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「左様でございますか」

アリアナの静かな怒りを感じ取ったベスはそれ以上掘り下げることなく続けた。

「それでは続けさせていただきますが…クレメント様は、その女性と親しい間柄のようでした。女性がアリアナ様のことをお聞きになられた時に、聞こえてきたのです」
「なんて言ってたの?」
「本当に申し上げてもよろしいですか」
「良いわよ。気にしないでってば」
「必要なだけの金を受け取ったら、どうやって別れるか考えないと、君との生活もあるしな、と」
「まあ!」
「あの…ご気分を害されてませんか」
「あら、大丈夫よ。この前からずっと気分は彼のせいで害し続けてるから。あなたのせいじゃないわ。」
「それはその、申し訳ございません」
「だからベスのせいな訳ないじゃない。でもそうね、彼は私と結婚して裕福になった後、私を捨てて彼女と再婚しようと考えているのよね」
「おそらく、そうではないかと」
「うーん、理由は何になるかしら。この結婚によって公爵領に金銭的援助がもたらされる以上、少々のことでは私を追い出せないはず。だからある程度皆が納得する理由を用意するはずよね」
「そうですね…一番考えられるのはあれでしょうか」
「あれ?」
「ええ。後継が生まれない、とか」
「ああ、なるほど。それはありそうね。いくら資金援助をしたところで、後継が生まれないのであれば離縁もやむなし、と言った風潮だものね。なるほど、夜を共にすることがなければ子どもは生まれないもの。一番彼にとってはやりやすい手だわ。」
「最終的にお嬢様が離婚を望まれているとはいえ、クレメント様から仰られるのは私にとって耐え難いです。こちらから願い下げですのに!」
「ありがとう、ベス。でもそれなら、私がよその男性の子どもを身籠って公爵家の子と言いふらして、公爵家に居続けるのも一興ね」

アリアナから出てきたとは思えない言葉にベスは目をむいた。

「お嬢様!なんてことを仰るんですか!そのような、そのような…いくら婚約者があのような愚かな方であっても、お嬢様からそのようなことを仰るなど…」

ほんの冗談で口にしたつもりだったアリアナだが、予想以上にベスに叱られて、顔の前で手をパタパタふりながら言い訳をした。

「冗談よ、ベス。驚かせてごめんなさいね。でも妊娠できないからという理由で公爵家から追い出されるとしたら、期間は長くても3年くらいかしら」
「そうですね、子がお生まれにならないご夫婦の場合、概ねそれくらいで離縁となるか、お妾を持たれることが多いかと」
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