【完結】女好きプロゲーマーが恋愛ごっこを卒業するまで

ソラ太郎

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 さすが圭人さんは話が分かる。
 ゲームの話ではないが、パソコン周辺機器の機械的な話ができた。

「そういえばこれこれ」
「あっチョコですね、アニキ!」
「アニキ……はは。本当にチョコレートが好きなんだね。達也くんは」
「麻央と結婚したら、マジで俺のアニキでしょ?」
「たっちゃん気が早いよ」

 麻央も圭人さんもまんざらでもない顔して、そういう話ももう進んでるとか?
 付き合って半年で結婚意識って普通なのか?

 チョコも大量にくれたし、男同士の付き合いがさほど得意ではない俺でも圭人さんには心を許してもいいと思えた。

 確定ではないけれど、また半年以内に海外に行く予定があるらしいが今度は麻央に触らないと誓おう。
 心の中に押し留めて、墓まで持っていくよ。


「夜更かししないのよ」
「おふたりもね」
「はは。おやすみ、達也くん」
「おやすみー」

 俺の部屋の真隣に位置している麻央の部屋に、仲睦まじく入って行く2人を生温かい目で見送った。

 両親が同居だったら絶対、泊まるとかしてないはずだ。弟は2人が何しようが何してようが邪魔はしないし、安泰の環境である。良かったな、うちがこういう感じで。


 ということで俺は自室で大人しくしている。

 内容までは分からないなりに、話し声の気配はちゃんとするし、ちょっと聞き耳を立ててみようかなんて思ってない。

 少し気になるだけだ。

 普段麻央だけの時はキシッとベッドの軋む音くらいは聞こえるけど、今日の軋み音はいつもより重みが感じられたのがリアルだ。

 これは、まさに
 麻央の部屋に、男が居る───!


 衝撃風に言ってみても、俺1人だと笑いも起きない。

「まあ配信でもしますかね」

 いつも通りのセッティングで配信開始。

『ムジンフリーリィ始めるよー』

[@ざぶとん1枚 おはよーー!!]
[@八咫烏 おいスッキリ顔してるな]
[@ポップコーン 来たー待ってましたー]

『なんで分かった? 昼間に抜いたけど』

[@Dart180 赤裸々かよ]
[@びっくりマン なんか声ちっちゃくね?]
[@賢者 まだ余韻に浸ってる?]

『今日はおねーちゃんの彼氏が来てるから、ちょっと気を遣ってるだけ。聞き取りにくい?』

[@俊孝 ムジンに姉が居る新事実!]
[@サバイバー 聞こえるよー]
[@ptvee おい姉の部屋の状況をぜひ実況しろ]

『姉は売らんぞ。今日なんかリクエストある?』

[@ただのアレ ムジン姉気になるたぶん美人]
[@ぴぃちゃん 防具の選び方知りたいです]
[@FunnyK 武器のチューニング]

『おー防具と武器きたー。ちょうどいいから両方合わせてやってみよっか』

 戦闘準備画面で説明をしていく。
 武器を自分なりにアレンジ出来るのも、ライガンの魅力の一つであり俺もなかなかこだわっている。

『まず防具は自分のやりたい役割ごとに選ぶのが基本で───』

 ひとつ説明するごとにコメント欄には質問が来て、その都度追加で解説を付け加える。

 コメントと解説が止めどなく往来していたが、瞬間的に俺の言葉が詰まった。

 調子良く紡いでいた筈の声が急に消え、俺の視線が自然と壁の方に向いたのを、視聴者は見逃さなかった。

[@バッサーは俺の嫁 何か聞こえたか]
[@桜田門 待てもしやその反応おい]
[@けむりん 隣の部屋か?]
[@^_^ まままままままさかかかかか]
[@激アツおでん フィーバーーーーー!]

 やべ、と思った時にはもうコメント欄が沸いてしまっていた。

 もちろんマイクは俺の声以外を拾えては居ない。
 だが俺の反応こそ、隣の部屋で起こっている情事を裏付ける証拠になってしまったわけだ。

 うっかり聞こえた麻央の声は、そこから聞こえなくなったけれど。

『まあ慌てるな童貞ども。防具、続けるよ』

[@テン よし確かめに行こう]
[@鬼面! 何でヘッドホンすんの?]
[@JK16☆ 確実に何か聞こえたんじゃんw]
[@ラブ マイク壁に近づけて頼む]
[@12時半 弟なりの気遣い?]

 俺がしれっとヘッドホンを付けると余計沸いた。
 だが付けずには居られなかった。

 多分麻央は、声を抑えて我慢すると思う。

 彼氏と一緒にベッドに入るのだからそういう行為になるのは予想していたのだが。
 相手の顔も声も知っているから、実際に麻央の声を聞くと2人の絡みを想像できてしまう。

 単純に気まずいのだ。

『はい、落ち着いて童貞たちー。俺はただキミたちの声をより近くで聞きたいだけだよー』

 コメント欄はただの文字列であり、読み上げ機能もない。
 興奮し始めた想像力豊かな欲求不満の愚民どもをスルーしてライガン講座を続けた。



 アニキ。麻央はらされるのが好きだから、あせらないでやってくれよ。

 アニキにもらったチョコを摘んで食べながら、そう願っておいた。



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