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契約に縛られて1 ☆
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その後、クレハはノアと共に夕食のテーブルについて、恐縮しながら彼と同じものを食べた。
テーブルマナーなどはノアが優しく教えてくれ、「いつ客が来るか分からないから」という理由で、クレハも真面目に学ぼうとするのだった。
それから屋敷の中をノアが案内してくれた。
鏡のように床が磨き上げられたダンスホールや、ビリヤードなどが置いてある遊戯室。使用人がいる部屋から屋敷のほとんどを案内され、クレハはようやくベッドに潜り込むことができた。
(柔らかい……。マットレスもお布団もとても気持ちいい)
中に水鳥の羽根のいい部分だけを使っているだろう羽毛布団は、何度寝返りを打っても優しくクレハの体を包んでくれる。
(それにこのネグリジェも、シルクなだけあって肌を滑るようだわ)
贅を尽くした環境にはただただ溜め息しか出ず、自分の暮らしと比べようにも規模が違う。
本当なら急展開した現状について、どういう運命なのかと頭を悩ませるべきなのかもしれない。
契約書も、いま思えば勢いでサインしてしまったかもしれない。
だが、このベッドでの幸せに包まれると、そのすべてが柔らかくとろけていくような気がした。
なので、クレハはできるだけ何も考えずに眠りにつくことにした。
(そう、世の中考えるだけでは、どうにもならないこともあるのよ)
意識がゆっくりと眠りに引き込まれようとするなか、そんなことを考えていると、小さなノック音がしたような気がした。
「……?」
窓側へ向いていた体をモソリと反転させると、部屋の中を黒い人影がこちらに向かって近づいてくる。
「えっ」
驚いて思わず声を漏らすと、その人影が「僕だよ」とノアの声を出した。
「ノアさま……、どうしてこんな時間に? 何かありましたか?」
主人が立っているのに横になっている訳にはいかず、クレハは起き上がると裸足のままベッドを下りようとする。
「そのままでいいよ」
が、それをノアが制し、あろうことか彼はそのまま自らクレハのベッドの中に潜り込んできた。
「ノアさま?」
せっかく起き上がった体にはノアの手がかかり、そのままクレハは押し倒されてまた枕に頭をつけることになる。
「一緒に寝よう、クレハ」
すぐ目の前でノアの琥珀色の目が、月明かりに照らされて濡れたように光っている。
「ですが使用人と一緒に寝るなど……」
「じゃあ、命令だ。いいね?」
クレハが反論しようとするとそう言われてしまい、それでは言い返しようがない。
「これから僕は君の体に触る。抵抗はあるだろうか?」
「え……? あ、あの……」
ノアの言葉にクレハは契約書を思い出し、だがその内容も程度によると思う。
手が触れ合ったとか、夕方のように抱き締めるとか、その程度なら『可』だろう。
だが年頃の男女が同じベッドに入って体を触るとなると……。
「僕が君に求めているのは、癒やしだ。父と使用人だけの暮らしの中で、年頃の男である僕には大事に思う女性が必要だと思っている。僕が求めているのは、好意を持っている女性に触れて優しくしてもらうこと。……甘えたい、と言ってもいい」
同じ布団の中でぬくぬくとしながら、ノアはクレハに自分の心内を説明する。
長い説明の一番後の一言に、彼の言いたいことが全部まとめられている気がした。
「甘えたい」と言われてしまうと、クレハだって年上の女性なのでくすぐったい気持ちになる。
「甘えたいのなら、いいですよ。この夜の間だけ、私を姉だと思ってください」
そう言ってクレハは自らノアの背中に手を回し、そっと抱き締めた。
「ふふ、じゃあお姉さまと呼んでみようかな」
ノアはこの秘密の遊戯が気に入ったようだ。
悪戯っぽく笑うと、クレハの耳元で「お姉さま」と囁く。
「……っ」
それがやけに色っぽく、年上の余裕をみせたはずのクレハは、瞬時に後悔することになった。
どうにもこのノアという青年は年齢以上に色気があり、それを自分の意思で使い分けている節がある。
もしかして、自分はまんまとそれに引っ掛かってしまったのでは……、と思ってしまうのだ。
「お姉さまの体は温かいですね。それに柔らかい」
ノアの体はネグリジェの上からクレハの体を優しくまさぐり、彼女の曲線をなぞって楽しんでいる。
「ん……っ、あ」
背中の下部から腰のラインをなぞられ、クレハはそんな声を漏らしてしまった。
「お姉さま、くすぐったいのですか?」
クレハの耳元に涼やかな声を流し込み、ノアはそのまま彼女の丸い腰をさわさわと撫で、遂には肉感的な尻の肉に指先を喰い込ませた。
「ぅ……、あっ」
途端、ビリッと何かがクレハの体を駆けあがり、彼女はノアにしがみつく。
胸はドキドキし、ノアの体臭なのか高級でいい香りを吸い込むと、酔ってしまって正常な判断が下せない気がする。
「あの……、あの、ノアさま」
震える指を彼の肩にかけ、体を離して一端冷静になろうとしたが、彼は意地悪そうに目を細めて笑う。
「お姉さま、弟に『さま』をつけるなんて変ですね。いつも通りにノアと呼んでください」
「え……っ? で、でも……」
「呼ばないと……」
ノアの妙な遊びはエスカレートし、彼は言葉で脅しながら指先を尻の谷間に滑らせる。
「ノ……、ノア、ちょっと待って」
「なんです?」
「お……、お姉さまといつもこんなことをしていたかしら?」
恥ずかしいと思いつつも芝居に乗ると、ノアは嬉しそうに笑ってクレハの首元に顔を埋めた。
「一人寝が寂しいと言って、お姉さまが僕を離さないんじゃないですか」
「え……、えぇっ?」
なんとかこの状況から逃れようとしてもそれは叶わず、ノアの手はさらにクレハの尻をネグリジェの上から執拗に撫で回す。
「弟の体温がないと眠れないなんて、可愛らしいお姉さまですね」
「わ……、私そんなこと言ってな……」
さすがに反論しようとしたクレハの唇を、ノアの指先がそっと押さえた。
押さえている力は優しいが、下唇を潰されてしまうと話せなくなってしまう。
「体温ついでに僕の熱も欲しいとねだっているじゃないですか」
「えぇ?」
「熱」という言葉の裏に秘められたモノを推し量り、クレハは赤くなる。
この遊びはどこまで続くのだろうと気を遠くさせても、夜はまだまだ長い。
「あ、あの……、そろそろ眠らないと明日起きるのが遅くなってしまいま……しまう、わ」
赤髪を撫でて宥めると、彼はクレハの真意を推し量るように至近距離から見つめてくる。
「ノ……、ノア」
「お姉さま、あなたが欲しい」
琥珀色の目が甘えるように上目遣いでクレハを見て、手はそっと大きな胸の膨らみに這わされた。
きゅ……と手に力を込めると、ノアの手の中でクレハの胸が柔らかく形を変え、思わず彼女は甘い吐息をつく。
「お姉さま、好きです」
ノアの指先はネグリジェの下にある胸の頂を探り当て、その周囲をゆっくりとなぞってゆく。
クルクルと円を描く動きにクレハは「あぁ……」とまた息をつき、腰を揺らす。
「いけないわ、ノア……」
口ではそう言っているものの、クレハの目はうっとりと閉じている。胸にもたらされる優しい快楽に身をゆだね、体は「もっと」と望んでいた。
一番敏感な先端に触れてほしいと思ってしまうのに、ノアの指先は焦らすように周囲を優しくなぞるだけだ。
テーブルマナーなどはノアが優しく教えてくれ、「いつ客が来るか分からないから」という理由で、クレハも真面目に学ぼうとするのだった。
それから屋敷の中をノアが案内してくれた。
鏡のように床が磨き上げられたダンスホールや、ビリヤードなどが置いてある遊戯室。使用人がいる部屋から屋敷のほとんどを案内され、クレハはようやくベッドに潜り込むことができた。
(柔らかい……。マットレスもお布団もとても気持ちいい)
中に水鳥の羽根のいい部分だけを使っているだろう羽毛布団は、何度寝返りを打っても優しくクレハの体を包んでくれる。
(それにこのネグリジェも、シルクなだけあって肌を滑るようだわ)
贅を尽くした環境にはただただ溜め息しか出ず、自分の暮らしと比べようにも規模が違う。
本当なら急展開した現状について、どういう運命なのかと頭を悩ませるべきなのかもしれない。
契約書も、いま思えば勢いでサインしてしまったかもしれない。
だが、このベッドでの幸せに包まれると、そのすべてが柔らかくとろけていくような気がした。
なので、クレハはできるだけ何も考えずに眠りにつくことにした。
(そう、世の中考えるだけでは、どうにもならないこともあるのよ)
意識がゆっくりと眠りに引き込まれようとするなか、そんなことを考えていると、小さなノック音がしたような気がした。
「……?」
窓側へ向いていた体をモソリと反転させると、部屋の中を黒い人影がこちらに向かって近づいてくる。
「えっ」
驚いて思わず声を漏らすと、その人影が「僕だよ」とノアの声を出した。
「ノアさま……、どうしてこんな時間に? 何かありましたか?」
主人が立っているのに横になっている訳にはいかず、クレハは起き上がると裸足のままベッドを下りようとする。
「そのままでいいよ」
が、それをノアが制し、あろうことか彼はそのまま自らクレハのベッドの中に潜り込んできた。
「ノアさま?」
せっかく起き上がった体にはノアの手がかかり、そのままクレハは押し倒されてまた枕に頭をつけることになる。
「一緒に寝よう、クレハ」
すぐ目の前でノアの琥珀色の目が、月明かりに照らされて濡れたように光っている。
「ですが使用人と一緒に寝るなど……」
「じゃあ、命令だ。いいね?」
クレハが反論しようとするとそう言われてしまい、それでは言い返しようがない。
「これから僕は君の体に触る。抵抗はあるだろうか?」
「え……? あ、あの……」
ノアの言葉にクレハは契約書を思い出し、だがその内容も程度によると思う。
手が触れ合ったとか、夕方のように抱き締めるとか、その程度なら『可』だろう。
だが年頃の男女が同じベッドに入って体を触るとなると……。
「僕が君に求めているのは、癒やしだ。父と使用人だけの暮らしの中で、年頃の男である僕には大事に思う女性が必要だと思っている。僕が求めているのは、好意を持っている女性に触れて優しくしてもらうこと。……甘えたい、と言ってもいい」
同じ布団の中でぬくぬくとしながら、ノアはクレハに自分の心内を説明する。
長い説明の一番後の一言に、彼の言いたいことが全部まとめられている気がした。
「甘えたい」と言われてしまうと、クレハだって年上の女性なのでくすぐったい気持ちになる。
「甘えたいのなら、いいですよ。この夜の間だけ、私を姉だと思ってください」
そう言ってクレハは自らノアの背中に手を回し、そっと抱き締めた。
「ふふ、じゃあお姉さまと呼んでみようかな」
ノアはこの秘密の遊戯が気に入ったようだ。
悪戯っぽく笑うと、クレハの耳元で「お姉さま」と囁く。
「……っ」
それがやけに色っぽく、年上の余裕をみせたはずのクレハは、瞬時に後悔することになった。
どうにもこのノアという青年は年齢以上に色気があり、それを自分の意思で使い分けている節がある。
もしかして、自分はまんまとそれに引っ掛かってしまったのでは……、と思ってしまうのだ。
「お姉さまの体は温かいですね。それに柔らかい」
ノアの体はネグリジェの上からクレハの体を優しくまさぐり、彼女の曲線をなぞって楽しんでいる。
「ん……っ、あ」
背中の下部から腰のラインをなぞられ、クレハはそんな声を漏らしてしまった。
「お姉さま、くすぐったいのですか?」
クレハの耳元に涼やかな声を流し込み、ノアはそのまま彼女の丸い腰をさわさわと撫で、遂には肉感的な尻の肉に指先を喰い込ませた。
「ぅ……、あっ」
途端、ビリッと何かがクレハの体を駆けあがり、彼女はノアにしがみつく。
胸はドキドキし、ノアの体臭なのか高級でいい香りを吸い込むと、酔ってしまって正常な判断が下せない気がする。
「あの……、あの、ノアさま」
震える指を彼の肩にかけ、体を離して一端冷静になろうとしたが、彼は意地悪そうに目を細めて笑う。
「お姉さま、弟に『さま』をつけるなんて変ですね。いつも通りにノアと呼んでください」
「え……っ? で、でも……」
「呼ばないと……」
ノアの妙な遊びはエスカレートし、彼は言葉で脅しながら指先を尻の谷間に滑らせる。
「ノ……、ノア、ちょっと待って」
「なんです?」
「お……、お姉さまといつもこんなことをしていたかしら?」
恥ずかしいと思いつつも芝居に乗ると、ノアは嬉しそうに笑ってクレハの首元に顔を埋めた。
「一人寝が寂しいと言って、お姉さまが僕を離さないんじゃないですか」
「え……、えぇっ?」
なんとかこの状況から逃れようとしてもそれは叶わず、ノアの手はさらにクレハの尻をネグリジェの上から執拗に撫で回す。
「弟の体温がないと眠れないなんて、可愛らしいお姉さまですね」
「わ……、私そんなこと言ってな……」
さすがに反論しようとしたクレハの唇を、ノアの指先がそっと押さえた。
押さえている力は優しいが、下唇を潰されてしまうと話せなくなってしまう。
「体温ついでに僕の熱も欲しいとねだっているじゃないですか」
「えぇ?」
「熱」という言葉の裏に秘められたモノを推し量り、クレハは赤くなる。
この遊びはどこまで続くのだろうと気を遠くさせても、夜はまだまだ長い。
「あ、あの……、そろそろ眠らないと明日起きるのが遅くなってしまいま……しまう、わ」
赤髪を撫でて宥めると、彼はクレハの真意を推し量るように至近距離から見つめてくる。
「ノ……、ノア」
「お姉さま、あなたが欲しい」
琥珀色の目が甘えるように上目遣いでクレハを見て、手はそっと大きな胸の膨らみに這わされた。
きゅ……と手に力を込めると、ノアの手の中でクレハの胸が柔らかく形を変え、思わず彼女は甘い吐息をつく。
「お姉さま、好きです」
ノアの指先はネグリジェの下にある胸の頂を探り当て、その周囲をゆっくりとなぞってゆく。
クルクルと円を描く動きにクレハは「あぁ……」とまた息をつき、腰を揺らす。
「いけないわ、ノア……」
口ではそう言っているものの、クレハの目はうっとりと閉じている。胸にもたらされる優しい快楽に身をゆだね、体は「もっと」と望んでいた。
一番敏感な先端に触れてほしいと思ってしまうのに、ノアの指先は焦らすように周囲を優しくなぞるだけだ。
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