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湯水のごとくお金を使おう

第774話

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 観光がてらセティの神殿を見学することになりました。
 決して苦情から逃げるためじゃないよ。

 神殿正面から左はギルド、右は救貧院、セティや金ちゃんらの居住区は神殿の奥。
 土地は余ってるのに重要機関が密集しているのはなぜだろう。

 黄金の六柱の間を通り抜けたらそこは緑溢れる中庭だった。
 現在、景色を楽しみながら散策中。
 何やらベリー系の実が多いね、魔物がもぐもぐしながらゆったりと徘徊しているのですが。

「あれ、シャムスに忠誠誓った魔物。散歩しているように見えて神殿の警備も兼ねてる」
「中庭は景色も綺麗で落ち着きますが、昼飯食べようと思って弁当広げると、アイツらに囲まれるのが欠点っす」

 刀国の人間にとっては日常風景だとしても、魔物が徘徊しているのは地元の人には恐怖だと思うけど、邪神の徘徊に遭遇するよりは平和だよね?

「野生の魔物と友好的な魔物の差を付けるためにも、神子様には少しの間ここに滞在してほしいですね」

 あれ?
 僕の謎能力って冒険者の人にも知れ渡ってるの?

「正面に見える建物は拝殿っていうのか? まぁ人間がセティ達に祈り捧げる場所だな」

 懺悔を聞いてくれる司祭も刀国から派遣予定で、その人は別の冒険者の恋人らしい。
 セティが手を出さないといいけど……大丈夫かなぁ。

 いつでも祈れるよう、拝殿は常時開放中。
 状態異常回復なども行えるそうです。

 入ってすぐ聖水の湧き出る手洗い場。
 祭壇に続くレッドカーペット。
 左右に均等に並べられた長椅子。

 どう見ても内装が教会ですね。
 僕の家族か、地球からの転生者以外にはバレないからまぁいいか。

 ちなみにこちらの聖水を邪神や魔物にかけても水浴びになるだけです、あといきなり水をぶっかけると普通に怒りを買うので気を付けてほしい。
 どうしても魔物が怖い人は別の都市に引っ越しした方がいいかもね。

 神殿内で一般市民が出入り出来るのは中庭と拝殿のみ。
 ちょっとしたお散歩に最適だけど、そのちょっとした時間を楽しめる市民はどのくらいいるかなぁ? いつか誰もがのんびり散歩できる時が来るといいね。
 ちなみに刀国では日常風景です。

 オアシスがある庭は別にあり、そちらは司祭や許可を得られた人だけが出入り可能らしい。
 不法侵入も出来るけど命の保証はなし、金ちゃんと銀ちゃんの愛の巣があるからその辺は仕方がないよね。

 拝殿をぐるっと見学して再び中庭に出て、庭を奥へと進む。

「この先が凄いんすよね~」

 冒険者さん、言葉遣い、言葉遣い!
 興奮するとすぐ元の口調に戻っちゃうみたいだけど、うちの子にその喋り方が移るのはちょっと困る。

「金様と銀様がデートしている姿を見ると恋愛運がアップするって噂があって~」

 良く観察すると道を示すように柔らかな色の花が奥へと続いていて、辿っていくとここが砂漠なのを忘れるぐらい広大なオアシスと、アラビアの高級ホテルのような外観の屋敷があった。
 騎士様、見かけないと思ったらここ作ってたのか……あのヤシの実って煮ても焼いても食べれる謎のあいつだよね。

 そして、オアシスでは金ちゃんと銀ちゃんが船デート中でした。

「あの二人の船デートはほぼ日常の一環な気がする」
「お二方が揃っているってことは物騒なことが起こってない証拠っす」
「水上コテージから白澤が出てきたんだけど」

 腕にはもちろんフィリーネ。
 刀雲に言ってきたのだろうか、抜刀危機がすぐそこに。

「土地によって味が変わるのか試したくて、聖なる果実各種を植えたら引っ越してきた」
『とーうんめそめそ』
「とうちゃ泣いてるよな、帰ったらぎゅっとしてやろう」

 それは涼玉がぎゅっとして欲しいってことでいいのかな?

「あっ、シャムス様いらっしゃいませ! さぁさぁ冷たい飲み物を用意いたしましょう」

 屋敷に近付いたらめっちゃ腰の低い使用人に出迎えられた。

「ママなの」
「シャムス様の母君であられますか。初めまして、吾輩、シャムス様に命をお救いいただきました大公爵ヴァイヤーと申します。もちろんアルジュナ様と涼玉様にも忠誠を誓っておりますが、魔物を率いるこの身としてはシャムス様にゴマをするのが最良と判断いたしまして、こうしてお仕えさせていただいている次第です」

 悪魔だった。
 それも階級かなり高いよね。
 あと話長い。

「俺達の夢のセバスチャンが手に入った」
『ねー』
「セティは身の回りのこと疎そうだし、ちょうどいい人材だぜ」

 シャムスに仕えると主張しているのを丸っとスルーし、セティの世話をさせるつもりのようだ。
 白澤がフィリーネ連れてここに来ちゃったし、有能で裏切らない執事の存在はありがたい。

「白澤の世話もついでにお願いねセバスチャン」
「いえ、私の名前はヴァイヤー……」
「セバスチャン、冷茶飲みたい」
『お庭でティータイムなの』
「セバスチャン、俺はおやつ!」

 どんなに位が高かろうとも、うちの子ほどじゃないからねぇ。
 あっ、僕はアップルティーお願いします。
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