6 / 7
第1章:全ての始まりは東から
試練の最中
しおりを挟む「・・違っていたらすみません。もしかしてズワートさんって、気そのものを感じなかったりしませんか?」
青龍と刀を交えた時のズワートさん…一切隙がない構えに立ち振る舞い至ってもまさに完璧だった。
だけどそれは、あくまで青龍が現れたからこそ出来た芸当であることにオレは気付いてしまった。
実際、森に入った時のズワートさんは何かを感じ取った様子は見られなかった。
オレを含めてセイラ姫やウイットさんは森の中に入った瞬間から青龍の放つあの強大な気を感じていたというのに、ズワートさんだけが終始何も変わらず、平然とした様子で青龍と対峙していたことにオレは違和感を抱いたんだ。
「・・・」
ズワートさんはその場に腰を下ろし、何か考えこんだ様子で俯いていた。
言葉を選んでいるのか、はたまた迷っているのか、定かではないけれど…オレはただただズワートさんの答えを待ち続けた。
「……良く、分かったな」
「!ズワートさん…」
この答えが、全てを物語っていた。
「じゃあ…もし、あの時…姫が声を上げなければーー」
「ああ、そうだ。俺は青龍に気付かないままだった。あの龍があの場に現れたこそ、俺は気付いたんだ」
「やっぱり…そうだったんですね」
「・・・そうなった理由は聞かねーのか」
ズワートさんの鋭い視線が針のように突き刺さる。
「…いえ、それだけ聞ければ充分です。」
「・・・気にならねーのか」
「気にならないっていえば嘘になります。けど、本当にいいんです。オレはただ…自分の中に抱いた疑問を解消したかっただけですから」
「フンッ…変な餓鬼だな、お前…」
そう言って、ズワートさんはフッと笑った。
そういえば…ズワートさんの笑った顔、初めて見たかもしれない。
セイクリッドット王国では常に稽古をしているせいなのか、険しい顔ばかりで笑顔の印象がまるでなかったんだよな。
本当に…青龍の言う通りだ。
人は変わる。オレの持つ印象だって、当然のように変わって行くんだ。
「ズワートさん、色々とありがとうございます」
「…礼言われるようなことはしてねーだろ」
「でも、オレは嬉しいんです。こんな風に話の場を設けてくださったことやズワートさんの気遣いが…本当に嬉しかった」
「お前…」
この時、何故かズワートさんは目を見開いていた。
…少し過剰に言い過ぎたかもしれない。
なんだか妙に気恥ずかしくなって、オレは慌てて話題を変えた。
「そ、そうだ。ズワートさん!オレ…寝床を作りたいんですけど先ず始めに何をすれば良いか分かりますか?」
「寝床なんざ後でいい。先ずは…そうだな。夜に備えて火を起こすのが先決だろ」
「分かりました。じゃあオレ、薪を探して来ますね!」
その場からそそくさと立ち去ろうとすると、ズワートさんが急にオレの手を引いて来た。
「ズ、ズワートさん…?」
「・・・気をつけて行って来い。」
「!はい…っ!」
少しずつ、少しずつだけど…オレ達の中で確実に何かが変化しているのは明白だった。
ズワートさんの人柄…まだ全部は分からないけど、いつかもっと打ち解けたい。
もちろんウイットさんだって、そのことには変わりない。
「ー行って来ます。」
こうしてオレは薪を探すため、森の奥へと向かったのだった。
0
あなたにおすすめの小説
神々の愛し子って何したらいいの?とりあえずのんびり過ごします
夜明シスカ
ファンタジー
アリュールという世界の中にある一国。
アール国で国の端っこの海に面した田舎領地に神々の寵愛を受けし者として生を受けた子。
いわゆる"神々の愛し子"というもの。
神々の寵愛を受けているというからには、大事にしましょうね。
そういうことだ。
そう、大事にしていれば国も繁栄するだけ。
簡単でしょう?
えぇ、なんなら周りも巻き込んでみーんな幸せになりませんか??
−−−−−−
新連載始まりました。
私としては初の挑戦になる内容のため、至らぬところもあると思いますが、温めで見守って下さいませ。
会話の「」前に人物の名称入れてみることにしました。
余計読みにくいかなぁ?と思いつつ。
会話がわからない!となるよりは・・
試みですね。
誤字・脱字・文章修正 随時行います。
短編タグが長編に変更になることがございます。
*タイトルの「神々の寵愛者」→「神々の愛し子」に変更しました。
大ッ嫌いな英雄様達に告ぐ
鮭とば
ファンタジー
剣があって、魔法があって、けれども機械はない世界。妖魔族、俗に言う魔族と人間族の、原因は最早誰にもわからない、終わらない小競り合いに、いつからあらわれたのかは皆わからないが、一旦の終止符をねじ込んだ聖女様と、それを守る5人の英雄様。
それが約50年前。
聖女様はそれから2回代替わりをし、数年前に3回目の代替わりをしたばかりで、英雄様は数え切れないぐらい替わってる。
英雄の座は常に5つで、基本的にどこから英雄を選ぶかは決まってる。
俺は、なんとしても、聖女様のすぐ隣に居たい。
でも…英雄は5人もいらないな。
企業再生のプロ、倒産寸前の貧乏伯爵に転生する
namisan
ファンタジー
数々の倒産寸前の企業を立て直してきた敏腕コンサルタントの男は、過労の末に命を落とし、異世界で目を覚ます。
転生先は、帝国北部の辺境にあるアインハルト伯爵家の若き当主、アレク。
しかし、そこは「帝国の重荷」と蔑まれる、借金まみれで領民が飢える極貧領地だった。
凍える屋敷、迫りくる借金取り、絶望する家臣たち。
詰みかけた状況の中で、アレクは独自のユニーク魔法【構造解析(アナライズ)】に目覚める。
それは、物体の構造のみならず、組織の欠陥や魔法術式の不備さえも見抜き、再構築(クラフト)するチート能力だった。
「問題ない。この程度の赤字、前世の案件に比べれば可愛いものだ」
前世の経営知識と規格外の魔法で、アレクは領地の大改革に乗り出す。
痩せた土地を改良し、特産品を生み出し、隣国の経済さえも掌握していくアレク。
そんな彼の手腕に惹かれ、集まってくるのは一癖も二癖もある高貴な美女たち。
これは、底辺から這い上がった若き伯爵が、最強の布陣で自領を帝国一の都市へと発展させ、栄華を極める物語。
元公爵令嬢は年下騎士たちに「用済みのおばさん」と捨てられる 〜今更戻ってこいと泣きつかれても献身的な美少年に溺愛されているのでもう遅いです〜
日々埋没。
ファンタジー
「新しい従者を雇うことにした。おばさんはもう用済みだ。今すぐ消えてくれ」
かつて婚約破棄され、実家を追放された元公爵令嬢のレアーヌ。
その身分を隠し、年下の冒険者たちの身の回りを世話する『メイド』として献身的に尽くしてきた彼女に突きつけられたのは、あまりに非情な追放宣告だった。
レアーヌがこれまで教育し、支えてきた若い男たちは、新しく現れた他人の物を欲しがり子悪魔メイドに骨抜きにされ、彼女を「加齢臭のする汚いおばさん」と蔑み、笑いながら追い出したのだ。
地位も、居場所も、信じていた絆も……すべてを失い、絶望する彼女の前に現れたのは、一人の美少年だった。
「僕とパーティーを組んでくれませんか? 貴方が必要なんです」
新米ながら将来の可能性を感じさせる彼は、レアーヌを「おばさん」ではなく「一人の女性」として、甘く狂おしく溺愛し始める。
一方でレアーヌという『真の支柱』を失った元パーティーは、自分たちがどれほど愚かな選択をしたかを知る由もなかった。
やがて彼らが地獄の淵で「戻ってきてくれ」と泣きついてきても、もう遅い。
レアーヌの隣には、彼女を離さないと誓った執着愛の化身が微笑んでいるのだから。
〈完結〉【書籍化&コミカライズ・取り下げ予定】毒を飲めと言われたので飲みました。
ごろごろみかん。
恋愛
王妃シャリゼは、稀代の毒婦、と呼ばれている。
国中から批判された嫌われ者の王妃が、やっと処刑された。
悪は倒れ、国には平和が戻る……はずだった。
少し冷めた村人少年の冒険記
mizuno sei
ファンタジー
辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。
トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。
優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる