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富子
第7話 その意味するところ
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「……惨めすぎて、お父さんにもお母さんにも言えなかった」
そして最後にこう締めくくると、優良の目元から涙がつうっと落ちていく。
まさかの告白と娘の涙に、顔を真っ赤にして憤る夫に、富子は「落ち着いて」
と宥めながらも、自分も負けず劣らず怒りを感じていた。
いつも調子よく愛想が良い前夫だったが、そんな一面があったとは……。
富子はその事実に驚くとともに、浮気で離婚したことだけでも腹立たしいの
に、その上更に娘を傷つけるような言葉まで置き土産にしていくなんて――と
怒りが再燃した。
「…………」
富子も夫も押し黙ることで自らの内に激しく燃え盛る怒りの炎を懸命に鎮火
させようとしていた。
一番傷ついている張本人ではあるものの、二人の気持ちを察して居たたまれ
なくなった優良は、この場の空気を変えようと口を開いた。
「あ、でも、もう大丈夫だから! あの女と男の子が夢に出てくるようになって、
私もお母さんと同じように『紗矢に辛く当たっているから出てくるんだ』って
思った。……心当たりはそれくらいしかないから。それで思い切って相談して
みたの」
もし女と男の子が紗矢を案じて夢に出てくるのであれば、優良の態度を治す
しか道はない。優良自身も罪悪感や止めなければならないと自覚もしていた。
だから優良は夫に正直に話すことにした。前夫に言われたこと、甘ったれて
いると指摘された性格を直そうと仕事も始めたこと、家事も育児も仕事も完璧
にこなそうとは思っているものの結局出来なくて紗矢に当たってしまうこと
――最悪、離婚されることも覚悟で話して、その上で助けて欲しいと打ち明けた。
すると夫は妻の話に最初は驚いていたが、すぐに「せっかく優良が自分の
気持ちを打ち明けてくれたのだから、自分も話そう」といつもの寡黙ぶりが嘘の
ように、自分の本心を打ち明けてくれた。
そして初婚の自分は子育てや家事などについてはよく分からず手も口も出せずに
いたこと、紗矢を大切に思うもののどう接したら正解なのか分からなかったこと、
言ってくれればなんでも協力したいと思っていたこと――自分も早く言うべきだった
と、外和山は謝ってくれた。
そしてその日を機に、家族は変わったのだという。
「ふん、前の奴よりはまともな男のようだな」
優良の話を聞き終えると、夫はそう言って鼻を鳴らした。
しかしそれでもなお、その女は優良の夢に出続ける。
こうなると女と男の子が何を優良に訴えたいのか、もうまるで分からない
――吐き出すようにそう言うと、優良は深い溜息をついた。
そして最後にこう締めくくると、優良の目元から涙がつうっと落ちていく。
まさかの告白と娘の涙に、顔を真っ赤にして憤る夫に、富子は「落ち着いて」
と宥めながらも、自分も負けず劣らず怒りを感じていた。
いつも調子よく愛想が良い前夫だったが、そんな一面があったとは……。
富子はその事実に驚くとともに、浮気で離婚したことだけでも腹立たしいの
に、その上更に娘を傷つけるような言葉まで置き土産にしていくなんて――と
怒りが再燃した。
「…………」
富子も夫も押し黙ることで自らの内に激しく燃え盛る怒りの炎を懸命に鎮火
させようとしていた。
一番傷ついている張本人ではあるものの、二人の気持ちを察して居たたまれ
なくなった優良は、この場の空気を変えようと口を開いた。
「あ、でも、もう大丈夫だから! あの女と男の子が夢に出てくるようになって、
私もお母さんと同じように『紗矢に辛く当たっているから出てくるんだ』って
思った。……心当たりはそれくらいしかないから。それで思い切って相談して
みたの」
もし女と男の子が紗矢を案じて夢に出てくるのであれば、優良の態度を治す
しか道はない。優良自身も罪悪感や止めなければならないと自覚もしていた。
だから優良は夫に正直に話すことにした。前夫に言われたこと、甘ったれて
いると指摘された性格を直そうと仕事も始めたこと、家事も育児も仕事も完璧
にこなそうとは思っているものの結局出来なくて紗矢に当たってしまうこと
――最悪、離婚されることも覚悟で話して、その上で助けて欲しいと打ち明けた。
すると夫は妻の話に最初は驚いていたが、すぐに「せっかく優良が自分の
気持ちを打ち明けてくれたのだから、自分も話そう」といつもの寡黙ぶりが嘘の
ように、自分の本心を打ち明けてくれた。
そして初婚の自分は子育てや家事などについてはよく分からず手も口も出せずに
いたこと、紗矢を大切に思うもののどう接したら正解なのか分からなかったこと、
言ってくれればなんでも協力したいと思っていたこと――自分も早く言うべきだった
と、外和山は謝ってくれた。
そしてその日を機に、家族は変わったのだという。
「ふん、前の奴よりはまともな男のようだな」
優良の話を聞き終えると、夫はそう言って鼻を鳴らした。
しかしそれでもなお、その女は優良の夢に出続ける。
こうなると女と男の子が何を優良に訴えたいのか、もうまるで分からない
――吐き出すようにそう言うと、優良は深い溜息をついた。
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