゃらないのなら、ジェラルドさまに説明しなおして差し上げるべきでしょ?」
「は、申し訳ありません!」
 ジェラルドは兄がルーナにへりくだっているのかわからないと、またきょとんとしている。しかも自分を「かわいそう」と哀れまれた。
「た、ただの伯爵令嬢が、え、えらそうに!」
「まだ言うか!」
「びえん!?」
 教育し直しなさいよー、と心の中でつぶやきながら、ルーナはせめて優しく教えてあげた。こんな小せぇものは怒りの対象にもならないのだ。彼女には。
「わたくし、伯爵令嬢ではありますが、ただの、ではありませんの」
 王族や公爵位にとってはそう思うかもだけど、伯爵位だってとってもえらいのに。
 それに、そもそも――。

「そもそもね、ジェラルドさま……貴方、わたくしの婚約者候補の一人でしかなくってよ?」

 だから棄権するならあっさりと認めるだけである。
 そう、まだまだ「お婿さん」候補はいっぱいいて。


「わたくしが、フィジーメール王国の次の女王なの」


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