【完結】女好きプロゲーマーが恋愛ごっこを卒業するまで

ソラ太郎

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 事務所の人が立ち上がってお礼を言いに行った。

「ありがとうございました。シロサイは無事処置を終えて、帰宅したみたいです」
「そうですか……よかった」

 安堵した表情で心配してくれていて、優しそうな男だと思った。
 だがその男は俺に気付くと表情を一変させ、早々に威嚇してきた。

「ムジン……」
「どうも。この度は……」
「お前がシロサイを傷つけたんだからな」
「え」
「お前の行いで、あの女が暴走してシロサイが傷つけられたんだからな」

 男の言葉尻に攻撃性を感じた。
 もしかしてこの男。

「……あんた、もしかしてクロサイ?」
「だったら何だよ」
「え、クロサイさん?」

 事務所の人も気づいたらしい。

 シロサイを喰っただのホテルに連れ込んだだのとコメント欄を荒らしまくった、クロサイである。

 クロサイは俺めがけて罵倒する。

「女好きのくそゲーマーが。女とあらば見境なく手を出すから、お前の周りに居る人間が痛い目見るんだ」
「すみませんクロサイさん、この度はシロサイを助けてくれてありがとうございました!」
「真実を伝えるために何度もコメントしてるのに、どうせお前はまた色目使ってシロサイを繋ぎ止めてるんだろ」
「クロサイさん、落ち着いてください」

 事務所の人が、今にも飛びかかろうとする勢いのクロサイを抑えようとしてくれている。

「なぁムジン、シロサイから手を引けよ」
「クロサイさん! ムジンとシロサイは何の関係もありません!」
「お前はよくもぬけぬけとここに来れたもんだ。自分がモテるせいで犯罪者を生んでしまいましたってか? おい!」
「待って、落ち着いて」

 止める事務所マンに目もくれず、今にも俺の方へと突進してきそうな迫力である。
 ここは警察署内。周りの警官も注目を始めた。

「俺は整形してようが昔太ってようが、シロサイのことを推す覚悟があるんだ。優柔不断なお前には任せてらんねえ」
「く、クロサイさん~!」

 こいつはマジックガラスの向こうに居たあの女と変わらないかもしれない。

 自分の考えで突き進んで、事実がどうであれ思い込んだらいずれ汚かろうが危なかろうが自分で手を下すタイプの感情大暴れ野郎。

 さっき弾けた〝何か〟が今度は、色を持って熱に変わって行く感覚。

「ムジンなんかに騙されてるシロサイが可哀想だ!
 さっさと手を引いてシロサイを自由にしてやれ」

 俺は距離を一気に縮めて、事務所の人を推し退けるとクロサイのその胸ぐらを掴んだ。

「ムジンくんっ……!」

 クロサイと顔を近づけ睨みつけた。

 相手はいきなりのことに怯んだのか、口を閉ざしたがその目は俺を捉えている。
 いい度胸だ。

 その瞬間にも周りの警官が俺たちを止めようと走り寄ってくる。

 俺は小さく言葉を発した。

「お前なんかにシロサイはやんねぇ」

 走り寄る警官が到達する前に、掴んでいた手をグイっと離した。周りの緊張感が一気に解けると同時に、クロサイはその場にへたり込んだ。
 実は肝の小さい奴なのだろう。

「ムジ……高山さん、事情によっては今のも暴行の一部に入りますよ。大丈夫ですか?」

 警官がクロサイを支え立ち上がらせる。
 クロサイは「だ、大丈夫です」と答え、俺は見逃されたらしい。


 警察署から出ると、事務所の人に叱られたけれど俺に反省の色はなかった。

 威嚇されたから威嚇し返しただけ。
 シロサイがどうとかよりも今、こいつを野放しにしたら俺もシロサイも危険かもしれない。

 でもまた考えなしに動いてしまった。今度は俺にクロサイが襲撃してきたらどうしよう。

 無性にシロサイに会いたくなった。
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