思い上がりの勇者パーティーに女神の裁きを

はなまる

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第1章 勇者を裁くだけの簡単なお仕事を始めました

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「 ルナマリア、お前をパーティーから追放する!」

 勇者のアシュトンが、私にそう宣言しました。
 ちなみに私、ルナマリアは聖女です。
 勇者と聖女はセットの存在なのですが、 果たしてアシュトンはそのことを分かっているのでしょうか。

「 その意味を理解していますか?」
「ああ、 もちろんわかっているとも。 役立たずがいなくなるだけだ」

 やはり、わかっていませんね。 頭が痛くなってきますよ。

 
 

 勇者は聖女によって選定されます。 聖女がいなければ勇者としての力を発揮することができません。

 アシュトンの脳みそが弱いのは 私の責任ですね。 幼馴染だからといって甘やかしすぎました。
 アシュトンは正義感が強くて、 剣と魔法の練習ばかりに明け暮れていました。 ちょっとおバカさんだけど、そこもまた可愛らしいと思ってしまったのです。
 戦闘面以外は私がサポートすればいいと 考えていました。
 
 それが間違いだったのです。

 アシュトンは調子に乗って、 ハーレムパーティーを結成しました。
 英雄色を好むと言いますからね。 実力が伴っていれば何も文句はありません。
 アシュトンは考えなしに突撃するだけです。 回復役が二人いなければ、 運が悪ければ全滅していたかもしれません。
 もうすでにお分かりですよね。
 アシュトンに勇者としての実力は伴っていません。

 アシュトンがおばかさんなのは昔からです。 今更直しようがないでしょう。
 パーティー全体でフォローするしかありませんね。

 ところが、 他の二人もアシュトンに毒されていました。

 エイミア、 あなたは宮廷魔術師のはずですよね。 どうして考えなしに攻撃魔法ばかり使うのですか!

 シルフィーユ、 あなたは聖騎士のはずですよね。 どうして、作戦を立てずに突撃するのですか!



「 回復役のお前がそれを怠ったことで、 先ほどの戦闘では苦戦してしまった。 だから お前を追放して、 他の神官を仲間にする」

 アシュトンはもっともらしいことを言っているけど、 可愛くてやれる女の子を仲間にしたいだけですよね。
 私はとっくに幻滅しているから、ベッドを共にするなんて冗談じゃないですからね。

「 そうだ。私の回復が間に合わなければ危ないところだったぞ」

 いえ、 むしろそのせいで戦闘が長引いてしまいました。
 シルフィーユは、アシュトンのことしか頭にないから仕方がないですけどね。


 
 先ほどまでワイバーンと戦っていました。
 アシュトンとシルフィーユは相変わらず真正面から突撃して、エイミアは特大火力で攻撃魔法を打ち続けていました。
 パーティー 契約により、パーティーの仲間を傷つけることはないから別にいいんですけどね。
 何も考えていないから、ワイバーンに翻弄されているじゃないですか。
 二人同時に斬りかかっているから、簡単に避けられてしまっていますよ。
 もう少し攻撃の陽動や連携というものはないものでしょうか。
 エイミアの 攻撃魔法はワイバーンのブレスによって 防がれています。
 私しかフォローする人間がいません。 思わず深いため息が出ますね。
 私は戦いの状況を観察します。
 どうやら、ワイバーンには攻撃のパターンがあるようです。 それを利用しない手はありません。

「 アシュトン、私が合図をしたら【ブレイブバースト】を発動 してください!」

 【 ブレイブバースト】は、 勇者のライフゲージが半分以下になった時に発動することができる必殺技です。 これにより大ダメージを与えることができます。
 アシュトンのステータスを確認すると、 発動条件が整っているようです。
 これならばワイバーンに致命傷を与えることができます。

 ところが、 シルフィーユがやらかしてくれました。

「【 フルヒーリング】!」

 シルフィーユがアシュトンを回復させたことにより、【 ブレイブバースト】の 発動条件を満たせなくなってしまいました。
 
 少しずつ傷ついていく仲間たち。大ピンチです!

 仕方がありませんね。 私が本気を出すことにしましょう。

「【 パーフェクトプロテクション】【 リミットブレイク】!!!」

 私はアシュトンに補助魔法をかけました。

 【 パーフェクトプロテクション】は 一定時間の間あらゆるダメージを無効化する魔法で、【 リミットブレイク】は 瀕死のダメージを負う代わりに 100倍のダメージを与えるというものです。
 素早さも100倍になった アシュトンは、一撃で ワイバーンの首をはねました。

「 俺の勇者としての力が目覚めたようだな」

 アシュトンは素敵な勘違いをしています。
 いつものことだから突っ込む気もありませんけどね。
 

 
 悪い人たちではないんですよ。 脳筋なのはいただけませんが、 世のため人のために勇者パーティーとして戦っています。
 アシュトンは女好きだけど、 女の子を無理やり押し倒すようなことはありません。 合意のもとなら好きにしてください。
 幼馴染の情もあり、 私は今までアシュトンを見捨てることができませんでした。

 なのに、この言いがかりですよ。

 私をパーティーから追い出したいと言うのならば、喜んで出て行きます。

「 アシュトン、さようなら」
「 ちょっと待ちなさい」

 エイミアが 私を呼び止めます。 彼女だけが私の 価値を知っているとは思えません。 何をしでかしてくれるのでしょうか。

「 もうパーティーの仲間じゃないから、 こうしてあげられるわね!」

 エイミアは 右手を振り上げて、 私の方に向かって平手打ちを食らわせました。

「痛っ!?」

 ダメージを受けたのは私ではありません。エイミアの方です。



 
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