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227話 誕生

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6人でゆっくりと聖樹へと向かう。
代わるぞと言ってくれたレヴィにミラをお願いすると、嫌だと言うかと思ったミラだったが、そのままおとなしくレヴィの腕の中に収まった。
「リル……ハサミ持ってきてくれたの?」
「おう、折角買ったんだしな」
リルの手にはバスケットがある。
実を切るためのハサミには、聖樹へ巻いたリボンと同じ色のものが巻いてある。
記念になるように。
ポツリポツリと灯りが見えてくると、その先には聖樹があった。
ふわりふわりと実が発光しているのはもう間も無くの証拠で、リルとレヴィと顔を見合わせると俺たちも自分達の実へと向かった。
柵を越えて中に入る。
「確かにちょっと大きいかも……?」
俺はポツリと呟いた。
片手では持てない大きさの実がほんのりと光りかけている。
やはり、もうすぐなのだが……。
隣ではひとつ、ふたつと子供が産まれて両親が大切そうに抱いている。
だが、産まれてきた子供たちと比べると光が弱く見えるのは気のせいではないはず。
「頑張れ……」
月が空に浮かばない闇夜で、自分の果実がわかるのは本能なのだろう。
引き寄せられるかのように果実に近寄りそっと両手で包むと、ふわりと光が集まり変化が始まった。
「もう少しだな……」
レヴィの手がそっと背中を撫でてくれる。
ミラは?と、振り替えるとルーファスさんの腕の中にいた。
「うん」
「リクトが最初に抱いてやってくれ」
「いいの?」
まさか自分が任されるとは思っていなかったため、驚きながらふたりを見た。
頷くふたりは俺を促すように背中を押してくれる。
果実に線が入り、ゆっくりと開くとその中にいたのは……。
「えっ!ちょっと待って!?」
「リクトどうした?」
「ふたりいるっ!」
果実が開き、ピクピクっと見えたのは白っぽい虎の耳と、黒に見える熊の耳。
1つの果実のなかにふたり?
慌てて近寄ってきたリルとレヴィ。
「ねぇ、どうしたらいいの?」
「リクトちゃん、落ち着いてゆっくり1人ずつよ」
わたわたする俺に声を掛けてくれたのはミトさんだった。
「ほら、リルもレヴィも受けとる用意をなさい!」
ミトさんの気合いの入った声に俺は取り上げるのを覚悟する。
どちらを先にするか悩んだが、先ずは虎の子。
夜の闇に浮かび上がるような金色の髪の子。
落とさないようにゆっくりと抱き上げてからリルに。
続いて漆黒の闇に溶けるような黒髪の熊の子。
こちらはレヴィに。
そして置いてあったバスケットからハサミを取り出すと果実を切り落とした。
中に残る液体を一緒に持ってきたスプーンで掬いふたりにそつと飲ませると、こくこくと飲んでいく。
これで一安心。
ほう。と、息を吐いた瞬間膝から崩れ落ちそうになってそんな俺を抱き止めてくれたのはミトさんだった。
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