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第二章 聖杯にまつわるお話

第271話

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 帝国皇子の半分以上は僕の子なので、彼らも夢の世界に自由に来れる。
 そこで情報共有したり、現実世界では出来ない周囲を巻き込むような特訓を重ねて力の使い方を覚えさせているんだよね。

 でもなぜかあの子たちは加護とか力の共有が薄いっていうのかな?
 帝国と刀国が物理的に離れているから?
 いやでも距離って関係あったっけ?

 前にアー君に聞いたらやっぱりアー君もよく分からないって言ってたなぁ。
 なぜこんな事に頭を悩ませているかと言うと、帝国兄弟、霧の力使えませんでした。

「俺も使いたい!」
「カッコイイ感じに使いこなしたい!」

 新たな兄弟、新たな力、ただし使用不可。
 知った途端にぎゃーぎゃー騒ぎながら集団駄々こねしてます。

 あまりに煩いのでおやつを持って遊びに来るよう女神様から要請があり、大量のドーナツを持って女神様の離宮に遊びにやってまいりました。
 同行者はシャムス、涼玉、イネス、ネヴォラ、おやつを作っているのを見られて、これは帝国に持って行く分と受け渡しを拒否したら付いてきました。

「女神様、帝国兄弟が霧を使えないのはなぜだと思います?」
「夢の世界ってとこでは使えてたか?」
「遊び倒すのに忙しくてまだやってないと思います」

 現実でやったら城の一つや二つ瓦礫にするような魔法どっかんどっかん使うのに忙しく、霧のような発動が緩やかで試行錯誤するような魔力の使い方は後回しにしているっぽい。
 同じような理由でイネスも霧の発動は苦戦してたね、ふわりと広げるより光線飛ばした方が速いってみゃーみゃー鳴いていた。

「相性があるんじゃねぇかな?」
「相性ですか?」
「うちは炎ちゃんが近くにいるだろ、だから炎の影響が強いんじゃ……」
「我が家は騎士様にイネス、涼玉と炎使いが三人以上います」

 その相反する属性を夢の世界で混ぜ混ぜしても、本体の力が弱まったり加護が薄くなったりなどはないです。
 最近じゃドリちゃんまで入り込み、僕の魔力と常時接続状態を利用してメニュー画面を使いこなしてます、元々ドリちゃんのスキルだったんじゃないかって錯覚するぐらい。

「ダメだ、そっちは私の分野外!」

 しばらく考えても答えが出なかったみたい、両手を挙げて降参すると、女神様は目の前に用意されたクッキーをバリバリ食べ始めた。
 煎餅じゃないんですから、かみ砕くように食べないでゆっくり食べましょう?

「わははは、かあちゃん見て!」
「俺らドラゴンブレス使えるようになったぜー!」
「……あいつらが霧が使えない理由が分かった。バカだからじゃねぇ?」

 口から炎を吐き出しながらケラケラ笑う皇子達の姿に女神様が遠い目をしている。
 でも確かに、霧を使うのって凄く頭を使うっていうのかな、手を霧にするだけでもイメージ力が必要になってくるし、使っている間に精神力ガリガリ削られるんだよね、集中力が切れるとすぐ戻っちゃうし。

『きゃーー!』
「イネスずるいです! 私も!」

 シャムスの楽しそうな悲鳴に視線を向けたら、濃い霧に乗って空を浮遊していた。
 イネスやネヴォラがそれを追いかけ、飛び掛かっては霧をすり抜けて地面に落ちている。

「あのように追いかけっこにも有用みたいです」
「皇子達が使えなくて良かったわ、あれで勉強から逃げられたら私が相談役から説教されるんだよ」

 あぁ刀国から嫁いできたあのお兄さんか、女神様に説教できるとか素晴らしいポジション、ヘラ母さんの加護でも受けているんだろうか?
 ある意味、帝国最強の権力者なんじゃ……?
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