【完結】悪女のなみだ

じじ

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本編【第二章】

2-55 フォーゼム視点

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カリーナを屋敷に待たせ、ダルラ伯爵の屋敷に向かう途中、私はやるせない気持ちでいっぱいだった。血を分けた弟の愚行には吐き気すら覚える。
ようやくダルラ伯爵の屋敷に着くと、訝しげな様子の使用人に、火急の用件でダルラ伯爵に会いにきた旨を告げる。

居間で半刻ほど待たされた後、ようやく現れた伯爵夫妻はどこかうつろな眼差しだった。
深夜だから当然だ。そう思いながら私は最初の言葉を探す。
どう説明すれば、カリーナの両親を少しでも傷つけずに済むだろうか。
そう思いかけたところで、己の傲慢さに笑ってしまいそうになる。私の弟のせいで愛娘を亡くしたこの人達に、心を傷つけないようにしようなどとおこがましいにもほどがある。
これから私が伝える話を聞いて、傷つき罵声を浴びせるのは、彼らの私への当然の権利だ。

「夜分に申し訳ございません。至急お伝えせねばならぬことがあり、このような時間に参りました。」
「なんだ?カリーナと婚約破棄でもしたくなったか」

投げやりに放たれた言葉に静かに首を振る。

「いいえ。お許しいただけるのであればカリーナ殿との婚約は解消したくありません。」
「ならなんだ?あの娘が関係しないのであれば、あなたがこの屋敷を訪れることなどないだろう。カリーナはあのように家を出て行った。生きようが死のうがもう私達には関係のない存在だ」

カレン殿の件がなければ、この言葉を聞いて平静ではいられなかっただろう。
しかし、婚約解消を申し渡されても仕方がない身となった今、皮肉にも自分達と彼女は関係がないと言われたことに一抹の安堵を覚えてしまう自分がいることも確かだ。そんな利己的な己にも嫌気がさす。

「カレン殿のことです」
「カレン?」
「昨日の舞踏会で暴漢に刺され亡くなられました」
「…」

無表情のままの夫妻をじっと見つめる。
怒鳴られても、殴られても甘んじて受け入れるつもりでそのまま続ける。

「実行したのはファボ子爵の息子ですが、主犯は私の弟のシュナイダーです。カリーナ殿と間違われてカレン殿が刺されました。カレン殿は殺されると分かっていて、カリーナ殿のふりをしたようです…本当に申し訳ごさいません。」

頭を下げたままの姿勢で、夫妻の次の言葉を待つ。

「シュナイダー君が…そうか」

ぼそりと呟く伯爵を思わず見ると、夫妻は…信じられないことに口の端を歪めて笑っていた。

「あの…」

思わず声をかけると夫妻は大した感慨も無さそうな声で告げてきた。

「ああ。君もでわざわざ夜中に起こさないでくれ」



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