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1 傷だらけの騎士

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この国には魔術師がいる。多かれ少なかれ誰もが魔力を持っている。それでも魔術師になれるのはほんの一握りの人間だけ。
生まれ持った素質を訓練して開花させることのできる者だけが到達できるので、魔術師は尊敬される。

騎士団でも骨折などは治癒魔法をかけてもらう。
しかし魔力の消耗も激しいので小さな傷などは頼めない。

そういうときは、薬で治す。

その薬は魔女や錬金術師が作成している。
魔術師と錬金術師は国の認定資格がある。魔女は昔からの通称なので、効き目は様々だ。お祖母ちゃんのおまじないレベルのものもあるが、民間療法として伝わるものにもそれなりの根拠がある。

いま、ボロボロになって歩いている騎士、リュートにとってはお婆ちゃんのおまじないでもいいから頼りたい気分だった。
治癒魔法なんて頼めないし、薬も高額なものは買えない。
騎士見習いの生活はギリギリだ。

街のなかを歩いて、普段は見過ごすような路地を覗き込んで、小さな看板をみつけた。
ハーブと杖のマーク。
錬金術師で、しかも薬のマークもある。
(ぼられませんように)

「あのー」

カランコロン、とドアベルが鳴る。
小さな店だと思ったけれど中は以外と、

うん、多分面積は広いんだろうけど本と物が多くて遠近感が狂ってしまう。

「いらっしゃい、ませ?」

なぜか疑問系でソファーに座っている人物が首をかしげた。

「お店ですよね?ここ」

「あー、はい。そうですね。どうしました」

「擦り傷がたくさんあるので、塗り薬ありますか」

近寄ってきた店の人は、小柄だった。

まだ若いかもしれない、
多分女性
髪の毛は後ろでひとつにくくられていて、清潔感がある服装

薬を置いているから、きちんとした服装の店員さんがいるのはポイント高い。
しかし、仮面をつけているので台無し。

いっぺんに胡散臭い雰囲気になっている。

顔の上半分を銀色の仮面が覆っていた。

「はい、傷薬でしたら、これ。
あと、こっちは少量で伸びるので、長持ちします」

ちゃんとした接客をされた。

恐る恐る代金を払って帰った。

その薬はとてもよく効いた。

あんな小さな通りじゃなければ、もっと評判になっててもおかしくないのに。

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