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第二章 聖杯にまつわるお話

第172話 にゃーにゃーにゃー

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 いた、いましたよ身近にどんな言語でも理解してしまう謎の生命体が。

『えっちゃん凄いね』
「今貴方の脳に直接話しかけています?」
「違うと思いますぞ」

 僕だけなら人間が突然現れたと騒ぎになっただろう、けれど僕は一人ではなく、ケモ耳を持つ幼児と卵の殻を付けたドラゴン幼児、おっかない顔の邪神が一緒だったため、相手が混乱をきたして騒ぎにはならずに済んだ。
 独自の言語で話す蛮族の人と意思疎通するえっちゃん、凄いけど……僕らも正確にえっちゃんの言っている事を理解できている訳でもなく、この後どうしようか。

 不審な集団過ぎてえっちゃんと意思の疎通出来ても警戒心が解けない。
 ここはひとつ、シャムスの予言に頼ってみよう。

「シャムスどうしたらいいかな?」
「いにぇしゅ」
「イネスなら今日の予定は日光浴って言ってたからすぐ来ると思う!」

 そういう訳でイネスに来てもらった。

「……思った以上にチョロイ」
「みゃ~あん」
「……っ!!」

 えっちゃんにお願いしてイネスを呼び出してもらい、闇からぴょ~んとイネスが飛び出した瞬間、僕らの前にいた蛮族の人がイネスに釘付けになった。
 甘い声で鳴くイネスを目線で追い、足元に絡みつくイネスに体を岩のように固まらせ、そして今はお腹を見せて招き猫するイネスを前に地面と仲良し。

 イネス凄い、力の一つも使わず、自身の魅力だけで蛮族の人を落とした。

 ふるふると震える手でイネスに手を伸ばし、そっと柔らかなお腹に触れるのを眺める僕ら。
 肩に熊を乗せたおっさんが小さなにゃんこを撫でてる図、か。実際は子豹だけど。

「シャムスの予言はすごいなぁ」
『えへへ』
「予言?」

 見守る中、イネスに指を甘噛みされている蛮族の人の顔が大変なことに、子供が生まれた時の刀雲と同じぐらいデレデレです。

「うん、今のうちに対策を練るか帰ろう」
「この者が属する部族を守護する何らかの獣がいれば一番簡単なのですが」
「いちころ」
「噂をすれば影、仲間が現れた!!」

 僕にはどこにいるか分からないけれど、涼玉が言うにはここから一キロぐらい離れた岩陰からこちらを窺っているらしいです。
 僕の視界にはゴツゴツの岩しか映らない、あと枯れた草木とか。

「お言葉上手にな~れ、はい」

 警戒はマールスに丸投げした所で陽気な声が聞こえてきて、イネスを見たら小さな肉球を蛮族の人のおでこにぺちっとあてていた。

「これで僕らと言葉通じます」
『その手があったの』
「あったな!」
「ありましたなぁ」

 通じないなら通じるようにすればいい、ここでまさかのスキル授与。
 その手があったかー。

「こんにちは! 私の言葉分かりますか?」
「ウルガ、わかる、言葉、わかる」
『イネス優勝なの』
「今日のMVPはイネスだな」

 その後、ウルガの仲介で平和的に部族の皆さんと顔合わせすることが出来ました。
 全部族の視線、ウルガの頭に座るイネスに釘付けだけど。
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