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悪役令息編
偽りの悪役令息は竜に溺愛されている〜婚約破棄に潜む竜の罠〜【6】
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セオドールとエドワードの結婚式が行われる大聖堂では祝福よりも戸惑いが先に満ちていた。
公爵家と子爵家の結婚。
それ自体は珍しくない。
しかしながら、相手が『かつて主君を陥れた悪役』の侍従であるとなれば話は別だ。
「セオドール殿はあんな男を婿に迎えるなんて、情に流されたのか?」
「それとも何か弱みでも握られているのかもしれないな」
列席する貴族たちはそんな憶測を交わしていた。
やがて扉が開き、セオドールが入場する。
細身の体躯、冷ややかな美貌。
今日はそれに加えて、奇妙な落ち着きがあった。
商会を率い、政を担う者としての威厳に満ちている。
続いて現れたのはエドワードだ。
無駄のない筋肉を纏った身体に正装を纏い、堂々とした歩みでセオドールの隣に並ぶ。
その位置は明らかに『侍従』のものではなかった。
「…対等、だな」
誰かが思わず漏らす。
誓いの言葉が読み上げられる間、周囲は違和感に気づき始めていた。
セオドールが弱みを握られているわけでも、エドワードが侍従としてへり下っているわけでもない。
2人の間には探るような視線はない。
警戒も緊張もない。
ただそこにあるのは長い年月を共に越えてきた者同士の揺るぎない信頼だけであった。
指輪を受け取る際、エドワードがほんの一瞬だけ笑った。
それは社交界で決して見せなかった、無防備な表情だった。
セオドールもまた、視線を向け返す。
冷酷と評されるその瞳には確かな温度が宿っていた。
「…噂は我々が信じたかった物語だったのかもしれんのぅ」
老貴族の呟きに答える者はいない。
拍手は最初こそまばらだったが、やがて大聖堂を満たした。
この日、周囲はようやく悟ったのだ。
彼らは悪役ではない。
互いを守るため、役を演じ続けた二人だったのだと。
だが、それから先の近い未来の話。
セオドールの商会はエドワードの実家オーウェン子爵家の経営する交通事業、金融事業、そして裏で暗躍する情報網を利用し、急速に勢力を拡大し、瞬く間にのし上がっていった。
他をも蹴落とすその勢いに、周りの貴族たちは彼らのことをこう呼んだ。
『悪役夫夫』と。
やはり奴らは無慈悲で狡猾で悪辣だ、と噂するのだ。
そしてそう呼ばれる度に、エドワードとセオドールは挑発するように不敵に笑うのだ。
「エドワード、今日もまた『悪役』と言われているぞ?」
「セオドール、お前もだろ?それに今更だろう」
噂はもう怖くない。
全てを手に入れた2人は今日も並んで次の一手を考えている。
――誰よりも、自由に。
公爵家と子爵家の結婚。
それ自体は珍しくない。
しかしながら、相手が『かつて主君を陥れた悪役』の侍従であるとなれば話は別だ。
「セオドール殿はあんな男を婿に迎えるなんて、情に流されたのか?」
「それとも何か弱みでも握られているのかもしれないな」
列席する貴族たちはそんな憶測を交わしていた。
やがて扉が開き、セオドールが入場する。
細身の体躯、冷ややかな美貌。
今日はそれに加えて、奇妙な落ち着きがあった。
商会を率い、政を担う者としての威厳に満ちている。
続いて現れたのはエドワードだ。
無駄のない筋肉を纏った身体に正装を纏い、堂々とした歩みでセオドールの隣に並ぶ。
その位置は明らかに『侍従』のものではなかった。
「…対等、だな」
誰かが思わず漏らす。
誓いの言葉が読み上げられる間、周囲は違和感に気づき始めていた。
セオドールが弱みを握られているわけでも、エドワードが侍従としてへり下っているわけでもない。
2人の間には探るような視線はない。
警戒も緊張もない。
ただそこにあるのは長い年月を共に越えてきた者同士の揺るぎない信頼だけであった。
指輪を受け取る際、エドワードがほんの一瞬だけ笑った。
それは社交界で決して見せなかった、無防備な表情だった。
セオドールもまた、視線を向け返す。
冷酷と評されるその瞳には確かな温度が宿っていた。
「…噂は我々が信じたかった物語だったのかもしれんのぅ」
老貴族の呟きに答える者はいない。
拍手は最初こそまばらだったが、やがて大聖堂を満たした。
この日、周囲はようやく悟ったのだ。
彼らは悪役ではない。
互いを守るため、役を演じ続けた二人だったのだと。
だが、それから先の近い未来の話。
セオドールの商会はエドワードの実家オーウェン子爵家の経営する交通事業、金融事業、そして裏で暗躍する情報網を利用し、急速に勢力を拡大し、瞬く間にのし上がっていった。
他をも蹴落とすその勢いに、周りの貴族たちは彼らのことをこう呼んだ。
『悪役夫夫』と。
やはり奴らは無慈悲で狡猾で悪辣だ、と噂するのだ。
そしてそう呼ばれる度に、エドワードとセオドールは挑発するように不敵に笑うのだ。
「エドワード、今日もまた『悪役』と言われているぞ?」
「セオドール、お前もだろ?それに今更だろう」
噂はもう怖くない。
全てを手に入れた2人は今日も並んで次の一手を考えている。
――誰よりも、自由に。
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