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第一章
第1話 入場行進
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「おい宮本~!麗美ちゃん、今日はどうしたの?学校休み?」
教室の自分の席で授業のノートを片付けていると、サッカー部の佐々木くんが話しかけてきた。
いつも明里と一緒にいる麗美が、今日は見当たらないから気になったようだ。
「なんか、今日は親戚の法事みたい。休むって」
「そーか。残念、癒やしが……俺らの癒やしが……」
落ち込んたふりをする佐々木君が、どさくさに紛れて明里にくっついてこようとする。
明里は一歩後退り、彼をかわした。
「明日説明会で学校休みだから、みんなで集まってどっか行こうかって話してんだ。麗美ちゃんもどうかなと思ったんだけど?」
誘うなら直接麗美に聞いてくれたらいいのに……私が断るのもどうかと思うんだが。
間違いなく麗美は行かないから断る。
その役目はいつも《わたし》》だ。
引っ込み思案で恥ずかしがり屋の彼女の代わりに返事は私がしている。
まぁ、いつもの事だから慣れたもんだけど。
「どうだろうねぇ?まだこっちに帰って来てないんじゃないかな?親戚は遠方の人みたいだから」
「佐々木、お前本人に直で聞けよ、宮本は麗美ちゃんのマネージャーじゃないんだから」
彼の友人の大門君が横から話に入ってきて、佐々木くんを軽く諌めてくれた。
見た目が強そうだから、いつもは怖がられている。女子から話しかけられたりしないタイプの大門君だ。
けど結構、的を射た事をいうので、明里は凄いなと思っている。
まぁ、大門君とは話をしたことはないし、ただのクラスメートでしかない。
正直、彼の事はあまり知らないんだけど。
そんなやり取りをしていると、クラスでもカースト上位のグループに属する桜ちゃんが話に入ってきた。
どれくらい時間をかけてセットしてるの?と思ってしまうサラサラヘアがみごとだ。
「でも、あれだよねー。いつも麗美の『お断り』の返事を宮本がしているのはどうかと思うなー」
少し間延びした調子で話し出す。
毎度、それを他人から言われると麗美が気の毒になる。
本人は本当に人見知りなだけで、自分の意見を言う事が苦手なおとなしい女の子。
けれど顔が可愛いからか、常に女子達から疎まれたり、変な嫉妬心の標的にされたりする。
「麗美はめっちゃ気が小さいのよね、男の子と話すの苦手みたい。怖がりなんだよ」
「そこがまた可愛いとこだよな。守ってあげたいという男心を刺激するというか……昭!お前が話しかけたら麗美ちゃん怖くて気絶しちゃうんじゃね?」
佐々木君がデレた顔で、私に被せるように言った。
「昭君はぁ、無口だからぁ、威圧感がハンパないしねー」
ははは、と笑いながら桜ちゃんが話にのっかる。彼女は意外と毒を吐くタイプだ。
「……いや、俺も必要な時は話す。必要じゃない時は聞いてる。ただそれだけ」
特に気にした様子もなく、大門君がひょうひょうと答えた。
いったん話に区切りがついたようだ。
「そかそか、それじゃ、私はこれにて失礼いたします。帰るね」
ダラダラおしゃべりするとなんだか悪口大会みたいになりそうなので、鞄を持って明里は席を立った。
なぜかみんなも一緒に帰るみたいだ。
私は校門まで佐々木君と大門君の三人で歩いた。
電車通学の佐々木君は途中で駅の方に向かい、帰り道が大門君と明里の二人になる。
気まずい。
特に大門君との会話を思いつかず無言で歩く。なにか適当に話す内容を考えた。
「大門君って……自転車通学じゃなかった?」
ラグビー部の彼は部活があるので、登下校で姿を見かける事はめったになかった。
確か自転車で通学していた気がする。
「ああ。朝、チャリのタイヤがパンクしてた。だから今日は歩いてきた」
「そっか……」
……話が終わる。
そのまま商店街の道に入ると、通りは少し人が多くなってきた。
大門君は体が大きいから、並んで歩くと通行人の邪魔になる。
明里は何となく縦並びになった。
後ろを振り返って大門君が言った。
「入場行進じゃないんだから……」
彼の真後ろを二歩ほど距離を取って、同じ速度で一列になり歩いていた。
たしかに、選手入場みたいになってる。
教室の自分の席で授業のノートを片付けていると、サッカー部の佐々木くんが話しかけてきた。
いつも明里と一緒にいる麗美が、今日は見当たらないから気になったようだ。
「なんか、今日は親戚の法事みたい。休むって」
「そーか。残念、癒やしが……俺らの癒やしが……」
落ち込んたふりをする佐々木君が、どさくさに紛れて明里にくっついてこようとする。
明里は一歩後退り、彼をかわした。
「明日説明会で学校休みだから、みんなで集まってどっか行こうかって話してんだ。麗美ちゃんもどうかなと思ったんだけど?」
誘うなら直接麗美に聞いてくれたらいいのに……私が断るのもどうかと思うんだが。
間違いなく麗美は行かないから断る。
その役目はいつも《わたし》》だ。
引っ込み思案で恥ずかしがり屋の彼女の代わりに返事は私がしている。
まぁ、いつもの事だから慣れたもんだけど。
「どうだろうねぇ?まだこっちに帰って来てないんじゃないかな?親戚は遠方の人みたいだから」
「佐々木、お前本人に直で聞けよ、宮本は麗美ちゃんのマネージャーじゃないんだから」
彼の友人の大門君が横から話に入ってきて、佐々木くんを軽く諌めてくれた。
見た目が強そうだから、いつもは怖がられている。女子から話しかけられたりしないタイプの大門君だ。
けど結構、的を射た事をいうので、明里は凄いなと思っている。
まぁ、大門君とは話をしたことはないし、ただのクラスメートでしかない。
正直、彼の事はあまり知らないんだけど。
そんなやり取りをしていると、クラスでもカースト上位のグループに属する桜ちゃんが話に入ってきた。
どれくらい時間をかけてセットしてるの?と思ってしまうサラサラヘアがみごとだ。
「でも、あれだよねー。いつも麗美の『お断り』の返事を宮本がしているのはどうかと思うなー」
少し間延びした調子で話し出す。
毎度、それを他人から言われると麗美が気の毒になる。
本人は本当に人見知りなだけで、自分の意見を言う事が苦手なおとなしい女の子。
けれど顔が可愛いからか、常に女子達から疎まれたり、変な嫉妬心の標的にされたりする。
「麗美はめっちゃ気が小さいのよね、男の子と話すの苦手みたい。怖がりなんだよ」
「そこがまた可愛いとこだよな。守ってあげたいという男心を刺激するというか……昭!お前が話しかけたら麗美ちゃん怖くて気絶しちゃうんじゃね?」
佐々木君がデレた顔で、私に被せるように言った。
「昭君はぁ、無口だからぁ、威圧感がハンパないしねー」
ははは、と笑いながら桜ちゃんが話にのっかる。彼女は意外と毒を吐くタイプだ。
「……いや、俺も必要な時は話す。必要じゃない時は聞いてる。ただそれだけ」
特に気にした様子もなく、大門君がひょうひょうと答えた。
いったん話に区切りがついたようだ。
「そかそか、それじゃ、私はこれにて失礼いたします。帰るね」
ダラダラおしゃべりするとなんだか悪口大会みたいになりそうなので、鞄を持って明里は席を立った。
なぜかみんなも一緒に帰るみたいだ。
私は校門まで佐々木君と大門君の三人で歩いた。
電車通学の佐々木君は途中で駅の方に向かい、帰り道が大門君と明里の二人になる。
気まずい。
特に大門君との会話を思いつかず無言で歩く。なにか適当に話す内容を考えた。
「大門君って……自転車通学じゃなかった?」
ラグビー部の彼は部活があるので、登下校で姿を見かける事はめったになかった。
確か自転車で通学していた気がする。
「ああ。朝、チャリのタイヤがパンクしてた。だから今日は歩いてきた」
「そっか……」
……話が終わる。
そのまま商店街の道に入ると、通りは少し人が多くなってきた。
大門君は体が大きいから、並んで歩くと通行人の邪魔になる。
明里は何となく縦並びになった。
後ろを振り返って大門君が言った。
「入場行進じゃないんだから……」
彼の真後ろを二歩ほど距離を取って、同じ速度で一列になり歩いていた。
たしかに、選手入場みたいになってる。
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