1 / 26
プロローグ
プロローグ
しおりを挟む
大門昭は強面だった。
小学六年生。
すでに身長は百七十センチを超えていた。歩いていて、高校生に間違われる事もよくあった。
町で何度もやんちゃな中高生に喧嘩を吹っかけられてはボコボコにされる小学生だった。
中学に入ってから。
このままではやられっぱなしだと気付き、鍛えるために柔道部に入った。
少しでも強くなりたい一心で部活動に励んだ。
その努力は功を奏し全国大会でベストフォーに入るほど強くなった。
高校は市内の進学校だった。
柔道部がなかったためラグビー部に入った。ラグビーはチームプレーの競技、協調性が重要なスポーツだ。
メンバーとの信頼関係を築いて自分の役割を全うした。
昭の役割はバックス/スリークオーターバックス(TB)。TBは地味だがチームの土台となる存在だ。
メインの選手を後押しして、トライをアシストする役目に徹した。
クラスでも部活と同じように、リーダーになるというよりは縁の下の力持ちタイプだった。
自分的にはそれほど目立ちたいと思はなかったし、主役になろうと思ったこともない。
教室には昭と同じように、地味だとは言わないまでも、主役の引き立て役になるタイプの生徒がいた。
宮本明里もそんな女の子だった。
見た目は平凡で、背が高かった。手入れが面倒なので、髪はショートカットにしていた。
バランスのとれた顔立ちではあったが、どちらかというと薄め。
あっさりめで、クセのない性格は人々の印象に残らなかった。
勉強が得意で頭はそこそこ良かった。
小中と皆勤賞の健康優良児で病気には無縁、親が心配する事のない手のかからない子供だった。
球技は苦手だったが小学生の頃は陸上でジュニア選手に選ばれるほど足が速かった。
彼女には櫻井麗美という芸能界にいそうなくらい可愛い顔の幼馴染がいた。
麗美は消極的で気が弱い性格だったため、明里がいつもモテる麗美の代わりに男子たちの対応をしていた。
明里自身はさっぱりとした性格で、要領も良かったので、男子たちから麗美を守る事も上手にやってのけた。
私達は平成に生まれて、平成の終わり頃、青春といわれる時期を過ごした。
世の中は、東京オリンピック開催が決定し、消費税率が五パーセントから八パーセントに引き上げられた。
世界は米中貿易摩擦が激化、イギリスがEU離脱を表明、自国ファーストで混乱が広がった。
若者特有の悩みを抱えて、不安定な心のまま責任を免除される期間。
社会的責任を猶予されている青年期の事をモラトリアムという。
私達はそのモラトリアムの時分を、まだ大人になりきれない未熟さと戦いながら、迷いながら、手探りで正解を探すように懸命に生きていた。
小学六年生。
すでに身長は百七十センチを超えていた。歩いていて、高校生に間違われる事もよくあった。
町で何度もやんちゃな中高生に喧嘩を吹っかけられてはボコボコにされる小学生だった。
中学に入ってから。
このままではやられっぱなしだと気付き、鍛えるために柔道部に入った。
少しでも強くなりたい一心で部活動に励んだ。
その努力は功を奏し全国大会でベストフォーに入るほど強くなった。
高校は市内の進学校だった。
柔道部がなかったためラグビー部に入った。ラグビーはチームプレーの競技、協調性が重要なスポーツだ。
メンバーとの信頼関係を築いて自分の役割を全うした。
昭の役割はバックス/スリークオーターバックス(TB)。TBは地味だがチームの土台となる存在だ。
メインの選手を後押しして、トライをアシストする役目に徹した。
クラスでも部活と同じように、リーダーになるというよりは縁の下の力持ちタイプだった。
自分的にはそれほど目立ちたいと思はなかったし、主役になろうと思ったこともない。
教室には昭と同じように、地味だとは言わないまでも、主役の引き立て役になるタイプの生徒がいた。
宮本明里もそんな女の子だった。
見た目は平凡で、背が高かった。手入れが面倒なので、髪はショートカットにしていた。
バランスのとれた顔立ちではあったが、どちらかというと薄め。
あっさりめで、クセのない性格は人々の印象に残らなかった。
勉強が得意で頭はそこそこ良かった。
小中と皆勤賞の健康優良児で病気には無縁、親が心配する事のない手のかからない子供だった。
球技は苦手だったが小学生の頃は陸上でジュニア選手に選ばれるほど足が速かった。
彼女には櫻井麗美という芸能界にいそうなくらい可愛い顔の幼馴染がいた。
麗美は消極的で気が弱い性格だったため、明里がいつもモテる麗美の代わりに男子たちの対応をしていた。
明里自身はさっぱりとした性格で、要領も良かったので、男子たちから麗美を守る事も上手にやってのけた。
私達は平成に生まれて、平成の終わり頃、青春といわれる時期を過ごした。
世の中は、東京オリンピック開催が決定し、消費税率が五パーセントから八パーセントに引き上げられた。
世界は米中貿易摩擦が激化、イギリスがEU離脱を表明、自国ファーストで混乱が広がった。
若者特有の悩みを抱えて、不安定な心のまま責任を免除される期間。
社会的責任を猶予されている青年期の事をモラトリアムという。
私達はそのモラトリアムの時分を、まだ大人になりきれない未熟さと戦いながら、迷いながら、手探りで正解を探すように懸命に生きていた。
応援ありがとうございます!
40
お気に入りに追加
57
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる