クラス転移したら追い出されたので神の声でモンスターと仲良くします

ねこねこ大好き

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万年樹の森のモンスターと仲よくしよう!

イーストの帰還

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 イーストとコメットは馬車も使わず夜通し走り続ける。
「くそ! くそ!」
 汗だくになっても止まらない。怨嗟の声が出始めても止まらない。
「イースト様! もう少しです!」
 コメットは玉のような汗を滝のように流しながら叫ぶ。

「どいつもこいつも俺を舐めやがって!」



 イーストはコメットとともに領地に入ると、真っ先に城へ行く。
「あれま、戻ってきちゃった」
 仮面の男はイーストの自室でのんびりと昼寝をしていた。

「出て行ってもらうぞ!」
「はいはい」
 仮面の男は素っ気なく返事をすると、大人しく立ち上がる。

「クラウン様!」
 そんなイーストが修羅のような顔をしている時に、エリカが現れる。

「イースト!」
 エリカは端正な顔を歪ませる。

「誰に断って牢を出た!」
 イーストは地響きが鳴るような声でエリカを睨む。
 エリカはヒッと後ずさる。

「僕が出て良いって言ったの。忘れちゃった?」
 仮面の男、クラウンは小馬鹿にするようにイーストの前で肩を竦める。

「この野郎!」
 イーストが拳を放った瞬間、イーストは宙を舞い、床に背中を打ち付ける!

「ガッ!」
「あの時よりもさらに強くなったね」
 クラウンはイーストの顔を踏みつける。

「でもね、僕には勝てないな」
「イースト様!」
 コメットが発狂して拳を振り上げる。そしてクラウンの目前で膝を付く。

「な、なにが?」
 コメットは目を白黒させながら胃液を吐き出す。

「いいセンスだよ、二人とも」
 クラウンはコメットの髪を掴み上げながら、イーストを踏みにじる。

「勇者隊切り込み隊長の僕が言うんだから、喜んでいいよ」
 ギリギリと室内に嫌な音が響く。

「だけど、調子に乗らないほうが良い。君たちが下で、僕が上。どれだけ強くなっても、その事実は絶対に変えられない」
 クラウンは仮面の下で腹の底から笑う。

「おのれ……おのれ!」
 イーストはクラウンの靴の下で歯ぎしりする。

「さてと! 馬鹿にするのも飽きたし、そろそろ王都へ戻ろうか。君と一緒に」
 クラウンはイーストとコメットを離すと、エリカの手を取る。

「王都ですか!」
「そう! こんな何もないところに用は無いからね」

「分かりました! すぐに支度します!」
「慌てなくても良いよ。クラスメイトも一緒に行くんだから、皆の支度ができるまで待とう」

「……私だけでは無いのですか?」
 エリカはしおらしく俯く。

「皆一緒。さあ、行こう」
 クラウンはエリカの横に立つと、背中に手を当てて歩く。エリカはクラウンに押されて一緒に進む。

「じゃあね。王様気分楽しかったよ。住民は居なくなっちゃったけど、君なら何とかできるでしょ。たとえ僕たちが攻めてきてもね」
 クラウンはクツクツと笑いながら部屋を出た。

 残されたコメットはイーストの手を握る。

「大丈夫ですか?」
「舐めやがって!」
 イーストは床に倒れながら、床に鉄槌を下す。床にヒビが入る。

「攻めるだと! 上等だ! 俺には超人薬がある! コメット! すぐに万年都へ行くぞ!」
「分かりました! 残りの隠密にも声をかけます!」
 コメットはイーストを抱き起すと走る!

「どいつもこいつも舐めやがって!」
 イーストは壁を何度も殴る。拳から血が出ても殴る。
 壁に亀裂が入っても殴る。

「ゼロ! 俺から奪った物を返してもらうぞ!」
 イーストは行き場のない怒りを蓄える。

 そして隠密たちが集まると、何も言わずに走り出し、万年都を目指す。

姿隠しの術インビジブル!」
 森に入るとイーストたちは一斉に姿を消す。

「ん?」
 臭いと殺気に敏感なオオカミたちでも、イーストたちの姿を認識できない。違和感に耳を動かすだけで終わる。

「狙いはゼロだ! 発見次第俺に知らせろ!」
「承知しました!」
 イーストたちはグングンと猛烈な勢いで万年都へ迫る。

「この気配は?」
 たまにはのんびりとゼロと離れて、オオカミの子供たちと、日なたぼっこをしていたきな子が異変に気付く。

「何か森の中に入った?」
 きな子は何度も風の臭いを嗅ぐ。

「確か……人間が使う隠密術に痕跡の一切を消す術があったような……相当な手練れだ。なぜここに?」
 きな子は高らかに吠えて、万年都のモンスターに警戒勧告を発令した。



 イーストが万年都へ迫るころ、ゼロはハチ子の巣に居た。
「ぶんぶん!」
 スラ子はアリ子を背中に乗せてハイハイする。その後ろをクモ子とハチ子の子供たちが続く。
 アヒルの親子の様だ。

「スラ子、お姉ちゃん!」
 スラ子はゼロの前に来ると、顔を上げてピースする。

「スラ子は偉い!」
 ゼロは屈んでスラ子の頭を撫でる。

「……詰まらん」
 ゼロの隣で赤子は鼻を鳴らす。赤子の傍には蜂人も近づかない。警戒するように周りを飛び回るだけだ。

「そうやって不機嫌だから怖がるんですよ」
「ふん! 私にはゼロが居る!」
 赤子は腕組みしたままそっぽを向く。

「もう! 赤子さんだってお姉さんなんですよ」
「私はゼロの伴侶だ! それ以外の奴など知らん!」

「困ったな」
 苦笑しながら鼻の頭を掻く。

「いけない! そろそろ会議だ! 行ってきます!」
 ゼロは思い出すと慌てて走る。

「私も行くぞ」
「スラ子も」
 赤子とスラ子はゼロを引き止める。
 ゼロは手をかざして二人を止める。

「皆の面倒を見る! 約束ですから、守ってください!」
「しかし、何かあると心配だ」
「スラ子も……」
 二人はゼロの服を掴んで引き留める。
 ゼロは満面の笑みで答える。

「大丈夫です! ここには悪い人なんて来ません! それよりも、皆と仲良くしてください」
 ゼロに言われると、スラ子はアリ子やクモ子、ハチ子の子供たちを見る。

「分かった!」
 にっこりと笑うと、またハイハイして皆と遊ぶ。

「何かあったら飛んでいくからな」
 赤子はぶっきらぼうに屈んで、蜂人の子供を抱っこする。
 子供は大きく泣き叫ぶ。

「はは、頑張ってください!」
 ゼロは二人を見届けると巣から飛び出した。



 会議は終始明るく進んだ。
 まず、ハチ子の協力で虫人の脅威が消えた。産卵の時期になると住処を求めて万年都に進行する危険があるが、万年樹の森の近くに万年樹を植えて住処を提供すれば対処可能と結論が出る。

 次に食料問題だが、これもハチ子の協力で解決した。蜂人が万年樹の森へ狩りへ出かけるようになったため、食事の用意の負担が減った。
 畑の作り直しも終わったので、飢えることは無いだろう。

「問題は人手不足だ。これ以上の拡張は無理だ」
「作業効率も悪いからな……商人ギルドと協力すれば、農具とか脱穀機とか手に入るのに」
 とはいえ問題はまだまだある。そしてこれはどうしてもイーストの力を借りなければならないことであった。

「イーストさん、いい加減帰ってこないかな? 相談したいことは山ほどあるのに」
 ゼロは両手で頬杖を付きながらため息を吐く。

「とりあえず、異常は無い。しばらくは様子見しよう」
 会議はザックの言葉で終わった。



「綺麗な月だな」
 ゼロは会議が終わると、ハチ子の巣に行かず、一人で散歩をする。

「スラ子と赤子さんも少しずつ、仲間と触れ合えている。もう少しで、バードさんたちともお話しできるかな」
 夜風でゼロのサラサラの髪が揺れる。

「? オオカミと巨大スズメバチが騒がしい?」
 ゼロはイーストの城がある方向に顔を向ける。

「侵入者?」
 ゼロが呟いた瞬間、物陰からイーストとコメット、そして隠密が姿を現す!

「ゼロ!」
 イーストはゼロを見つけると、血走った目を向ける。

「イーストさん!」
 ゼロはイーストの顔を認めると、笑顔で走り寄る。

「待ってました! どこに行っていたんですか?」

 イーストの前に来ると、ゼロは顔を上げる。

 夜空にイーストと隠密の刃が煌めく。

 血しぶきが月明かりに輝いた。
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