後宮にて、あなたを想う

じじ

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121 紅霞

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癒えぬ悲しみを目の当たりにして、黄怜は言葉が見つからなかった。目を伏せ悼むような黄怜の様子に律佳は涙を浮かべたまま微笑んだ。

「申し訳ございません。皇后様にそのようなお顔をさせてしまい…」
「いいえ。こちらこそお辛いことを」
「大丈夫です。翌日急な腹痛で…立っていられなくなった私を心配した女官達はすぐに侍医と侍医女官を呼びにいってくれました。その間にも痛みは段々と強くなり…ああ、生まれてきてしまうんだな、と分かりました。」

冷静に話す律佳の様子に黄怜は胸が締め付けられそうになる。律佳の話は確かに前に州芳に聞いた話と相違なかったが、本人から聞くとかける言葉が見つからなかった。

「いつもと違う侍医女官の方が侍医と一緒に来られた時、私は悟ったのです」

赤ん坊の話が続くと思っていた黄怜は突如変わった話に訝しむ。

「私の子が亡くなるのは…私への罰だったのだ、と」
「え」

想像だにしなかった言葉に黄怜は言葉を失くす。
その黄怜の様子を気にすることなく、熱に浮かされたように律佳は続けた。

「罰だったのです…彼女を見捨てた愚かで弱い私への。」
「彼女?」
「皇后様、私のお産を手伝った女官には当然出会われましたよね」

上擦った声のまま、律佳は黄怜に尋ねた。

「え、ええ。州芳殿ね。」
「はい。彼女を見てどう思われましたか」

質問の意図を捉えそこねて、黄怜が狼狽していると、ふっと笑って律佳は続けた。

「とても…美しい女人だと思いませんか」

ますます意味が分からず、黄怜は押し黙った。
てっきり赤ん坊の早産の話が進むと思っていたのに、なぜ州芳の話になるのか。
黄怜がそう思った瞬間、律佳が答えた。

「彼女は…私が陳家におりました時に、水月お嬢様と湖月お嬢様の嫌がらせから私を庇って亡くなった彼女と…紅霞こうかと瓜二つでした
本当に驚きました。紅霞はとても美しい人で…その美しさには同じ女人ながら神々しさすら感じました。彼女はとても気の利く方で、陳家のご姉妹も彼女を重宝されていたようです。ただ、彼女の美しさがご姉妹の美貌を霞ませてしまう、とでも思われたのでしょうか。滅多に表には出されませんでしたが」

黄怜はそこで初めて呟くように、問いかけた。

「亡くなられたのですか?」
「はい…とても賢い方で立ち居振る舞いからお嬢様方の受け答えに至るまで、非の打ち所がない方でした。
ですが…ある時私が陳家のご姉妹にお淹れしたお茶が不味い、と叱られたことがあるのです。その時に表立って庇ってくださり…その後は…」
「ご姉妹の標的がかわったのですね」

黄怜は残酷だと分かりながら、律佳の言葉を続けた。
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