思い上がりの勇者パーティーに女神の裁きを

はなまる

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第3章 追憶の詩を聴いてみました

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 お婆さんの家にお邪魔することになりました。
 さあ、当たり障りのない話をしましょうか。
 私が覚悟を決めたその時。十三歳程の女の子が目に入って来ました。
 お婆さんにはエリーゼの他にもお孫さんがいるのですか。でも、余り顔は似ていないようです。お婆さんは茶髪だけど、女の子はピンク色の髪をしています。

「その子はお婆さんのお孫さんですか?」
「いや、ジャネットちゃんは勇者らしいよ」
「勇者!?」

 私は、お婆さんの言葉に 過剰反応してしまいました。最近は勇者イコール悪の図式でしたからね。
 先入観で他人を判断してはいけません。
 果たして、ジャネットはどんな子なのでしょうか。私は 様子を伺ってみることにしました。

「 初めまして、ジャネットちゃん。私は聖女の ルナマリアと申します」
「 初めまして、聖女のお姉ちゃん。私は勇者のジャネットだよ」

 ジャネットは、 年相応の普通の女の子にしか見えません。とても勇者に 選ばれたとは思えませんよ。
 アシュトン以上の逸材なのでしょうか。
 十三歳という 年齢なら、まだまだ勇者候補として 修行を行っている段階です。それに、 他の仲間はいないのでしょうか。 ソロ活動をしている勇者は稀です。ましてや 未成年の勇者ならば、神殿と 冒険者ギルドが放っておきませんよ。

「ジャネットは本当に勇者なのですか?」
「何なら 戦ってみる? そうすれば、私が本物かどうかわかると思うよ」

 ここまで自信満々に言われては信じないわけにはいきませんね。

「いえ、私は後衛職なので遠慮しておきますよ」
「それなら、戦士のお兄ちゃんはどうかな?」

 ジャネットはガルヴァスを指名しました。

「俺は嬉しいぞ!」

 えっ!? ガルヴァスには 少女をいたぶる趣味があったのですか!?
 いえ、 相手は 普通の女の子ではなくて勇者ですけどね。
 なんだか変態の発言のように聞こえてしまいますよ。

「ガルヴァスさんは ロリコンなのですか?」
「 そんなわけないだろ。 ジャネットは誰かさんと違って、俺の事をおじさん扱いしないからとっても嬉しいんだ」

 その件につきましては反省している次第でして・・・・・・私が全面的に悪いですよね。

 えーと・・・・・・ 何の話でしたっけ?

 そうそう。 ジャネットが勇者かどうか確かめる話でしたよね。
 私は、 その必要はないと思います。
 ジャネットは私の【神の眼】でも 気配を感知することができません。 きっと感知無効スキルを持っているのでしょう。 そんなことができる人物は限られています。十三歳の 少女でその条件を満たすことができるとしたら、勇者しか 考えられないと思いますよ。

「ジャネットちゃんは 強さに自信を持っているようだから、勇者と 認めますよ。でも、勇者が 小さな村に用があるのですか?」

 私が 質問すると、 ジャネットは 正直に打ち明けてくれました、

「 私を勇者にしてくれた聖女の エリーゼ お姉ちゃんが、 この村の出身で もうすぐ彼女の両親の命日だと知ったから、 お礼をしたくて来たんだよ」

 ジャネットは、 エリーゼが選定した勇者だったのですか。 エリーゼが関わっているなら、罠の可能性もあります。けれど、狡猾な 彼女が ポロを出しそうな発言をさせるでしょうか。
 もしもジャネットがエリーゼの手先、 もしくは彼女自身が変身した姿ならば、 私を欺くためにもっとまともな設定を考えるはずです。
 ジャネットは本当にエリーゼから 勇者の神託を受けたのでしょうけど、 その当時は 彼女はまだアルフレッドの仲間だったから、 同じパーティーに入る ことはなかったのでしょう。

 万が一私の思考を逆手にとったエリーゼの作戦だったのならば、 私にはもう対処のしようがありません。
 この最悪なパターンだったとしても、 エリーゼにとって両親の命日は大切なものだから、 この場で 私のことを狙ってくるとは思えません。 なんにしても、エリーゼは両親の墓参りをしたいだけだと思いたいです。

「 お姉ちゃん、難しい顔してるね。 大丈夫?」

 物思いにふけるのは私の悪い癖ですね。
 私はこれ以上心配 をかけないように、 ジャネットに 笑顔を向けました。

「 大丈夫ですよ。 それよりも、ジャネットちゃんは何のお手伝いをするのですか?」
「 料理のお手伝いをするよ。選ばれる前はよく手伝ってたからね」
「 私もお手伝いしますね」
「 私もお手伝いするですぅ。そして、 私もジャネットちゃんからお姉ちゃんと呼ばれたいですぅ」

 ユメリアは、 瞳に決意の 炎を燃やしました。 ジャネットは満面の笑顔を向けます。

「エルフちゃんも 手伝ってくれるんだね。とっても嬉しいよ」
「 せめて名前で呼んでほしいですぅ!?」

 見事にオチがつきましたね。ガルヴァスは 乾いた笑みを浮かべました。

「 俺は薪割りをしてくるぞ」
「 みんな、ありがとうね」

 お婆さんは、 嬉しそうに 微笑みました。 彼女の素敵な笑顔を奪わなくて済みそうで良かったです。

 まずは下ごしらえをします。
 ユメリアは不器用かと思ったら、意外と役に立っていました。何でも、 彼女はポーションを自作できるほどの腕前だそうですよ。
 ジャネットは手際が良くて、 プロの料理人顔負けの味付けでした。
 私ですか? まあ、 可もなく不可もなくて、 一番リアクションに困る腕前ですよ。

「お婆ちゃん、 味見してみて」

 ジャネットはお皿に料理をよそって、お婆さんに勧めました。お婆さんは フォークで料理を口に含みます。 するとお婆さんは、なぜか 涙を浮かべました。

「 美味しくなかった?」

 ジャネットは不安そうに眉根を潜めます。お婆さんは、 首を横に振って思い出に浸るように 微笑みました。

「 娘の味付けに似ていたから、嬉しくなっただけだよ」

 嬉し涙というやつですね。 私の目頭まで熱くなってきました。ユメリアは 号泣しています。
 それにしても、 瞳を潤ませているジャネットは・・・・・・。

 なんとか確認する方法がないものでしょうか。 私は必死になって考えました。



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