【R-18・連載版】部長と私の秘め事

臣桜

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予期せぬ来訪者 編

もっと心を開かないと

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 スマホを出すと、電話を掛けてきたのは亮平だ。

「はぁ……」

 溜め息をついた私は、バッグを床に置き、コートのボタンを外しながら少し不機嫌に「もしもし」と電話に出る。驚かせないでよ。

《明日、昼前に速水さん来るんだろ?》

「うん」

《昼に寿司とるつもりでいるけど、嫌いなネタあるか知ってるか?》

「あー……、ないんじゃないかな」

 年末に二人でお寿司を食べたけど、彼は何でも食べていた。

 白身も赤身も、タコ、イカも魚卵類もウニも大丈夫だった。

(そういえば、好き嫌いがあるって話、あんまり聞いてないかも)

 脂っぽいものが……っておじさんネタは聞いたけど、何が嫌いとか、アレルギーがあるとかは聞いていない。

(そういうところ、何気にポイント高いよな……)

 ご飯を作る身としては、やっぱり食べる人に好き嫌いがあると気を遣う。

 だから何でも食べられるというだけで、気兼ねなく料理ができるのはありがたい。

《分かった。お寿司屋さんにそう伝えておく》

 亮平が言い、私は意識を電話に引き戻す。

「そうだ。美奈歩はどう?」

 気になっていた事を尋ねると、亮平は少し黙ってから言う。

《先日、実家に行ってから少し話した。朱里も美奈歩も、お互いまともに話さず、勘違いしているところはあると思う。……これを機会に話してみたらどうだ?》

 私はソファに座り、仰向けに寝っ転がりながら考える。

「……うん。ずっとこのままって訳にもいかないしね」

 溜め息混じりに返事をしたあと、二、三話したあと電話を切った。

「はぁー……」

 私は大きな溜め息をつき、目を閉じる。

(次から次へと……)

 家に来るなら尊さんに来てほしいし、尊さんから電話がほしい。

 人は好意を抱いていない相手からだと、仮に元彼であったとしても、割とハイスペの部類に入る継兄であっても、鬱陶しく感じるみたいだ。

(……でも、少なくとも亮平に対しては、『好意を抱いてない』なんて思ったら駄目なんだろうな)

 尊さんがうちの家族と仲良くしたいと思ってくれているなら、子供っぽくツンツンしていてはいけない。

「もっと心を開かないと」

 呟いて、私は前髪を掻き上げる。

 尊さんと付き合うようになって、我ながらかなり明るくなったと思っている。

 彼と話しているとポンポンと会話が進み、とても楽しい。

 勿論、出会う前も恵や昭人との付き合いで笑っていたけれど、今とは笑いの質が違う気がする。

 ずっと私は家族の事で悩んでいて、常に胸の奥にモヤモヤを抱えている状態だった。

 恵や昭人と遊ぶと気が紛れるけれど、楽しい時間が終わったあとは静かに現実に戻っていく。

 ちょっと前までその状況が継続していたけど、横浜での一件があってから亮平が何を考えていたのかを知り、私も態度を改め、少しだけ変わる事ができた。

 不思議な事に、私たち家族は尊さんのお陰で少しずつ歩み寄れている。

(今は亮平から連絡があっても、前みたいに話すだけでも嫌っていう気持ちにはならない。尊さんが緩衝材になってくれてるんだろうな。……美奈歩ともうまくいけばいいけど)

 そう思うものの、継妹との関係改善まで尊さんに頼ろうとは思っていない。

(自分の家族なんだから、自分でなんとかしないと)

「うん」と頷いたあと、私は足を上げ、反動をつけて起き上がる。

 それから尊さんにメッセージを送った。

【今、電話大丈夫です?】

 すぐに既読がつき【大丈夫。俺から掛ける】という返事のあと、電話が掛かってきた。

《どうした?》

 尊さんの声を聞いた瞬間、この上なく安心した。

「あのですね、さっき家の前に昭人がいまして」

《は?》

 彼は高めの声を上げ、しばし黙る。

 ……そうなりますよね……。私もびっくりしました。

《……彼、なんだって? 家に上げたのか?》

 そのあと、予想通りじっとりとした声がする。

「上げる訳ないじゃないですか」

《それなら良かったけど。……用件は?》

「いえ、聞いてません。夜中に突撃されて冷静に話せる気がしないし、日を改めて昼間に話したいと伝えたら、帰ってくれました」

《偉い。すげぇ偉い。速水スタンプ五十個だ》

 尊さんが和ませようと言ってくれた言葉を聞き、緊張していた心が緩んできた。
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