陰陽占師と土地神様

猫狐

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エピローグ 燈寿家と土地神様

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平安時代、未だ悪霊怨霊が蔓延っていた時代。燈寿家はその力を奮っていた。
お偉い様方に仕える事も無ければ、平民の助けに対価を求めることもせず。更には悪霊退散の札をタダで貼り付け、平安京を護っていた。

ある時、平安城に呼び出された燈寿家当主は時の天皇に問い掛けられた。

「そなたらは本来であれば、我ら天皇家に抱えられてもおかしくはない。金銭、土地、食料。どれも一生困らない程の活躍を見せておる。
というのにそなたら一族は何も求めない。唯一求めた事と言えば、この平安京を護らせてくれという言葉だった。故に聞きたい。そなたらは何故何も求めず、我らが都を救う?」

その言葉に対して、当主はこう返したという。

「お告げがあったのです。この平安京、強いては国を護る術士でありなさいと。その方は姿をお見せになられませんが、いつも悪霊、怨霊。困った人々の場所へ案内してくれております。我らはその言葉に従い、助けているだけのこと……」

その言葉に、天皇は深く考えた。そして、こう返したと言う。

「もしもそなたらが一つ、何か我に願うとしたら。何を望む?先程も言った通り、権力の届く範囲であれば何もかも罷り通る。それだけそなたらの功績は大きいということだ」

少し考えた後、当主は返した。

「燈寿家はいつか潰れるかもしれませぬ。それは未来の出来事であり、計り知れませぬ。けれども、一つ望むとすれば……。
燈寿家、強いてはこの平安京を護る『土地神様』が居る事。これを民に知らせて欲しいのです」

その言葉に天皇は深く頷いた。そして、約束したのだ。
平安京、そしてこの日本を護る土地神様が居ることを。
それはいつの時代でも伝承として残った。天皇が力を失い、天下統一を成し遂げた豊臣秀吉も民草に伝えた。
その後に幕府となった徳川家も、日本を護る神様として奉った。

世界大戦。敗北して尚、天皇は最後まで土地神様の伝承を残した。
アメリカ統治時、とある事があった。
一人の兵士が、風邪も引いていないのに寒気がする。誰かに触られている。それが順に伝播した時、奇跡的に残った……いや、疎開にて敢えて生き残された燈寿家は昔から伝わる陰陽術により、それを解決した。
その事に深く感銘を受けた兵士達は燈寿に感謝の意を告げた。すると、時の当主は微笑んで告げた。

「私達燈寿家には土地神様がついておられます。その土地神様がおっしゃったのです。『異なる文化、敵対していたであろう人であろうと分け隔てなく祓う事』。私はそのお告げに従っただけなのです」

これによりアメリカの兵士も土地神様に感謝を示すようになり、口伝えにより伝承は残った。

時代が変わって尚、燈寿家はその正確な祓いと的確な占いにより、力を持っていた。同時に謙虚であること、土地神様による深い信仰がある事で時の権力者は燈寿家と、土地神様と呼ぶ神様を伝えてきた。

それはデジタルになり、近代化が進んでいた2022年でも変わりはなかった。
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