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女性という生き物
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アレンはルシア・アルベルンと手を組んだ。そしておかしくなった皇子、突然現れたレナという少女について調べることとなる。
「アレン、どうやるつもりなんだ?」
ルシアが帰った後、固唾を飲んで見守っていたハワードがそう質問してきた。アレンの隣に座りながら心配そうに見つめている。
アレンは垂れてきた銀髪を耳にかけ、ふっと微笑した。
「ルシア嬢と話してみてわかったことなのだけれど……根元には、レナという少女が関わっている気がする」
「なぜ? 確かにその女は、ルシア嬢の婚約者を奪ってはいるけれど……」
ハワードはカツラを外し、ツルツルした頭皮を顕にする。恥ずかしそうに自身の頭を撫で、うーんと腕を組んでいた。
「そう、だね。まあ、それだけならば、あの屑の心変わりで済むと思う。けれど、人が変わったかのようになった時期、そして……」
長いまつ毛を震わせる。涙を流してもいないのに湿った瞳が憂いていて、海のような色の目はどこまでも澄んでいた。ただ、どこを見ているかもわからない……心、ここにあらずな眼差しになっている。
ハワードに肩を抱かれ、アレンはハッとした。
「ハワード、すまない」
「いや。いいんだ。君の心の痛みを思えば、当然のことだよ」
ぐいっと、ハワードに抱きよせられる。見上げた先にいるハワードは耳の先まで真っ赤になっていた。照れているらしく、彼の武骨な指が怪しい動きをしている。
アレンはそれを見ながらクスッと笑ってしまった。
(君は、あんなに毎晩のように私を抱き潰しているくせに。こういうときでも、照れることを忘れないなんて……)
見た目の厳つさに反して、何てかわいい性格をしているのか。アレンは思わず、彼の首へと両腕を伸ばした。自然とハワードへ抱きつくかたちになったけれど、それでもアレンは離れようということはしない。
「ふふ。かわいいな、君は」
「か、かわ!?」
あわあわと。抱きつかれた瞬間、やり場のない両手をワキワキさせた。
けれど痺れを切らしたアレンが半ば無理やり、彼の両腕を己に巻きつかせる。そしてハワードの額に軽く口づけをした。
「これでもまだ、照れ続けられるかい?」
挑発的な言葉、魅惑的な唇、そして腰つきで、ハワードの欲を求める。
ただそれは、アレンにとっては悪戯の範疇でしかなかった。本気で誘っているわけではない。けれど……
「え? う、わっ!」
ポスッと、蚊の鳴くほどに小さな音をさせながら、アレンの体はソファーに押し倒された。
見上げれば、そこには欲情したハワードがいる。彼は我慢の限界ギリギリを保ちながら、眉を曲げて目つきをさらに悪くさせていた。
「あ、あまり俺を、挑発しないでくれ!」
「……? 悪戯だよ?」
「無意識!? タチが悪い! ……君は、ときどき凄い天然になる」
「うーん……そんなつもりは、まったくないのだけれど」
軽口をたたきながらも、アレンは彼の欲をすべて受け入れていく。上に乗るハワードを見つめた。ふふっとしたり顔を、彼へと送った。
□ □ □ ■ ■ ■
二人きりの時間を楽しみながら、彼らはある場所へと向かっていた。
馬車の中から眺める町並みは、とても騒がしくて人々の活気に溢れている。美しい建物、最近流行りだしたものまで。町という場所は、情報がたくさん歩いているような場所だった。
そんな町へと降り立ち、アレンはとある建物の前で立ち止まる。
「あ、アレン? ここは、化粧品店だけど……」
どうやらハワードは、アレンが向かう先を知らなかったようだ。驚きながら、店とアレンを交互に見ている。
アレンはふっとクールに微笑んだ。長くて美しく煌めく銀髪を三つ編みに縛り、彼の背中を軽くたたく。
「ここは、女性が集まる場所だ。情報収集には、持ってこいの場所だろう?」
女性はお喋りだ。知られたくない情報をどこからか仕入れていては他者に話す。ときには情報を交換し、噂の種にする。
男社会のこの世界で、女性独自の方法で生きていく。それが女性のあり方でもあった。
「まあ下手をすると、女性の勢いに負けてしまうけど。ハワード、気をつけたまえよ?」
「うっ!」
(それにしても、怖がれないようにってカツラを被るとか。相変わらずハワードは、かわいいなぁ)
町中ではなければ、彼に抱きついていただろう。そう考えてしまうぐらいには、ハワードという青年の純粋さに惚れてしまっていた。
「さて、と。入って、情報収集しようか?」
「それはいいけど……アレン、学園の方が情報集まるんじゃない? どうして、ここなんだ?」
「ん? ああ、簡単なことだよ。学園は生徒を守る場所でもあるからね。おいそれと、個人情報を話すとは思えない。ましてや、特待生として入学してきた少女だからね」
そこまで説明すると、ハワードはなるほどと納得した様子で微笑む。
そして二人は女性相手に揉まれるという覚悟の元、中へと入っていった。
中へ入ると、そこは案の定女性の園となっていた。貴族階級の女性がメイドや執事を連れて、楽しそうに化粧品を選んでいる。中には町娘らしき人もいて、こちらも幸せそうに見ていた。
「どうやらここは、階級関係なく通える店のようだ。ハワード見てごらん」
手にしたのは化粧水で、値段は三百円と書かれている。この国での三百円は一時間働けば稼げるような金額だ。
どうやらここは高くないようで、一般市民でも手が届くような金額。それがウリの店のよう。
「じ、女性ばかりだ」
「ふっ。ハワードは、女性が苦手かい?」
「いや、そういうわけじゃない。ただ、無事にこの店を出られるのかが、心配で……」
「…………ああー」
彼の言うことはもっともだ。女性のパワーはある意味、凄まじい。悪意のない、純粋な言葉で相手に詰めよる。いざというときは一致団結して、標的を狙い定める。
女性からすれば普通のこと。しかし男性の彼らは、女性の圧に負けることを想像して身震いをしてしまった。
「まあ、ほどほどに頑張ろうか?」
お互い生きて帰るんだと、手を握り合う。そして──
五分後、アレンは女性に囲まれていた。
彼の紳士的な態度、気品溢れる姿勢。そして何よりもアレンの美しい銀髪と顔立ちに、店内にいる女性たちからは黄色い声が上がっていた。
顔を赤らめてしまう者もいれば、我先にとアレンへ話しかける女性もいる。やがて、揉みくちゃにされる方がマシと思える行動に出る婦人まで現れる始末だ。
(わかってはいたけれど、女性のパワーは凄まじい)
心の中でから笑いをしながら、表面上は爽やかな眼差しをする。ただ、このままでは身動きすら取れない。困り果てたアレンは頭の中で撤退方法を考えようとした。
直後、グイッと腕を引っぱられる。それはハワードの仕業だった。アレンを胸の中に収めながら女性たちに会釈をし、急いで外へと出る。
外に出たアレンは彼にありがとうと伝え、ぐちゃぐちゃになった髪を整えた。
ハワードを見れば、口を尖らせて地面を蹴っている。子供っぽいいじけ方に、アレンは思わず吹き出してしまった。
「焼きもちかい?」
「君は、俺のものだ。それなのに……」
大きな体でしょんぼりする。まるで大型犬が怒られて、耳を垂らしているかのようだ。
アレンは彼から感じる愛情に胸の奥が熱くなる。
(……ああ、本当にこの人は)
愛おしい。かわいい。
人目も憚らず抱きしめてあげようと手を伸ばした──
「──アレン様?」
そのとき、聞き覚えのない声に呼ばれる。振り向くとそこには、一人の少女が立っていた。
肩ほどまでの桃色の髪をゆるふわウェーブにした、可愛らしい顔立ちの少女だ。
(彼女は、レナ嬢!? なぜ、ここに!? それに、なぜ私のことを……)
そんな少女ことレナは、トロンとした瞳でアレンを見つめていた。そして一言、誰にも聞こえない声でこう口にする。
「アレン様、見ーつけた」
不思議な雰囲気を放ちながら、少女の声はその場の空気に溶けていった。
「アレン、どうやるつもりなんだ?」
ルシアが帰った後、固唾を飲んで見守っていたハワードがそう質問してきた。アレンの隣に座りながら心配そうに見つめている。
アレンは垂れてきた銀髪を耳にかけ、ふっと微笑した。
「ルシア嬢と話してみてわかったことなのだけれど……根元には、レナという少女が関わっている気がする」
「なぜ? 確かにその女は、ルシア嬢の婚約者を奪ってはいるけれど……」
ハワードはカツラを外し、ツルツルした頭皮を顕にする。恥ずかしそうに自身の頭を撫で、うーんと腕を組んでいた。
「そう、だね。まあ、それだけならば、あの屑の心変わりで済むと思う。けれど、人が変わったかのようになった時期、そして……」
長いまつ毛を震わせる。涙を流してもいないのに湿った瞳が憂いていて、海のような色の目はどこまでも澄んでいた。ただ、どこを見ているかもわからない……心、ここにあらずな眼差しになっている。
ハワードに肩を抱かれ、アレンはハッとした。
「ハワード、すまない」
「いや。いいんだ。君の心の痛みを思えば、当然のことだよ」
ぐいっと、ハワードに抱きよせられる。見上げた先にいるハワードは耳の先まで真っ赤になっていた。照れているらしく、彼の武骨な指が怪しい動きをしている。
アレンはそれを見ながらクスッと笑ってしまった。
(君は、あんなに毎晩のように私を抱き潰しているくせに。こういうときでも、照れることを忘れないなんて……)
見た目の厳つさに反して、何てかわいい性格をしているのか。アレンは思わず、彼の首へと両腕を伸ばした。自然とハワードへ抱きつくかたちになったけれど、それでもアレンは離れようということはしない。
「ふふ。かわいいな、君は」
「か、かわ!?」
あわあわと。抱きつかれた瞬間、やり場のない両手をワキワキさせた。
けれど痺れを切らしたアレンが半ば無理やり、彼の両腕を己に巻きつかせる。そしてハワードの額に軽く口づけをした。
「これでもまだ、照れ続けられるかい?」
挑発的な言葉、魅惑的な唇、そして腰つきで、ハワードの欲を求める。
ただそれは、アレンにとっては悪戯の範疇でしかなかった。本気で誘っているわけではない。けれど……
「え? う、わっ!」
ポスッと、蚊の鳴くほどに小さな音をさせながら、アレンの体はソファーに押し倒された。
見上げれば、そこには欲情したハワードがいる。彼は我慢の限界ギリギリを保ちながら、眉を曲げて目つきをさらに悪くさせていた。
「あ、あまり俺を、挑発しないでくれ!」
「……? 悪戯だよ?」
「無意識!? タチが悪い! ……君は、ときどき凄い天然になる」
「うーん……そんなつもりは、まったくないのだけれど」
軽口をたたきながらも、アレンは彼の欲をすべて受け入れていく。上に乗るハワードを見つめた。ふふっとしたり顔を、彼へと送った。
□ □ □ ■ ■ ■
二人きりの時間を楽しみながら、彼らはある場所へと向かっていた。
馬車の中から眺める町並みは、とても騒がしくて人々の活気に溢れている。美しい建物、最近流行りだしたものまで。町という場所は、情報がたくさん歩いているような場所だった。
そんな町へと降り立ち、アレンはとある建物の前で立ち止まる。
「あ、アレン? ここは、化粧品店だけど……」
どうやらハワードは、アレンが向かう先を知らなかったようだ。驚きながら、店とアレンを交互に見ている。
アレンはふっとクールに微笑んだ。長くて美しく煌めく銀髪を三つ編みに縛り、彼の背中を軽くたたく。
「ここは、女性が集まる場所だ。情報収集には、持ってこいの場所だろう?」
女性はお喋りだ。知られたくない情報をどこからか仕入れていては他者に話す。ときには情報を交換し、噂の種にする。
男社会のこの世界で、女性独自の方法で生きていく。それが女性のあり方でもあった。
「まあ下手をすると、女性の勢いに負けてしまうけど。ハワード、気をつけたまえよ?」
「うっ!」
(それにしても、怖がれないようにってカツラを被るとか。相変わらずハワードは、かわいいなぁ)
町中ではなければ、彼に抱きついていただろう。そう考えてしまうぐらいには、ハワードという青年の純粋さに惚れてしまっていた。
「さて、と。入って、情報収集しようか?」
「それはいいけど……アレン、学園の方が情報集まるんじゃない? どうして、ここなんだ?」
「ん? ああ、簡単なことだよ。学園は生徒を守る場所でもあるからね。おいそれと、個人情報を話すとは思えない。ましてや、特待生として入学してきた少女だからね」
そこまで説明すると、ハワードはなるほどと納得した様子で微笑む。
そして二人は女性相手に揉まれるという覚悟の元、中へと入っていった。
中へ入ると、そこは案の定女性の園となっていた。貴族階級の女性がメイドや執事を連れて、楽しそうに化粧品を選んでいる。中には町娘らしき人もいて、こちらも幸せそうに見ていた。
「どうやらここは、階級関係なく通える店のようだ。ハワード見てごらん」
手にしたのは化粧水で、値段は三百円と書かれている。この国での三百円は一時間働けば稼げるような金額だ。
どうやらここは高くないようで、一般市民でも手が届くような金額。それがウリの店のよう。
「じ、女性ばかりだ」
「ふっ。ハワードは、女性が苦手かい?」
「いや、そういうわけじゃない。ただ、無事にこの店を出られるのかが、心配で……」
「…………ああー」
彼の言うことはもっともだ。女性のパワーはある意味、凄まじい。悪意のない、純粋な言葉で相手に詰めよる。いざというときは一致団結して、標的を狙い定める。
女性からすれば普通のこと。しかし男性の彼らは、女性の圧に負けることを想像して身震いをしてしまった。
「まあ、ほどほどに頑張ろうか?」
お互い生きて帰るんだと、手を握り合う。そして──
五分後、アレンは女性に囲まれていた。
彼の紳士的な態度、気品溢れる姿勢。そして何よりもアレンの美しい銀髪と顔立ちに、店内にいる女性たちからは黄色い声が上がっていた。
顔を赤らめてしまう者もいれば、我先にとアレンへ話しかける女性もいる。やがて、揉みくちゃにされる方がマシと思える行動に出る婦人まで現れる始末だ。
(わかってはいたけれど、女性のパワーは凄まじい)
心の中でから笑いをしながら、表面上は爽やかな眼差しをする。ただ、このままでは身動きすら取れない。困り果てたアレンは頭の中で撤退方法を考えようとした。
直後、グイッと腕を引っぱられる。それはハワードの仕業だった。アレンを胸の中に収めながら女性たちに会釈をし、急いで外へと出る。
外に出たアレンは彼にありがとうと伝え、ぐちゃぐちゃになった髪を整えた。
ハワードを見れば、口を尖らせて地面を蹴っている。子供っぽいいじけ方に、アレンは思わず吹き出してしまった。
「焼きもちかい?」
「君は、俺のものだ。それなのに……」
大きな体でしょんぼりする。まるで大型犬が怒られて、耳を垂らしているかのようだ。
アレンは彼から感じる愛情に胸の奥が熱くなる。
(……ああ、本当にこの人は)
愛おしい。かわいい。
人目も憚らず抱きしめてあげようと手を伸ばした──
「──アレン様?」
そのとき、聞き覚えのない声に呼ばれる。振り向くとそこには、一人の少女が立っていた。
肩ほどまでの桃色の髪をゆるふわウェーブにした、可愛らしい顔立ちの少女だ。
(彼女は、レナ嬢!? なぜ、ここに!? それに、なぜ私のことを……)
そんな少女ことレナは、トロンとした瞳でアレンを見つめていた。そして一言、誰にも聞こえない声でこう口にする。
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