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第一章
第4話
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翌日は学校が休みだったにもかかわらず、大門君と明里は学校に呼び出されていた。
警察で何度も聞かれた説明を、また校長先生にしなくてはならなかった。
「大門君がひったくり犯を見つけてタックルしました。犯人は二人いたみたいで、もう一人がバッグを盗ろうとしたので、私がそれより先にバッグを掴んで、交番まで走ろうと考え、ダッシュしました」
「何で走ったの?怖くなかった?」
「犯人はヘルメットを被っていたので、視界も狭いですし、走ったら犯人から逃げきれると思いました」
「陸上部だっけ?」
「いえ、何もやってません」
「あ、めっちゃ速かったっす」
大門君が横から言ってくれた。
「君たち二人を今度の全校集会で表彰するからね。いや、マスコミの取材受けてもらえると嬉しいんだけどね、うちの学校自慢にもなるからな~」
「警察の方から、犯人が捕まっていないので、まだSNSに上げるとか、そういうのは控えろって言われてますんで」
「そう、そう。そんなんだよな~本当に残念」
何が残念なのかよくわからない。
ようやく先生から開放されたので、二人で帰ることになった。
「怖くない?」
「え?なにが?」
「昨日の道、通るんだろ?犯人がまたいたらとか思わないか」
あぁそうか。今日は大門君は自転車なんだ。そう思うと少し怖い気がした。
明里は徒歩で通学している。
「昼間で明るいから、それに、わざわざ現場に戻って、自分から捕まりに来るほど犯人も間抜けじゃないでしょう」
確かにな、と大門君は頷くと「じゃ」と言って自転車置き場まで歩いていった。
怖いと言える女の子だったら少しは可愛げがあるのかもしれないなと思った。
昔からしっかり者だと言われ続けた。
明里ちゃんがいたら大丈夫。そういう頼れる存在の自分が自立しててかっこいいと思ったし、女友達からもさっぱりしてて好感が持てるとよく言われた。
その立ち位置は自分に合っているし、か弱い女の子をわざわざ演じる気もなかった。
女の子らしくして、男子にモテたいという願望もあまりなかった。
麗美みたいな守ってあげたいと思うような女の子だったら、犯人に追いかけられても走って逃げきれるなんて思わないんだろうな……と我ながら自分の力強さに自分で驚いた。
「私って、かっこいい」
そう一人で呟いた。
真後ろに大門君がいたので驚いた。
「オレが?」
「あぁ、自分の事をかっこいいと思った」
「確かにな。ラグビー部に入部する?」
「……」
そのまま、特に盛り上がる話をするわけでもなかったが、大門君は自転車を押して、私を家の前まで送ってくれた。
「ありがとう」
「ん、じゃ、明日」
そう言って自転車に乗って帰っていった。
その時にはもうSNS上で、ひったくり犯の動画が拡散され、あっという間に私達は有名人になっていた。
学校にメールや電話で問い合わせがくることになり、大門君も私も時の人となった。
数週間が経ち、犯人が捕まったと警察から連絡があった。
その頃はもうブームも去っていて、学校でも騒がれなくなっていた。
明里と大門君はいつもの日常に戻って学生生活していた。
大門君は有名人になったと同時に告白されたらしく、テニス部の後輩と付き合ったという話を聞いた。
SNS効果は凄いな。
高校生、テニス部、恋愛……アオハルだなと明里は思った。
警察で何度も聞かれた説明を、また校長先生にしなくてはならなかった。
「大門君がひったくり犯を見つけてタックルしました。犯人は二人いたみたいで、もう一人がバッグを盗ろうとしたので、私がそれより先にバッグを掴んで、交番まで走ろうと考え、ダッシュしました」
「何で走ったの?怖くなかった?」
「犯人はヘルメットを被っていたので、視界も狭いですし、走ったら犯人から逃げきれると思いました」
「陸上部だっけ?」
「いえ、何もやってません」
「あ、めっちゃ速かったっす」
大門君が横から言ってくれた。
「君たち二人を今度の全校集会で表彰するからね。いや、マスコミの取材受けてもらえると嬉しいんだけどね、うちの学校自慢にもなるからな~」
「警察の方から、犯人が捕まっていないので、まだSNSに上げるとか、そういうのは控えろって言われてますんで」
「そう、そう。そんなんだよな~本当に残念」
何が残念なのかよくわからない。
ようやく先生から開放されたので、二人で帰ることになった。
「怖くない?」
「え?なにが?」
「昨日の道、通るんだろ?犯人がまたいたらとか思わないか」
あぁそうか。今日は大門君は自転車なんだ。そう思うと少し怖い気がした。
明里は徒歩で通学している。
「昼間で明るいから、それに、わざわざ現場に戻って、自分から捕まりに来るほど犯人も間抜けじゃないでしょう」
確かにな、と大門君は頷くと「じゃ」と言って自転車置き場まで歩いていった。
怖いと言える女の子だったら少しは可愛げがあるのかもしれないなと思った。
昔からしっかり者だと言われ続けた。
明里ちゃんがいたら大丈夫。そういう頼れる存在の自分が自立しててかっこいいと思ったし、女友達からもさっぱりしてて好感が持てるとよく言われた。
その立ち位置は自分に合っているし、か弱い女の子をわざわざ演じる気もなかった。
女の子らしくして、男子にモテたいという願望もあまりなかった。
麗美みたいな守ってあげたいと思うような女の子だったら、犯人に追いかけられても走って逃げきれるなんて思わないんだろうな……と我ながら自分の力強さに自分で驚いた。
「私って、かっこいい」
そう一人で呟いた。
真後ろに大門君がいたので驚いた。
「オレが?」
「あぁ、自分の事をかっこいいと思った」
「確かにな。ラグビー部に入部する?」
「……」
そのまま、特に盛り上がる話をするわけでもなかったが、大門君は自転車を押して、私を家の前まで送ってくれた。
「ありがとう」
「ん、じゃ、明日」
そう言って自転車に乗って帰っていった。
その時にはもうSNS上で、ひったくり犯の動画が拡散され、あっという間に私達は有名人になっていた。
学校にメールや電話で問い合わせがくることになり、大門君も私も時の人となった。
数週間が経ち、犯人が捕まったと警察から連絡があった。
その頃はもうブームも去っていて、学校でも騒がれなくなっていた。
明里と大門君はいつもの日常に戻って学生生活していた。
大門君は有名人になったと同時に告白されたらしく、テニス部の後輩と付き合ったという話を聞いた。
SNS効果は凄いな。
高校生、テニス部、恋愛……アオハルだなと明里は思った。
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