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「妾か…あ、いいこと思いついたかもしれない」
「なんでございましょう」
「ベス、あなた、私のためにどこまでできる?」

にやりと笑ったアリアナに、ベスは力を込めて答えた。

「なんでもできますよ。お嬢様には命を救っていただいたのですから」

その答えを聞いて、アリアナは膨れっ面をした。

「やめてよ、そんな昔のこと。そうじゃなくて、嫌なことはちゃんと嫌って言ってね、って意味で言ったのに」
「ありがとうございます。ですが何をすればよろしいでしょうか。」
「それはちょっと後で言うわ。それで屋敷に戻ったクレメント様に素知らぬ顔で手紙を渡したのよね。」
「はい。直前のこともありましたので、直接お渡しさせていただけるようハンゼ公爵家の執事にお願いしまして」
「それで?」
「手紙を受け取られたあと、すぐに部屋を出ました。少しだけ扉の前で様子を伺ってるとすぐに手紙の封を切る音が聞こえてきまして…」
「まあ!ベスってば、お行儀が悪いわよ。盗み聞きなんて」

ころころ笑いながら注意するアリアナにベスはわざとらしく謝った。

「申し訳ありません。それでその独り言をおっしゃってて」
「金の件ならすぐに会わないとな、とか?」

アリアナが言い当てると、ベスはギョッとした目でアリアナを見た。

「そんな驚かなくても想像つくわよ。良かった。それならすぐに返事が来そうね。それはそうと私に隠してることない?」

いたずらっぽく笑うとベスの顔色がサッと変わった。

「あの、お嬢様。わたくし、本当に」
「ええ。あなたは全く悪くないことは分かってるわ。だから話しなさい」
「その…手紙をお渡しした時にクレメント様に声をかけられました。」
「ええ。なんて言ってた?」
「アリアナ嬢が嫁いできた暁には君も一緒にくるのかな、と。美人な主従だね、共に暮らせるのが楽しみだ、と。」
「あらあら。本当に愚かね」
「お嬢様の婚約者に使う言葉ではございませんが、あのような男、虫酸が走ります。」
「でもね、お願いしようとしてたのは、まさにその部分なの」
「え?」
「今後ハンゼ公爵家への使いは基本的にあなたに行ってもらいたいの。そしてクレメント様を籠絡してくれない?」
「え?」
「もちろん、あなたがやりたくないなら無理しなくて大丈夫よ」
「籠絡ですか?」
「ええ。私と別れて過ごす予定の彼女にクレメント様のだらしなさ見せつけて幻滅させようかと思って。あなたは正統派の美人だから。クレメント様は絶対にすぐ落ちるわ」
「そのようなことは…でも、お嬢様の役に立てるならやってみます!」
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