23 / 78
Lv.8-3
しおりを挟むさすが圭人さんは話が分かる。
ゲームの話ではないが、パソコン周辺機器の機械的な話ができた。
「そういえばこれこれ」
「あっチョコですね、アニキ!」
「アニキ……はは。本当にチョコレートが好きなんだね。達也くんは」
「麻央と結婚したら、マジで俺のアニキでしょ?」
「たっちゃん気が早いよ」
麻央も圭人さんもまんざらでもない顔して、そういう話ももう進んでるとか?
付き合って半年で結婚意識って普通なのか?
チョコも大量にくれたし、男同士の付き合いがさほど得意ではない俺でも圭人さんには心を許してもいいと思えた。
確定ではないけれど、また半年以内に海外に行く予定があるらしいが今度は麻央に触らないと誓おう。
心の中に押し留めて、墓まで持っていくよ。
「夜更かししないのよ」
「おふたりもね」
「はは。おやすみ、達也くん」
「おやすみー」
俺の部屋の真隣に位置している麻央の部屋に、仲睦まじく入って行く2人を生温かい目で見送った。
両親が同居だったら絶対、泊まるとかしてないはずだ。弟は2人が何しようが何してようが邪魔はしないし、安泰の環境である。良かったな、うちがこういう感じで。
ということで俺は自室で大人しくしている。
内容までは分からないなりに、話し声の気配はちゃんとするし、始まったらちょっと聞き耳を立ててみようかなんて思ってない。
少し気になるだけだ。
普段麻央だけの時はキシッとベッドの軋む音くらいは聞こえるけど、今日の軋み音はいつもより重みが感じられたのがリアルだ。
これは、まさに
麻央の部屋に、男が居る───!
衝撃風に言ってみても、俺1人だと笑いも起きない。
「まあ配信でもしますかね」
いつも通りのセッティングで配信開始。
『ムジンフリーリィ始めるよー』
[@ざぶとん1枚 おはよーー!!]
[@八咫烏 おいスッキリ顔してるな]
[@ポップコーン 来たー待ってましたー]
『なんで分かった? 昼間に抜いたけど』
[@Dart180 赤裸々かよ]
[@びっくりマン なんか声ちっちゃくね?]
[@賢者 まだ余韻に浸ってる?]
『今日はおねーちゃんの彼氏が来てるから、ちょっと気を遣ってるだけ。聞き取りにくい?』
[@俊孝 ムジンに姉が居る新事実!]
[@サバイバー 聞こえるよー]
[@ptvee おい姉の部屋の状況をぜひ実況しろ]
『姉は売らんぞ。今日なんかリクエストある?』
[@ただのアレ ムジン姉気になるたぶん美人]
[@ぴぃちゃん 防具の選び方知りたいです]
[@FunnyK 武器のチューニング]
『おー防具と武器きたー。ちょうどいいから両方合わせてやってみよっか』
戦闘準備画面で説明をしていく。
武器を自分なりにアレンジ出来るのも、ライガンの魅力の一つであり俺もなかなかこだわっている。
『まず防具は自分のやりたい役割ごとに選ぶのが基本で───』
ひとつ説明するごとにコメント欄には質問が来て、その都度追加で解説を付け加える。
コメントと解説が止めどなく往来していたが、瞬間的に俺の言葉が詰まった。
調子良く紡いでいた筈の声が急に消え、俺の視線が自然と壁の方に向いたのを、視聴者は見逃さなかった。
[@バッサーは俺の嫁 何か聞こえたか]
[@桜田門 待てもしやその反応おい]
[@けむりん 隣の部屋か?]
[@^_^ まままままままさかかかかか]
[@激アツおでん フィーバーーーーー!]
やべ、と思った時にはもうコメント欄が沸いてしまっていた。
もちろんマイクは俺の声以外を拾えては居ない。
だが俺の反応こそ、隣の部屋で起こっている情事を裏付ける証拠になってしまったわけだ。
うっかり聞こえた麻央のそれっぽい声は、そこから聞こえなくなったけれど。
『まあ慌てるな童貞ども。防具、続けるよ』
[@テン よし確かめに行こう]
[@鬼面! 何でヘッドホンすんの?]
[@JK16☆ 確実に何か聞こえたんじゃんw]
[@ラブ マイク壁に近づけて頼む]
[@12時半 弟なりの気遣い?]
俺がしれっとヘッドホンを付けると余計沸いた。
だが付けずには居られなかった。
多分麻央は、声を抑えて我慢すると思う。
彼氏と一緒にベッドに入るのだからそういう行為になるのは予想していたのだが。
相手の顔も声も知っているから、実際に麻央の声を聞くと2人の絡みを想像できてしまう。
単純に気まずいのだ。
『はい、落ち着いて童貞たちー。俺はただキミたちの声をより近くで聞きたいだけだよー』
コメント欄はただの文字列であり、読み上げ機能もない。
興奮し始めた想像力豊かな欲求不満の愚民どもをスルーしてライガン講座を続けた。
アニキ。麻央は焦らされるのが好きだから、焦らないでやってくれよ。
アニキにもらったチョコを摘んで食べながら、そう願っておいた。
0
あなたにおすすめの小説
~春の国~片足の不自由な王妃様
クラゲ散歩
恋愛
春の暖かい陽気の中。色鮮やかな花が咲き乱れ。蝶が二人を祝福してるように。
春の国の王太子ジーク=スノーフレーク=スプリング(22)と侯爵令嬢ローズマリー=ローバー(18)が、丘の上にある小さな教会で愛を誓い。女神の祝福を受け夫婦になった。
街中を馬車で移動中。二人はずっと笑顔だった。
それを見た者は、相思相愛だと思っただろう。
しかし〜ここまでくるまでに、王太子が裏で動いていたのを知っているのはごくわずか。
花嫁は〜その笑顔の下でなにを思っているのだろうか??
一夜の過ちで懐妊したら、幼なじみの冷酷皇帝に溺愛されました
由香
恋愛
没落貴族の娘・柳月鈴は、宮廷で医官見習いとして働いていた。
ある夜、皇帝即位の宴で酒に酔い、幼なじみだった皇帝・李景珩と再会する。
遠い存在になったはずの彼。
けれど、その夜をきっかけに月鈴の運命は大きく動き出す。
冷酷と恐れられる皇帝が、なぜか彼女だけには甘すぎて――。
俺を信じろ〜財閥俺様御曹司とのニューヨークでの熱い夜
ラヴ KAZU
恋愛
二年間付き合った恋人に振られた亜紀は傷心旅行でニューヨークへ旅立つ。
そこで東條ホールディングス社長東條理樹にはじめてを捧げてしまう。結婚を約束するも日本に戻ると連絡を貰えず、会社へ乗り込むも、
理樹は亜紀の父親の会社を倒産に追い込んだ東條財閥東條理三郎の息子だった。
しかも理樹には婚約者がいたのである。
全てを捧げた相手の真実を知り翻弄される亜紀。
二人は結婚出来るのであろうか。
ブラック企業で倒れた私を、ネトゲ仲間の社長が強制保護して溺愛しています
紅 与一
恋愛
過労で倒れた私を救ったのは、
ネトゲ仲間――そしてIT企業の若き社長。
「もう君は、僕の管理下だよ」
退院と同時に退職手続きは完了。
住む場所も、生活も、すべて彼に囲われた。
外出制限、健康管理、過保護な独占欲。
甘くて危険な“保護生活”の中で、
私は少しずつ彼に心を奪われていく――。
元社畜OL×執着気味の溺愛社長
囲い込み同棲ラブストーリー。
うちの幼馴染がデレすぎてて俺の理性はもう限界。でも毎日が最高に甘いからもうどうでもいいや
静内燕
恋愛
相沢悠太の日常は、規格外の美少女である幼馴染、白石葵によって完全に支配されている。
朝のモーニングコール(ベッドへのダイブ付き)から始まり、登校中の腕組み、そして「あーん」が義務付けられた手作り弁当。誰もが羨むラブラブっぷりだが、悠太はこれを「家族愛」だと頑なに誤解(無視)している。
「ゆーたは私の運命の相手なんだもん!」と、葵のデレデレは今日も過剰の一途。周囲の冷やかしや、葵を狙う男子生徒のプレッシャーが高まる中、悠太の**「幼馴染フィルター」**はついに限界を迎える。
この溺愛っぷり、いつまで「家族」で通せるのか?
甘すぎる日常が、悠太の鈍感な理性を溶かし尽くす――最初からクライマックスの、超高濃度イチャイチャ・ラブコメ、開幕!
政略結婚かと思ったら溺愛婚でした。
如月 そら
恋愛
父のお葬式の日、雪の降る中、園村浅緋と母の元へ片倉慎也が訪ねてきた。
父からの遺言書を持って。
そこに書かれてあったのは、
『会社は片倉に託すこと』
そして、『浅緋も片倉に託す』ということだった。
政略結婚、そう思っていたけれど……。
浅緋は片倉の優しさに惹かれていく。
けれど、片倉は……?
宝島社様の『この文庫がすごい!』大賞にて優秀作品に選出して頂きました(⁎ᴗ͈ˬᴗ͈⁎)
※表紙イラストはGiovanni様に許可を頂き、使用させて頂いているものです。
素敵なイラストをありがとうございます。
ワケあり上司とヒミツの共有
咲良緋芽
恋愛
部署も違う、顔見知りでもない。
でも、社内で有名な津田部長。
ハンサム&クールな出で立ちが、
女子社員のハートを鷲掴みにしている。
接点なんて、何もない。
社内の廊下で、2、3度すれ違った位。
だから、
私が津田部長のヒミツを知ったのは、
偶然。
社内の誰も気が付いていないヒミツを
私は知ってしまった。
「どどど、どうしよう……!!」
私、美園江奈は、このヒミツを守れるの…?
届かぬ温もり
HARUKA
恋愛
夫には忘れられない人がいた。それを知りながら、私は彼のそばにいたかった。愛することで自分を捨て、夫の隣にいることを選んだ私。だけど、その恋に答えはなかった。すべてを失いかけた私が選んだのは、彼から離れ、自分自身の人生を取り戻す道だった·····
◆◇◆◇◆◇◆
読んでくださり感謝いたします。
すべてフィクションです。不快に思われた方は読むのを止めて下さい。
ゆっくり更新していきます。
誤字脱字も見つけ次第直していきます。
よろしくお願いします。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる