思い上がりの勇者パーティーに女神の裁きを

はなまる

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第1章 勇者を裁くだけの簡単なお仕事を始めました

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「ガルヴァスさん・・・・・・?」

 私が部屋のドアを開けると、ガルヴァスは 血走った目で 私に襲いかかってきました。 受け身を取る暇もなく床に押し倒されてしまいます。

「ガルヴァスさん、 どうしちゃったんですか!?」
「ぐわぁぁぁあ!!!」

 ガルヴァスは 雄叫びをあげました。 まるで魔物のようではありませんか。 彼の拳が私の顔面に振り下ろされます。

「ひっ!? 【 プロテクション】!」

 私は咄嗟に防御魔法を唱えました。 それでも衝撃が走り、 息が止まりそうになります。

 怖いです。捕食者のような 恐ろしい形相で 何度も殴られます。
 私の足よりも太い腕の攻撃は、 強化魔法を使ったところで 押し返すことはできないでしょう。
 涙が溢れて止まりません。
 右腕の次は左腕が、 私に向けられます。

「ガルヴァスさん、 やめてください!」

 魔物との戦闘でもこんなに怖い思いをしたことはありませんでした。
 アシュトンは性格はあれでも、 ちゃんと勇者として私のことを守ってくれてたんですね。
 私も世間知らずだと自覚しているつもりでした。 でも、まだまだ認識が甘かったのですね。 私には危機感が全く足りませんでした。
 今の状況はその報いなのでしょうか。
 聖女だって、 女神の裁きを受けることはあります。

 視界がぼやけてきます。

 私一人だけの問題ならば、きっと諦めていたことでしょう。
 しかし、問題は何も解決していません。
 貴族の女の子が泣いていました。
 このままでは、 多くの犠牲者が出てしまいます。
 私ひとりで解決できるなど高慢なことは考えていません。

 それでも・・・・・・。

「 私はみんなを助けたいんです! 【 パーフェクトプロテクション】【 リミットブレイク】!!」

 私の力を100倍にしたところで大したことはありません。 アシュトンのように力任せというわけにはいかないのです。 私はガルヴァスの攻撃に合わせて、 カウンターを狙いました。

「ぐわぁぁぁあ!?」

 ガルヴァスの 拳は砕けて悶絶しています。 私はその隙に 横に転がり、 立ち上がって ヘビーメイスを構えました。

 リゼの 収納魔法のおかげで助かりましたね。 ありがとうございます。

「ぐわぁぁぁあ!!!」

 ガルヴァスは 無事だった左腕を大振りで振り回します。
 しつこい男は嫌われますよ。
 そう思えるほどには余裕が生まれました。

 ・・・・・・ 誰も見てませんよね。
 では、 全力で迎え撃つことにしましょう。

「 とりあえず超奥義! 【 ホーリークラッシュ】!!!」

 ヘビーメイスに聖なる光が集結して、 私の渾身の一撃がガルヴァスの 意識を刈り取りました。

 またつまらぬものを斬ってしまった。
 いえ、 打撃技ですけどね。
 撲殺聖女とは呼ばないでくださいね。 約束ですよ?

 ・・・・・・。

 死んでませんよね。 そういうドッキリは要りませんよ。
 息はしているようです。 よかった、ただの気絶ですよ。

 ガルヴァスは、 どうして私に襲いかかってきたのでしょうか。

「 私が魅力的すぎて欲情しちゃいましたか。 なんちゃって」

 冗談を言っている場合じゃありませんよね。
 原因がわからないと、 目が覚めたらまた同じことの繰り返しかもしれません。
 どういうことだかわかりますか。

 ・・・・・・ 私は誰に聞いているのでしょう。

 今頃冒険者たちはスタンピードに対応しているから、 ギルドカードで質問することができません。
 リゼなら 適切なアドバイスをくれそうですけど、 連絡手段がないんですよね。
 私ひとりで考えなければならないようです。

 ギルドカードで最初に連絡した時は普通でしたよね。 2回目の連絡の時に様子がおかしくなっていました。
 その間に何があったのでしょうか。
 いつもなら薬で症状を抑えられるけど、 今回は 薬を飲んでも暴走が抑えられなかったんですよね。
 普段とは違う外的要因といえば・・・・・・ スタンピードでしょうか。
 ガルヴァスと スタンピードの因果関係を推察 してみましょう。
 民衆がスタンピードによる暴動を起こしていないのだから、 冒険者のガルヴァスが そのことだけで我を忘れるとは思いません。
 別の要因があるということです。
 スタンピードの 放送が なされる直前に、 マチルダの香水の香りがしていました。 あの時は 売り物の香りだと思っていたけど、 おそらく彼女のスキルによる 香りだったのでしょう。 彼女の魔香は魔物だけではなく、人間も興奮状態に するとのことでした。
 興奮状態による暴走ですか。 普通の人間では考えられません。でも、 冒険者の中にはバーサーカーという職業があります。
 きっと、ガルヴァスは バーサーカーなのでしょう。
 
 理性を失っているだけなら、聖女の力で元に戻すことができます。

「彼の者を 正常な思考に戻せ! 【 サニティ】!!」

 果たして、暴走は止まったのでしょうか。ガルヴァスは 目を覚ましました。

「 俺は一体・・・・・・?」
「ガルヴァスさん、 大人なのにやんちゃが過ぎますよ」
「そうか・・・・・・。 すまない、俺を殴ってくれ」

 ガルヴァスは 自分のしでかしたことに気づいて、 私に謝罪の言葉を述べました。

 いえ、 これ以上殴ったら死んでしまいますよ!?

 とりあえず回復魔法をかけましょうか。 壊れた建物も回復魔法で 修理しておきますね。
 その様子を見ていたガルヴァスは、 なぜか目を丸くして驚いていました。

「 壊れているものまで直せるだと!?」
「 回復魔法ですからね」
「 ルナマリアはとことん規格外だな」

 私を化け物のように言わないでください。 私はどこにでもいる普通の聖女ですよ。 本当ですよ?



 これで謎が解けました。
 マチルダの他の仲間が 彼女の【 魅了】 スキルについて全く何も知らなかったから、 おかしいと思っていたんですよね。
 ガルヴァスは、 バーサーカーとして【魅了】 スキルに反応してしまうから、 マチルダのマッチポンプ行為についても気付いていたんですね。
 私がそう聞いたら、ガルヴァスは 小さく頷きました。

「ああ。 そういうことだ。・・・・・・ 今はどうなっている?」
「 今は・・・・・・」

 私は【神の眼】で見たことを全て 話すことにしました。




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