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第一章
第5話 箒
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学校でありがちと言えばありがちの事だが、男子が掃除中ふざけて部室棟の屋根の上に掃除用の箒を投げた。それがトタン屋根に引っかかって落ちてこなくなった。
生徒数人で何とか取ろうとしていたが、なかなか届かない。
「昭、肩車してくれ!」
「山田お前何キロだよ。いけるかな」
大門君よりは痩せてはいるだろうが、70キロは有りそうな山田君だ。
明里はその様子を1階の廊下から見ていた。
そうこうしているうちにチャイムが鳴り、箒は屋根の上に乗ったまま放置された。
男子たちは放課後、また来て箒を取ろうという話になったようだった。
明里はそれを眺めながら、あの箒忘れ去られるだろうなと心の中で思った。
そして後で脚立持ってきて自分が取ろうかなと考えていた。
みんなは部活やなんやらで忙しいけど、明里は帰宅部だ。麗美ちゃんも部活はやっていない。
放課後明里は、日直だった麗美を教室で待っていた。
「何かあるの?」
窓の外をずっと見ている明里に麗美が話しかけてきた。
「あそこの屋根の上にさ、箒が乗っかってるじゃない?あれを取ろうかなと思って」
「誰かいたずらして乗っけちゃったんだね」
くすくす笑いながら麗美が言った。
「脚立ってどこだっけ?」
「用務員さんに聞いたら分かるかも。いっしょに行こうか」
麗美がそう言ってくれたので、明里は一緒に用務員室へ向かう事にした。
先生に脚立のありかを聞いたら、なぜ必要なんだとうるさそうだ。箒の事を調べられて怒られそうに思ったから、面倒回避のため用務員さんに直接聞こうって事になった。
けれど用務員さんは用務員室にはいなかった。今日は休みの日らしかった。
仕方がないので脚立以外の他の方法を思いつくかもしれないと、とにかく部室棟に行ってみることにした。
「石とか投げてみる?」
麗美は柄の部分だけ屋根から出ている箒を見ながらそう言った。
「当たったとしても、箒は落ちてはこないと思う……」
何度かジャンプしてみたが、百七十近くある明里でも届かなかった。
「しょうがないね」
「そうだね、諦めようか」
諦めて二人で教室に帰ろうとしたとき、後ろから佐々木君と大門君がやってくるのが見えた。
佐々木君が嬉しそうに私たちに駆け寄ってきた。
「お、箒チャレンジしてくれてんの?麗美ちゃんありがとね。優しいね、女神だね」
麗美が明里の背中に隠れるように「いいえ」と小声で言った。
「届かないだろ?」
大門君が明里に言ったので「そうだね。無理っぽい」と返事をした。
「宮本、お前背、何センチ?」
佐々木君が明里の横に立って聞いてきた。
「170ちょっと足りないくらい」
「よっしゃー!肩車するから取ってくれ」
そう言うと彼はしゃがんで下を向いた。肩に跨れというアクションだ。
「え、嫌だ……なんでよ」
制服のスカートのままだ。嫌に決まってる。
大門君がつかつかと歩み寄ったかと思うとそのまま佐々木君の頭に跨った。
「ちょ、昭。やめろ無理だろ逆だろ!」
無理やり肩に乗ろうとする大門君。それを必死に拒否している佐々木君の姿がおかしかった。
「大丈夫だ、多分いける」
その無責任ないけるはないから。とふざけながら二人で言い合いをしている。
麗美は驚いた顔で二人を見ていた。
結局、大門君が佐々木君を肩車して、ホウキ救出作戦は成功した。
「わるい、ありがとな」
大門君は明里たち二人に礼を言うと部活に戻っていった。
「大門君って、ひったくり犯を一緒に捕まえた人だよね」
明里はそうだと頷いた。
「大門君って女子に話しかけるタイプの人だったんだ」
麗美は少し意外だと驚いていた。
「そう?確かに強面だから女子に恐れられてるよね。強そうでしょう?ゴリラって呼ばれてるって本人が言ってた」
「わかるかも、シャバーニっぽいもん」
「シャバーニって何?」
「イケメンゴリラで有名なゴリラ。一時期テレビとかによく出てたよ」
「へぇ、そうなんだ」
イケメンだからゴリラと呼ばれるのか、強面だからゴリラと呼ばれているのか……それは呼んだ人にしかわからないなと明里は思った。
生徒数人で何とか取ろうとしていたが、なかなか届かない。
「昭、肩車してくれ!」
「山田お前何キロだよ。いけるかな」
大門君よりは痩せてはいるだろうが、70キロは有りそうな山田君だ。
明里はその様子を1階の廊下から見ていた。
そうこうしているうちにチャイムが鳴り、箒は屋根の上に乗ったまま放置された。
男子たちは放課後、また来て箒を取ろうという話になったようだった。
明里はそれを眺めながら、あの箒忘れ去られるだろうなと心の中で思った。
そして後で脚立持ってきて自分が取ろうかなと考えていた。
みんなは部活やなんやらで忙しいけど、明里は帰宅部だ。麗美ちゃんも部活はやっていない。
放課後明里は、日直だった麗美を教室で待っていた。
「何かあるの?」
窓の外をずっと見ている明里に麗美が話しかけてきた。
「あそこの屋根の上にさ、箒が乗っかってるじゃない?あれを取ろうかなと思って」
「誰かいたずらして乗っけちゃったんだね」
くすくす笑いながら麗美が言った。
「脚立ってどこだっけ?」
「用務員さんに聞いたら分かるかも。いっしょに行こうか」
麗美がそう言ってくれたので、明里は一緒に用務員室へ向かう事にした。
先生に脚立のありかを聞いたら、なぜ必要なんだとうるさそうだ。箒の事を調べられて怒られそうに思ったから、面倒回避のため用務員さんに直接聞こうって事になった。
けれど用務員さんは用務員室にはいなかった。今日は休みの日らしかった。
仕方がないので脚立以外の他の方法を思いつくかもしれないと、とにかく部室棟に行ってみることにした。
「石とか投げてみる?」
麗美は柄の部分だけ屋根から出ている箒を見ながらそう言った。
「当たったとしても、箒は落ちてはこないと思う……」
何度かジャンプしてみたが、百七十近くある明里でも届かなかった。
「しょうがないね」
「そうだね、諦めようか」
諦めて二人で教室に帰ろうとしたとき、後ろから佐々木君と大門君がやってくるのが見えた。
佐々木君が嬉しそうに私たちに駆け寄ってきた。
「お、箒チャレンジしてくれてんの?麗美ちゃんありがとね。優しいね、女神だね」
麗美が明里の背中に隠れるように「いいえ」と小声で言った。
「届かないだろ?」
大門君が明里に言ったので「そうだね。無理っぽい」と返事をした。
「宮本、お前背、何センチ?」
佐々木君が明里の横に立って聞いてきた。
「170ちょっと足りないくらい」
「よっしゃー!肩車するから取ってくれ」
そう言うと彼はしゃがんで下を向いた。肩に跨れというアクションだ。
「え、嫌だ……なんでよ」
制服のスカートのままだ。嫌に決まってる。
大門君がつかつかと歩み寄ったかと思うとそのまま佐々木君の頭に跨った。
「ちょ、昭。やめろ無理だろ逆だろ!」
無理やり肩に乗ろうとする大門君。それを必死に拒否している佐々木君の姿がおかしかった。
「大丈夫だ、多分いける」
その無責任ないけるはないから。とふざけながら二人で言い合いをしている。
麗美は驚いた顔で二人を見ていた。
結局、大門君が佐々木君を肩車して、ホウキ救出作戦は成功した。
「わるい、ありがとな」
大門君は明里たち二人に礼を言うと部活に戻っていった。
「大門君って、ひったくり犯を一緒に捕まえた人だよね」
明里はそうだと頷いた。
「大門君って女子に話しかけるタイプの人だったんだ」
麗美は少し意外だと驚いていた。
「そう?確かに強面だから女子に恐れられてるよね。強そうでしょう?ゴリラって呼ばれてるって本人が言ってた」
「わかるかも、シャバーニっぽいもん」
「シャバーニって何?」
「イケメンゴリラで有名なゴリラ。一時期テレビとかによく出てたよ」
「へぇ、そうなんだ」
イケメンだからゴリラと呼ばれるのか、強面だからゴリラと呼ばれているのか……それは呼んだ人にしかわからないなと明里は思った。
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