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※心得を忘れるときは、心を自由にしていい
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「リナ?」
身体を離して、顔を覗き込む。
リナは俯いて、握りこぶしを噛んでいる。
「わたし、……でも、女将さんがせっかく、今日は大勢の人も」
「遅かったのか、俺」
カイの手から力が抜けた。そのまま下ろされる。
「そうだな、虫の良いことを言っている。」
「カイさま、」
「でも、俺を選んでくれ」
「カイさま、なんで泣いてるの?」
「泣いてへんわ……」
「私を買ってくれたのですか」
「違うわ、お前何にもわかってへん」
「今日の用意を全部女将さんとお姐さんがしてくれて。綺麗でしょう」
「腹立つほどに。」
「カイさま、私の指名をしてくれるのなら女将さんに話を通さないと、私はもうお客様を取らないことにしたんです。」
「子供に言うみたいに言うな」
「カイ様が失くしたおもちゃを駄々こねてるみたいだからです。」
「話は、通してある。後の事は心配ない。」
リナの表情が変わった。
「それは、えっと、カイさま今日泊まっていかれるということを女将さんも承知しているのですか」
「お前が受け入れてくれるなら」
リナはカイの首に腕を回して抱きついた。
カイは受け止めて、キスをする。
しばらくして、唇をぬぐってから廊下に声をかける。
「聞いているんだろう。女将、リナが許してくれたから貰うぞ」
リナは振り返る。
「……多少、言わせたようにも思えますが、良いでしょう。先程の話をお忘れないよう。」
「カイさま?どういうことですか」
「後で説明してやるから」
リナを抱き上げて寝台におろす。
「余裕ないから抱かせて」
前とは違ってキスをしながら服を脱がせて、自分もさっさと脱ぐ。
「ちゃんと言ってなかったけど、お前のことが好きだ」
おでこを当てて、そう言った。
髪をほどいているのでカーテンの中に二人だけいるみたいになる。
「わ、私も好き。好き、ずっと、好き、カイさま、好き」
涙をこぼしながら声も止まらない。
うん、と頷いている。
「お前が相手した客の数なんか一晩で抜いてやる」
「えっ」
「抱かれた回数もイった数も俺が全部上書きするから」
「ちょっと、カイさま、待って」
「待たない」
あちこちを性急に開かれて、言葉が繋げられなくなる。
カイも可愛がるのに余裕がないし、名前を呼んだりリナの反応を口にしたりする。
(恥ずかしい、言われると恥ずかしい。前もカイさまこんなことを考えていたの?)
めまいがするほど恥ずかしかったけど、余裕のないカイを初めて見るので、嬉しい。
丁寧さは前の方がすごいけれど、求められている。
(それより、)
「カイさま、聞いて、私」
「いやだ」
きっぱりと言われてしまう。
「絶対やめない、今日は泣いてもやめへからな。何回夢に見た思てるんや」
「うれしい、じゃなくて、カイさま、」
リナの中に指を入れて、カイは止まって、確かめるようにしている。
「お前、これ」
「その、まだ、誰とも……」
口の中を舌が暴れまわるキスをされた。
「前みたいに優しくできなくて悪い。痛いと思うけど」
少しずつ、押し付けていく。
ゆっくり進むカイの首に腕を巻き付けて、リナがもっとというようにせがむ。
「ばか、無理すんな。ゆっくりで」
「いいの。もっと近くにきて。
痛みでもいいから、残るものが欲しかったの」
全部納めてから、抱き合ってしばらくじっとして息を整えた。
「大丈夫か?」
「うれしい」
ふにゃっと、リナが笑うと
「可愛い」
と頬擦りをした。
リナの身体を考えて一度だけ繋げたあとは、抱き締めて横になっていた。
「カイ様、また来てくれる?」
そう聞くリナに、カイは渋い顔をした。
甘い雰囲気が壊れた。
リナは謝ろうとしたけれど、カイが先に手で唇をつついた。
「いや、また来るかって聞かれたのが思ったより嫌だったから自分でも驚いた。
今日は、女将とお前の身請けについて話をしていた。だから、また来るというより本音は」
深いキスをする。
蕩けた頭でリナはボンヤリと聞く。
「このまま連れ帰ってずっと一緒にいたい。もちろん、現実的にすむ場所とかお前と決めた方が良いだろうから、改めて吉日に迎えに来ることになると思うが」
「カイさま?え?身請けって言いました?」
「聞いてなかったのか」
「聞いてたけど、夢みたいで、夢なのかなって」
「お前なあ。」
呆れたようにカイが笑う。
「いろいろな交渉や契約はまだこれからだけど、お前が許してくれることが身請けの候補になる条件だった。」
「私、カイさんの何になるの?」
「何って、そりゃ……」
髪を撫でていた。手をとめる。
じいっと見てくるリナに、顔に血が集まってくる。
「嫁じゃねえの?普通。それまでは、こ、恋人とか」
考え込むリナに、
(あー、こいつこれはわかってないし誤解したらまたややこしいことになる)
と思ったカイは、布団の中で手を繋ぐ。
持ち上げ、口を寄せる。
「俺の嫁になってください」
リナは固まったあと、頷いた。
ーーーーーー
そのあと、リナの身請けというのは女将の策略だったらしいと聞いた。
リナは女将の後継として修業を始めるので娼婦として客はとらないということをお得意様に披露する宴だったそうだ。
娼婦をやめるので、引退や身請けと同じように餞の儀式をしていた。
「全員グルかよ……」
団員も団長も。
リナを休ませたら女将と今後の話をすることになっている。
身体を離して、顔を覗き込む。
リナは俯いて、握りこぶしを噛んでいる。
「わたし、……でも、女将さんがせっかく、今日は大勢の人も」
「遅かったのか、俺」
カイの手から力が抜けた。そのまま下ろされる。
「そうだな、虫の良いことを言っている。」
「カイさま、」
「でも、俺を選んでくれ」
「カイさま、なんで泣いてるの?」
「泣いてへんわ……」
「私を買ってくれたのですか」
「違うわ、お前何にもわかってへん」
「今日の用意を全部女将さんとお姐さんがしてくれて。綺麗でしょう」
「腹立つほどに。」
「カイさま、私の指名をしてくれるのなら女将さんに話を通さないと、私はもうお客様を取らないことにしたんです。」
「子供に言うみたいに言うな」
「カイ様が失くしたおもちゃを駄々こねてるみたいだからです。」
「話は、通してある。後の事は心配ない。」
リナの表情が変わった。
「それは、えっと、カイさま今日泊まっていかれるということを女将さんも承知しているのですか」
「お前が受け入れてくれるなら」
リナはカイの首に腕を回して抱きついた。
カイは受け止めて、キスをする。
しばらくして、唇をぬぐってから廊下に声をかける。
「聞いているんだろう。女将、リナが許してくれたから貰うぞ」
リナは振り返る。
「……多少、言わせたようにも思えますが、良いでしょう。先程の話をお忘れないよう。」
「カイさま?どういうことですか」
「後で説明してやるから」
リナを抱き上げて寝台におろす。
「余裕ないから抱かせて」
前とは違ってキスをしながら服を脱がせて、自分もさっさと脱ぐ。
「ちゃんと言ってなかったけど、お前のことが好きだ」
おでこを当てて、そう言った。
髪をほどいているのでカーテンの中に二人だけいるみたいになる。
「わ、私も好き。好き、ずっと、好き、カイさま、好き」
涙をこぼしながら声も止まらない。
うん、と頷いている。
「お前が相手した客の数なんか一晩で抜いてやる」
「えっ」
「抱かれた回数もイった数も俺が全部上書きするから」
「ちょっと、カイさま、待って」
「待たない」
あちこちを性急に開かれて、言葉が繋げられなくなる。
カイも可愛がるのに余裕がないし、名前を呼んだりリナの反応を口にしたりする。
(恥ずかしい、言われると恥ずかしい。前もカイさまこんなことを考えていたの?)
めまいがするほど恥ずかしかったけど、余裕のないカイを初めて見るので、嬉しい。
丁寧さは前の方がすごいけれど、求められている。
(それより、)
「カイさま、聞いて、私」
「いやだ」
きっぱりと言われてしまう。
「絶対やめない、今日は泣いてもやめへからな。何回夢に見た思てるんや」
「うれしい、じゃなくて、カイさま、」
リナの中に指を入れて、カイは止まって、確かめるようにしている。
「お前、これ」
「その、まだ、誰とも……」
口の中を舌が暴れまわるキスをされた。
「前みたいに優しくできなくて悪い。痛いと思うけど」
少しずつ、押し付けていく。
ゆっくり進むカイの首に腕を巻き付けて、リナがもっとというようにせがむ。
「ばか、無理すんな。ゆっくりで」
「いいの。もっと近くにきて。
痛みでもいいから、残るものが欲しかったの」
全部納めてから、抱き合ってしばらくじっとして息を整えた。
「大丈夫か?」
「うれしい」
ふにゃっと、リナが笑うと
「可愛い」
と頬擦りをした。
リナの身体を考えて一度だけ繋げたあとは、抱き締めて横になっていた。
「カイ様、また来てくれる?」
そう聞くリナに、カイは渋い顔をした。
甘い雰囲気が壊れた。
リナは謝ろうとしたけれど、カイが先に手で唇をつついた。
「いや、また来るかって聞かれたのが思ったより嫌だったから自分でも驚いた。
今日は、女将とお前の身請けについて話をしていた。だから、また来るというより本音は」
深いキスをする。
蕩けた頭でリナはボンヤリと聞く。
「このまま連れ帰ってずっと一緒にいたい。もちろん、現実的にすむ場所とかお前と決めた方が良いだろうから、改めて吉日に迎えに来ることになると思うが」
「カイさま?え?身請けって言いました?」
「聞いてなかったのか」
「聞いてたけど、夢みたいで、夢なのかなって」
「お前なあ。」
呆れたようにカイが笑う。
「いろいろな交渉や契約はまだこれからだけど、お前が許してくれることが身請けの候補になる条件だった。」
「私、カイさんの何になるの?」
「何って、そりゃ……」
髪を撫でていた。手をとめる。
じいっと見てくるリナに、顔に血が集まってくる。
「嫁じゃねえの?普通。それまでは、こ、恋人とか」
考え込むリナに、
(あー、こいつこれはわかってないし誤解したらまたややこしいことになる)
と思ったカイは、布団の中で手を繋ぐ。
持ち上げ、口を寄せる。
「俺の嫁になってください」
リナは固まったあと、頷いた。
ーーーーーー
そのあと、リナの身請けというのは女将の策略だったらしいと聞いた。
リナは女将の後継として修業を始めるので娼婦として客はとらないということをお得意様に披露する宴だったそうだ。
娼婦をやめるので、引退や身請けと同じように餞の儀式をしていた。
「全員グルかよ……」
団員も団長も。
リナを休ませたら女将と今後の話をすることになっている。
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