とある少年の奮闘記

夢じゃない

連れていかれた先は、でっかい部屋だった。そこに押し込められて、鍵をかけられた。

何が何だか分からない。
これは夢だと思いたい。なにか、確認する方法はないか？

魔法…
そうだ、魔法が本当に使えたら、ここは夢だ。現実じゃない。

「取説トリセツ」

そういうと、ポンっと目の前に本が出てきた。

やっぱり夢だ。現実なら魔法なんて使えない。俺は死んでない。
壁にかけてあるデッカイ鏡で顔を確認すると、田中小太郎の面影は全くない。

「誰だよ…、この金髪碧眼優男は…」

とりあえず、説明書を読めば何か解るかもしれない。

俺の手にある取説は…

「タマゴヤキ王国取扱説明書…？」

いや、どこの国だよ…。世界地図にタマゴヤキなんて国があってら俺は絶対に忘れてないぞ。ここは夢だ。
とりあえず、読めばわかるか。

【ゼフ・アサフェルト　37才】
タマゴヤキ王国、15代国王
国民から絶大な人気と信頼を得た、歴代最高の王


もしかして、さっきのバッハみたいなヅラのオッサンは王様だったのか。なんか、凄い男だったんだな。
まぁ、そんな事は俺に関係ないし、このオッサンの人物の詳しい説明は飛ばそう。

【ジーク・アサフェルト　17才】
タマゴヤキ王国の王太子

『ジーク』…って、バッハのオッサンが俺を見てそう呼んでたな。俺は息子役なのか。

【性格】
父王と真逆。
我儘、臆病者、横柄、傲慢、怠け者、自己中、強欲、
とりあえず、国民からの信頼度ゼロ

…取扱説明書に『とりあえず』って駄目だろ。

【その他】
タナカ　コタロウと同じ日時に死亡。死因は心臓発作、生成の神による肉体の蘇生に成功。ジークの魂は通常通り死神に刈り取られ、タナカ　コタロウ入魂。

……入魂っていうのは何か違う気がする。

「ん？」

俺の事も書いてある。

【タナカ　コタロウ　17才】

本来５月10日に殺されるべき所を、16日に殺される。
生成の神の文字が汚く、10日を16日として死神が受理した事が原因。死亡日が遅れたため、正式に死亡者として処理不可。

タナカ　コタロウはジーク・アサフェルトとして無事復活


…全くとして無事じゃないだろ。

５月16日、刺された日は違いない。ってことは、ここが今の俺の現実なのかも…。

それにしても、死因がありえない。
神様の文字が汚いから死亡日を間違えたって。
どちらにしても死んでた事には変わりないけどさ。

神様って死亡予定日の報告が紙媒体なのか。

肉体や魔法を付与できるのに、そこだけアナログだな。