186 / 782
予期せぬ来訪者 編
もっと心を開かないと
しおりを挟む
スマホを出すと、電話を掛けてきたのは亮平だ。
「はぁ……」
溜め息をついた私は、バッグを床に置き、コートのボタンを外しながら少し不機嫌に「もしもし」と電話に出る。驚かせないでよ。
《明日、昼前に速水さん来るんだろ?》
「うん」
《昼に寿司とるつもりでいるけど、嫌いなネタあるか知ってるか?》
「あー……、ないんじゃないかな」
年末に二人でお寿司を食べたけど、彼は何でも食べていた。
白身も赤身も、タコ、イカも魚卵類もウニも大丈夫だった。
(そういえば、好き嫌いがあるって話、あんまり聞いてないかも)
脂っぽいものが……っておじさんネタは聞いたけど、何が嫌いとか、アレルギーがあるとかは聞いていない。
(そういうところ、何気にポイント高いよな……)
ご飯を作る身としては、やっぱり食べる人に好き嫌いがあると気を遣う。
だから何でも食べられるというだけで、気兼ねなく料理ができるのはありがたい。
《分かった。お寿司屋さんにそう伝えておく》
亮平が言い、私は意識を電話に引き戻す。
「そうだ。美奈歩はどう?」
気になっていた事を尋ねると、亮平は少し黙ってから言う。
《先日、実家に行ってから少し話した。朱里も美奈歩も、お互いまともに話さず、勘違いしているところはあると思う。……これを機会に話してみたらどうだ?》
私はソファに座り、仰向けに寝っ転がりながら考える。
「……うん。ずっとこのままって訳にもいかないしね」
溜め息混じりに返事をしたあと、二、三話したあと電話を切った。
「はぁー……」
私は大きな溜め息をつき、目を閉じる。
(次から次へと……)
家に来るなら尊さんに来てほしいし、尊さんから電話がほしい。
人は好意を抱いていない相手からだと、仮に元彼であったとしても、割とハイスペの部類に入る継兄であっても、鬱陶しく感じるみたいだ。
(……でも、少なくとも亮平に対しては、『好意を抱いてない』なんて思ったら駄目なんだろうな)
尊さんがうちの家族と仲良くしたいと思ってくれているなら、子供っぽくツンツンしていてはいけない。
「もっと心を開かないと」
呟いて、私は前髪を掻き上げる。
尊さんと付き合うようになって、我ながらかなり明るくなったと思っている。
彼と話しているとポンポンと会話が進み、とても楽しい。
勿論、出会う前も恵や昭人との付き合いで笑っていたけれど、今とは笑いの質が違う気がする。
ずっと私は家族の事で悩んでいて、常に胸の奥にモヤモヤを抱えている状態だった。
恵や昭人と遊ぶと気が紛れるけれど、楽しい時間が終わったあとは静かに現実に戻っていく。
ちょっと前までその状況が継続していたけど、横浜での一件があってから亮平が何を考えていたのかを知り、私も態度を改め、少しだけ変わる事ができた。
不思議な事に、私たち家族は尊さんのお陰で少しずつ歩み寄れている。
(今は亮平から連絡があっても、前みたいに話すだけでも嫌っていう気持ちにはならない。尊さんが緩衝材になってくれてるんだろうな。……美奈歩ともうまくいけばいいけど)
そう思うものの、継妹との関係改善まで尊さんに頼ろうとは思っていない。
(自分の家族なんだから、自分でなんとかしないと)
「うん」と頷いたあと、私は足を上げ、反動をつけて起き上がる。
それから尊さんにメッセージを送った。
【今、電話大丈夫です?】
すぐに既読がつき【大丈夫。俺から掛ける】という返事のあと、電話が掛かってきた。
《どうした?》
尊さんの声を聞いた瞬間、この上なく安心した。
「あのですね、さっき家の前に昭人がいまして」
《は?》
彼は高めの声を上げ、しばし黙る。
……そうなりますよね……。私もびっくりしました。
《……彼、なんだって? 家に上げたのか?》
そのあと、予想通りじっとりとした声がする。
「上げる訳ないじゃないですか」
《それなら良かったけど。……用件は?》
「いえ、聞いてません。夜中に突撃されて冷静に話せる気がしないし、日を改めて昼間に話したいと伝えたら、帰ってくれました」
《偉い。すげぇ偉い。速水スタンプ五十個だ》
尊さんが和ませようと言ってくれた言葉を聞き、緊張していた心が緩んできた。
「はぁ……」
溜め息をついた私は、バッグを床に置き、コートのボタンを外しながら少し不機嫌に「もしもし」と電話に出る。驚かせないでよ。
《明日、昼前に速水さん来るんだろ?》
「うん」
《昼に寿司とるつもりでいるけど、嫌いなネタあるか知ってるか?》
「あー……、ないんじゃないかな」
年末に二人でお寿司を食べたけど、彼は何でも食べていた。
白身も赤身も、タコ、イカも魚卵類もウニも大丈夫だった。
(そういえば、好き嫌いがあるって話、あんまり聞いてないかも)
脂っぽいものが……っておじさんネタは聞いたけど、何が嫌いとか、アレルギーがあるとかは聞いていない。
(そういうところ、何気にポイント高いよな……)
ご飯を作る身としては、やっぱり食べる人に好き嫌いがあると気を遣う。
だから何でも食べられるというだけで、気兼ねなく料理ができるのはありがたい。
《分かった。お寿司屋さんにそう伝えておく》
亮平が言い、私は意識を電話に引き戻す。
「そうだ。美奈歩はどう?」
気になっていた事を尋ねると、亮平は少し黙ってから言う。
《先日、実家に行ってから少し話した。朱里も美奈歩も、お互いまともに話さず、勘違いしているところはあると思う。……これを機会に話してみたらどうだ?》
私はソファに座り、仰向けに寝っ転がりながら考える。
「……うん。ずっとこのままって訳にもいかないしね」
溜め息混じりに返事をしたあと、二、三話したあと電話を切った。
「はぁー……」
私は大きな溜め息をつき、目を閉じる。
(次から次へと……)
家に来るなら尊さんに来てほしいし、尊さんから電話がほしい。
人は好意を抱いていない相手からだと、仮に元彼であったとしても、割とハイスペの部類に入る継兄であっても、鬱陶しく感じるみたいだ。
(……でも、少なくとも亮平に対しては、『好意を抱いてない』なんて思ったら駄目なんだろうな)
尊さんがうちの家族と仲良くしたいと思ってくれているなら、子供っぽくツンツンしていてはいけない。
「もっと心を開かないと」
呟いて、私は前髪を掻き上げる。
尊さんと付き合うようになって、我ながらかなり明るくなったと思っている。
彼と話しているとポンポンと会話が進み、とても楽しい。
勿論、出会う前も恵や昭人との付き合いで笑っていたけれど、今とは笑いの質が違う気がする。
ずっと私は家族の事で悩んでいて、常に胸の奥にモヤモヤを抱えている状態だった。
恵や昭人と遊ぶと気が紛れるけれど、楽しい時間が終わったあとは静かに現実に戻っていく。
ちょっと前までその状況が継続していたけど、横浜での一件があってから亮平が何を考えていたのかを知り、私も態度を改め、少しだけ変わる事ができた。
不思議な事に、私たち家族は尊さんのお陰で少しずつ歩み寄れている。
(今は亮平から連絡があっても、前みたいに話すだけでも嫌っていう気持ちにはならない。尊さんが緩衝材になってくれてるんだろうな。……美奈歩ともうまくいけばいいけど)
そう思うものの、継妹との関係改善まで尊さんに頼ろうとは思っていない。
(自分の家族なんだから、自分でなんとかしないと)
「うん」と頷いたあと、私は足を上げ、反動をつけて起き上がる。
それから尊さんにメッセージを送った。
【今、電話大丈夫です?】
すぐに既読がつき【大丈夫。俺から掛ける】という返事のあと、電話が掛かってきた。
《どうした?》
尊さんの声を聞いた瞬間、この上なく安心した。
「あのですね、さっき家の前に昭人がいまして」
《は?》
彼は高めの声を上げ、しばし黙る。
……そうなりますよね……。私もびっくりしました。
《……彼、なんだって? 家に上げたのか?》
そのあと、予想通りじっとりとした声がする。
「上げる訳ないじゃないですか」
《それなら良かったけど。……用件は?》
「いえ、聞いてません。夜中に突撃されて冷静に話せる気がしないし、日を改めて昼間に話したいと伝えたら、帰ってくれました」
《偉い。すげぇ偉い。速水スタンプ五十個だ》
尊さんが和ませようと言ってくれた言葉を聞き、緊張していた心が緩んできた。
115
あなたにおすすめの小説
今さらやり直しは出来ません
mock
恋愛
3年付き合った斉藤翔平からプロポーズを受けれるかもと心弾ませた小泉彩だったが、当日仕事でどうしても行けないと断りのメールが入り意気消沈してしまう。
落胆しつつ帰る道中、送り主である彼が見知らぬ女性と歩く姿を目撃し、いてもたってもいられず後を追うと二人はさっきまで自身が待っていたホテルへと入っていく。
そんなある日、夢に出てきた高木健人との再会を果たした彩の運命は少しずつ変わっていき……
結婚式の晩、「すまないが君を愛することはできない」と旦那様は言った。
雨野六月(旧アカウント)
恋愛
「俺には愛する人がいるんだ。両親がどうしてもというので仕方なく君と結婚したが、君を愛することはできないし、床を交わす気にもなれない。どうか了承してほしい」
結婚式の晩、新妻クロエが夫ロバートから要求されたのは、お飾りの妻になることだった。
「君さえ黙っていれば、なにもかも丸くおさまる」と諭されて、クロエはそれを受け入れる。そして――
「お前との婚約はなかったことに」と言われたので、全財産持って逃げました
ほーみ
恋愛
その日、私は生まれて初めて「人間ってここまで自己中心的になれるんだ」と知った。
「レイナ・エルンスト。お前との婚約は、なかったことにしたい」
そう言ったのは、私の婚約者であり王太子であるエドワルド殿下だった。
「……は?」
まぬけな声が出た。無理もない。私は何の前触れもなく、突然、婚約を破棄されたのだから。
私には婚約者がいた
れもんぴーる
恋愛
私には優秀な魔法使いの婚約者がいる。彼の仕事が忙しくて会えない時間が多くなり、その間私は花の世話をして過ごす。ある日、彼の恋人を名乗る女性から婚約を解消してと手紙が・・・。私は大切な花の世話を忘れるほど嘆き悲しむ。すると彼は・・・?
*かなりショートストーリーです。長編にするつもりで書き始めたのに、なぜか主人公の一人語り風になり、書き直そうにもこれでしか納まりませんでした。不思議な力が(#^^#)
*なろうにも投稿しています
双子の姉がなりすまして婚約者の寝てる部屋に忍び込んだ
海林檎
恋愛
昔から人のものを欲しがる癖のある双子姉が私の婚約者が寝泊まりしている部屋に忍びこんだらしい。
あぁ、大丈夫よ。
だって彼私の部屋にいるもん。
部屋からしばらくすると妹の叫び声が聞こえてきた。
友人の結婚式で友人兄嫁がスピーチしてくれたのだけど修羅場だった
海林檎
恋愛
え·····こんな時代錯誤の家まだあったんだ····?
友人の家はまさに嫁は義実家の家政婦と言った風潮の生きた化石でガチで引いた上での修羅場展開になった話を書きます·····(((((´°ω°`*))))))
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる