【完結】女好きプロゲーマーが恋愛ごっこを卒業するまで

ソラ太郎

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 事務所の人からシロサイに着信があった。

「私はもう病院から出たので大丈夫です」

 容疑者が事務所-SHIKABANE-しかばねの名前を出したらしく、関係者への事情聴取と事情説明をしたいと警察から連絡が入ったらしい。

 それで今、事務所の人が警察署に呼ばれている。

「代わって」

 シロサイの携帯を取り上げて、俺が向かうべき場所を聞き出した。

「和葉、シロサイを頼む。俺ちょっと行ってくる」
「え、あんたどこ行くのよ」
「シロサイお大事にしろよ」
「高山くん?」

 和葉が一緒にいて良かった。
 シロサイを任せられるからな。

 俺の名前を叫んでいたってことは、俺に無関係なんてことはない。
 俺のファンがシロサイを突き落とした犯人ならば、俺に非がないなんてどうして言える?



 俺が向かった先は、もちろん警察署である。
 事務所の人も呼ばれていて、相手が俺の名前を出して居るのなら行かない訳にはいかない。

「キミがムジンフリーリィくん?」
「そうです」

 高山達也ですと名乗るより、ムジンフリーリィですと名乗る方が話は早かった。

 それだけ犯人がムジンの名前を連呼しているらしく、ゲーム界を飛び出して警察界隈にまで名を轟かす日が来るとは。

 何と不名誉なことか。

 名乗りが効いて通された先には事務所の人が居て、俺の顔を見て驚いた。

「ムジンくん来なくても大丈夫だったのに。関わってる人を説明してただけで、ムジンくんもシロサイちゃんも2人とも写真はホームページに載ってるから」

 まあそうだろう。事務所の一応責任ある立場の大人な社会人が呼ばれたのだから、俺は必要ないだろうなとは思ってた。

「犯人って?」
「ムジンくんのファンらしいよ。今、あっちの部屋に連れてかれてるけど」
「誰? 俺が知ってる奴?」

 事務所の人は首を横に振ったが、警官は思い出したかのように俺に聞いた。

「そうだ、顔を見たことあるか知りたいから確認してもらってもいいかな? 向こうからこっちは見えないから安心して」

 マジックガラスになっている壁から中を覗くと、うつろな顔をした女が居た。

「知ってる顔かな?」
「……全く見たことないですね」
「そうか。やっぱり一方的なのかな」

 面通しをしただけでも、俺がここに来た価値はあったようだ。大会を始めとしたゲームイベントの現場ですら見たことない女で、俺とは全く接点のない奴が犯人。

 一方的というのはもちろん、その女が一方的に俺を知っていて、一方的に想いを寄せているということ。

 警官が言うには、一般人の配信動画が簡単にできる昨今では、こういった関係性での事故や事件が大なり小なり増えて居るらしい。
 まず間違いなくそれだ。

 供述する声が聞こえる。

「あの女、あの女は整形してるくせにムジンくんに取り入って許せなかった。ムジンくんには合わないもの。あの女が騙されてるとか言ってた奴もいたけど、騙されてるのはムジンくんの方よ。可哀想だから気づかせてあげたかったのよ」

 想像通りというべきか。
 俺を推してくれる人が居ることは嬉しいし、ありがたい。でも会ったことのない相手にガチ恋をする人の気持ちなどは全く分からない。

「ただ推しているお気に入りのYouTuberやライバーがいつしか特別な存在になって、想いが膨らんだ挙句に行き過ぎた行為に走る。最近はよくあることなんだよ」

 警官の言葉は文字通りに受け取れば分かるが、目の前にいる見たことのない女の気持ちはまるで理解できない。

「俺のためって、本人は思ってるんですね」

 その正義は俺にとっては悪であって、でもこの女にとってはまた別の正義だった。どこにこの怒りをぶつけていいのか迷子になりそうだ。



 事務所の人が警官と慰謝料請求とかの難しい話を進めていたが、その辺はシロサイとも話して決めるらしい。
 俺は何をすればいいんだろう。


「そういえば助けてくれた人も、シロサイちゃんとかムジンくんのこと知ってる人だって。彼も今、あっちの部屋に居るんだけど。
 うちの事務所もなかなか有名になってきたのかな? あ、ほらあの人だよ」

 事務所の人が教えてくれた方の部屋から、警官と一緒に1人の若い男が出て来た。その男は警官にお辞儀をしてこちらに歩いてくる。

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