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しおりを挟む本屋の前を通りかかった時、和葉は声を上げた。
「そうだ! こないだ達也の記事みたよ!」
「記事?」
「Gamewaywayだっけ?」
「ああ特集のやつね」
最近発売されたゲーム雑誌のプロゲーマー特集に俺も写真付きで載った。事務所が勝手に話を進めただけで内容は知らない。
スポンサーがどうとかのお金に関わることだから、結局は俺に断る権利もないんだけど。
「見てないの? 結構ちゃんと写真載ってたよ」
「かっこよく写ってるやつだろうな?」
和葉が雑誌を見つけてページをめくった。
「ほら!」
見せられたページには何人かのプロゲーマーが写真付きで紹介されていて、俺は自分の紹介文を見て鼻で笑ってしまった。
「〝縦横無尽に駆けるクールなイケメンプロゲーマー・ムジンフリーリィ〟だって!」
和葉が読み上げる前から俺はニヤついている。
そんな本当のこと書くとは、なんて理解の深い編集者だろうか。褒めて遣わす。
「これでまた女子人気があがるな」
「またって? 女子に人気なの? 達也が?」
俺の魅力を認めん女だ。
集中した時の真剣な眼差しに、黄色い声援が上がったあの伝説の大会映像を見せてやろうか。
「クールって何を見て思ったんだろうね?」
「どう見てもクールだろ」
「こないだ小っちゃい蜘蛛にビビって悲鳴上げてたの誰よ。イケメンも言い過ぎじゃない?」
「ねえ黙って」
どんな敵兵もゾンビも怪物も俺の敵ではない。
ただそれは画面越しであって、蜘蛛は現実にいるのだ。俺の平穏に直接的に関わってくるのだから比較するには次元が違う。
「雑誌に載って有名人みたいだけど、達也は達也だもんね。可愛いもんだよ」
「なんだそのおかんみたいな言い方は」
「人気があっても彼女の1人も作れないんだから。見栄を張らなくたっていいんですよー?」
俺のツッコミを笑い飛ばして、調子に乗るのがこいつの悪い癖だ。
「作れないんじゃなくて、作らないの」
「またまたモテる男発言しちゃって」
「実際にモテるんだよ俺は。モテるから1人に絞れないし、絞る必要もない」
こういう会話、結構何回もしたことがある。
和葉はすぐ、俺に彼女が居ないことを憐れむような発言をしてくるのだが、和葉にも彼氏は居ないはずだ。
だが俺には考えがあって、そこには触れない。
触れて欲しそうに見えればそれは、面倒臭い恋愛話に傾れ込む前兆だ。
俺は麻央と和葉みたいに恋愛中毒じゃない。
人の恋愛話にも、恋愛の悩み相談にも全く興味がないのだ。
「俺は帰って配信するのだ」
「麻央ちゃん居ないのに、ご飯はどうするのよ」
「麻央が作り置きしたって言ってた」
「さすが麻央ちゃん。良いお嫁さんになるね。今日の献立は何だろ?」
また家までついてくる気か?
案の定、和葉は家で晩飯を食って帰った。
帰り道で買ったプリンまでデザートにして。
作り置きをしたってことは、麻央は最初から帰ってこないつもりだったらしい。
彼氏と甘く熱い一夜を過ごして居るんだろうか。
半年ぶりに会うんだもんな。
俺が彼氏さんの立場なら、最低でも3回は頑張ると思う。いや、濃厚なの2回がいいな。疲れるし。
育てた女が巣立って行ったのは寂しいが、良き結果を土産話としてくれれば俺は満足だ。
頑張れよ、麻央。
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**********
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