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12話 ラーサティア視点

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団長の姿は病を微塵も感じさせない高潔さを誇る。
見られたくない姿を私に晒しても私を気遣う言葉をくれた。
どうして?
私では頼りないのだろう。
それは重々承知している。
だが、団長の不調を知っている人はいなさそうなのだ。
副団長ですら知ってか知らずか問いに乗ってこなかった。
花吐き病。
私も王宮の図書館に通い調べたが通常医者が知っていることしか載っていない。
ただ1つ慕う人がいる場合も吐く可能性があると書かれていた。
団長が慕う……それが本当ならば誰なのだろうか。
あの団長が、特別だと思う人は。
それは綺麗で心根も優しくて、非の打ち所がない人だろうか。
「狡い」
ぽつりと溢してしまった言葉。
幼いときに迷子になった私を、目的の場所に送り届けてくれた時から、自分の中のニクス団長は特別だったのだ。
掌に握らされたキャンディの包み。中のキャンディは舐めると舌に痛かったけれど、白く丸いキャンディは思い出の味になった。
城下で兄が買ってきてくれたキャンディが同じものだと知って、自分でも度々買いに出た。
いつか返したいと思っていたけれど、会えない度に少しずつ舐めてしまうと瓶の中のキャンディはあっという間に無くなってしまう。
それかと同時に規定年齢に達したらニクス団長の率いる騎士団に入ると決めた。
父や母、兄たちにも反対されたがこれだけは譲らなかった。譲りたくなかったのだ。
幼い子供の言うことだから、年齢に達する前に諦めるだろうと思っていただろう家族の期待を裏切って私の意思は変わらなかった。
「お父様、お母様、私は騎士団見習いの試験を受けようと思います」
そう、誕生日の席で伝えた時の表情は今でも覚えている。
それに、ニクス団長からも待ったが入った。
今までお飾りの王族騎士はいたが、騎士団見習いから始める王族はいないと言われた。
だが、私は王族として見て欲しくなかった。
いくら騎士団長だと言っても王族との立場には上下があるのだ。
それが気になるなら王子と言う身分を返上して騎士になると言ったら騒ぎになった。
だが、散々渋る両親を幼いながらも説き伏せて私は騎士団見習いの試験を受けて騎士見習いになった。
それは今では懐かしい思い出なのだが、その時から見続けていたニクス団長に想い人の影は無かったのだが……知らない所で?
どうして自分ではないのだろうか。
ニクス団長の隣にならんでも遜色のない身分を手に入れたら想いを告げようと願を掛けて伸ばした髪。
それなのに。
でも……できるのなら、ニクス団長がその人と結ばれて元気になってくれるならそれでもいいと思った。
どうしたらいい?
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