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Lv.6-2
しおりを挟むマルチプレイなので誰が仲間になっても相手になっても不思議じゃない。
けれどまるで因縁のように今、その名前が俺の前に立ち塞がった。
画面のマップ上では味方の動きしか見えないが、既に撃ち合いを始めている区画もある。
俺はステルス操作で敵の陣地に回り込む。
『なんかこの辺に地雷とかありそう。
地形的に、このルートが通りやすいって相手も分かってると思うんだよね。だから敢えて遠回り。
特に今は右の区画で仲間が派手に遊んでくれてるから、残ってる敵の意識もあっちに向きがち』
ちゃんと自分の行動の理由を述べる。何を思い何を警戒しているかも説明すれば、考え方の共有ができて視聴者の知恵になる。
敵の本陣近くまで来ると、俺の視界には2人の敵。
『さて目の前には2人居るが……俺が先に狙うべきはどっちか分かる?』
コメント欄にはいくつか意見が流れてくる。
『どっちが正解かというと、手前の方。
防具見たら分かるけど、手前の方が防御力高めだからね。一撃必殺のSG浴びせてもちょっと体力余りそうだから直後にナイフに切り替えてトドメ。
多分、奥の奴が俺に撃ってくるけど多少の怪我はしゃあない。トドメさした直後にSGに切り替えてあの岩に隠れてリロード。追っかけてくる間にもう一発撃てるようになる』
俺の計画を話して行動に移せば、まるで予言していたかのようにその通りに事は進む。
[@緑ぱんつ すげ。おもしろ]
[@魔法使い リロードギリ!]
[@サカナ 時間の使い方がうますぎる]
ふふふそうだろう。コメント欄を見てニヤける余裕もある。
『ちょっと怪我したの治して右の区画に参入したいな。この近くにまだ敵が居そうだし一瞬、隠れたいけど』
その時、敵の影が目に入る。
『おーやべ、見つかった』
逃げつつ返り討ちにできる自信はある。
だが、その相手の名前がシロサイであると気づくと一瞬で俺の余裕が掻き消された。
『……ッチ』
[@村田 ムジン舌打ちした?]
[@happy チッて言った?]
[@まだ36歳 なんか聞こえたぞ]
いきなり発射してくるその武器はサブマシンガン。連射力に優れていてまさに銃弾の雨だ。
容赦なく俺を狙って高速連射を見舞われた。
身体を回転させながら岩場に駆け込むも、その間にいくつか銃弾が掠り体力が削られた。
このまま乱射されれば分が悪い。
だが俺を追い詰めたと思ったのだろうシロサイは、無防備にも岩場に突っ込んできた。
『───もらった』
シロサイに銃口を向けられた時にはもう、俺のショットガンが火を吹いていた。
さすが一撃必殺。
先ほどの高い防御力を持った防具の敵はナイフでトドメが必要だったが、機動力も考えた装備だったのだろうシロサイの防具は突き破れた。
そのまま俺のチームが勝利。
[@モクメ やられたと思たw]
[@イカ2貫 あぶなーーww]
[@カズマの嫁 かっこいいー]
『今のは相手が突っ込んできてくれたからラッキーだった。隠れてガブリ、がショットガンの使い方って感じかな』
その時、ライガン内に直接メッセージが入った。
【シロサイ: ソロ対決して】
[@0904444 あれ? もしかして]
[@千景 シロサイって大会で2位の子?]
[@う◯こ ムジン、シロサイとどんな関係]
配信中画面にもそれは映っていて、コメント欄がシロサイの名前に湧き立ち始めた。
大会の結果はゲーマーなら知ってるやつも多い。
俺の配信を乗っ取る気かこいつは。
流れに乗ってシロサイと対戦することになった。
前回うっかり負けてしまったことを思えば、今回は最初からガチ装備で万全を期すしかない。
『説明とかなしでサクッとやるから』
するとシロサイを知っている民もそれなりに居るらしく、俺の配信なのに何故か応援の声が二極に分かれた。
[@chef? かっこいいとこ見せてムジン]
[@パイオツ シロサイちゃんふぁいとー]
[@ハワイ島沖 ムジンに一票]
[@Moon&Sun シロサイに清き1票]
[@後は頼んだ あとは頼んだ!]
[@ぃぇぃ なんか急におもろw]
シロサイが俺の配信を見ているとすれば、下手に説明を入れて戦略がバレるのは避けたい。
集中して説明を省き、なかなか本気で勝負に挑んだその結果。
[@あいつの息子 おもろかった]
[@れん。 シロサイ惜しい]
[@今3時 容赦なさすぎーw]
[@レジ袋不要 久々興奮したわw]
[@無職 これが1位と2位の戦いか]
俺の勝利。勝ててよかったぜ……。
やっぱ時限爆弾の使い方が上手かったが、前回の反省を元に対策しておいて正解だった。
【シロサイ: 次は必ず落とす】
【ムジンフリーリィ: おつですー】
チーム戦より配信より、シロサイとの勝負に気力を使った気がするな。
でも勝てたから気持ちいいぜ。
その後はコメント欄との団欒を楽しみながら、リクエストに答えつつ配信を続けた。
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