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第一章
第3話
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その動画はネットニュースで流れた。
セイラー服の女子高校生が、商店街を猛烈ダッシュしている動画だ。
夜のニュースでは大門君と明里が交番に駆け込む動画までもが流れた。
みるみるうちにアクセス数が上がり、あっという間にトレンド入りしていた。
世の中の人達は助けるよりもスマホで動画を撮ることのほうが重要なようだ。
犯人はまだ捕まっていなかった。
けれどヘルメットを被った犯人の映像も流れ、彼らが捕まるのも時間の問題のような事をニュースキャスターが言っていた。
明里は大門君と一緒にパトカーに乗せられ警察署へ連れて行かれた。
警察署には担任や教頭先生まで来て、なんだか大騒ぎになっていた。
「いや、もう本当にナイスファイトなんだけどね。危険だから、もう二度としないでね」
少しメタボ気味の警察官に明里は説教されていた。
その横で大門君は。
「君はなんのスポーツやってるの?良い体格してるな、ラグビー?柔道も?凄いな将来何になるかはもう決めてるの?」
警察官から褒められ、何故か期待のルーキー的な扱いを受けている。
「や、あの……宮本さんが、追いつけないくらい足が速かったので、なんとか犯人から逃げ切ることができました」
その言葉に「感謝状貰えるかも」と女性警官が明里に声をかけてくれた。
「取材の申し込みがね。学校に来てるんだよーもう本当にうちの生徒は凄いな!」
ネットの時代は怖いくらい情報が速い。画像があれば学校名も、そして個人の特定だってすぐにできてしまう。
そんな事は気にしていないのか担任はにこにこしている。
「ご両親にも電話しといたからな、ここに迎えに来てくれるからな」
先生がわざわざ親にまで電話をかけたんだ。そう思うと、大袈裟だなと感じた。
『とっとと帰りたい。』
明里はそう思いながら隣を見ると、大門君も同じことを思ってそうな表情で先生に向かって苦笑いしていた。
明里の両親は仕事が忙しく、なかなか時間が取れない。だから明里は、親に迎えに来てもらわなくても構わない。
一人で帰れるので大丈夫ですと先生に言った。
大門君の家は、踏切を渡った向こうの町で酒屋をやっている。
学区が違うので直接知り合いではなかったが、帰り道だからと大門君のお母さんが明里も車で送ってくれることになった。
明里は三人兄弟の末っ子で、兄も姉も家を出ていた。
両親は共働きで、共に正社員で働いているので帰りはいつも遅かった。
明里の家にはおじいちゃんがいて、祖父は介護が必要だった。
平日はデイサービスに行っているので、夕方6時に明里が家でおじいちゃんを出迎える。
パーキンソン病で要介護3という一人では歩くことが困難な、自宅介護老人だった。
おじいちゃんの世話は両親がしていたが、二人とも忙しかったので、手伝えることは明里がすべてやっていた。
部活はできなかった。
高校入学時、中学まで続けていた陸上部に入りたかったが、そういう理由で断念した。
家族で協力し合って祖父を支えなければならない状況は、共働きの夫婦にとっては厳しいものだったからだ。
上の兄と姉が一人暮らしをして、私立の理系の大学に通っていたので学費も相当必要だったと思う。
姉は自立して今年から働いていたが、兄はまだ大学の二回生だった。
だから明里が家にいるときは、祖父の介護を引き受ける形になっていた。
セイラー服の女子高校生が、商店街を猛烈ダッシュしている動画だ。
夜のニュースでは大門君と明里が交番に駆け込む動画までもが流れた。
みるみるうちにアクセス数が上がり、あっという間にトレンド入りしていた。
世の中の人達は助けるよりもスマホで動画を撮ることのほうが重要なようだ。
犯人はまだ捕まっていなかった。
けれどヘルメットを被った犯人の映像も流れ、彼らが捕まるのも時間の問題のような事をニュースキャスターが言っていた。
明里は大門君と一緒にパトカーに乗せられ警察署へ連れて行かれた。
警察署には担任や教頭先生まで来て、なんだか大騒ぎになっていた。
「いや、もう本当にナイスファイトなんだけどね。危険だから、もう二度としないでね」
少しメタボ気味の警察官に明里は説教されていた。
その横で大門君は。
「君はなんのスポーツやってるの?良い体格してるな、ラグビー?柔道も?凄いな将来何になるかはもう決めてるの?」
警察官から褒められ、何故か期待のルーキー的な扱いを受けている。
「や、あの……宮本さんが、追いつけないくらい足が速かったので、なんとか犯人から逃げ切ることができました」
その言葉に「感謝状貰えるかも」と女性警官が明里に声をかけてくれた。
「取材の申し込みがね。学校に来てるんだよーもう本当にうちの生徒は凄いな!」
ネットの時代は怖いくらい情報が速い。画像があれば学校名も、そして個人の特定だってすぐにできてしまう。
そんな事は気にしていないのか担任はにこにこしている。
「ご両親にも電話しといたからな、ここに迎えに来てくれるからな」
先生がわざわざ親にまで電話をかけたんだ。そう思うと、大袈裟だなと感じた。
『とっとと帰りたい。』
明里はそう思いながら隣を見ると、大門君も同じことを思ってそうな表情で先生に向かって苦笑いしていた。
明里の両親は仕事が忙しく、なかなか時間が取れない。だから明里は、親に迎えに来てもらわなくても構わない。
一人で帰れるので大丈夫ですと先生に言った。
大門君の家は、踏切を渡った向こうの町で酒屋をやっている。
学区が違うので直接知り合いではなかったが、帰り道だからと大門君のお母さんが明里も車で送ってくれることになった。
明里は三人兄弟の末っ子で、兄も姉も家を出ていた。
両親は共働きで、共に正社員で働いているので帰りはいつも遅かった。
明里の家にはおじいちゃんがいて、祖父は介護が必要だった。
平日はデイサービスに行っているので、夕方6時に明里が家でおじいちゃんを出迎える。
パーキンソン病で要介護3という一人では歩くことが困難な、自宅介護老人だった。
おじいちゃんの世話は両親がしていたが、二人とも忙しかったので、手伝えることは明里がすべてやっていた。
部活はできなかった。
高校入学時、中学まで続けていた陸上部に入りたかったが、そういう理由で断念した。
家族で協力し合って祖父を支えなければならない状況は、共働きの夫婦にとっては厳しいものだったからだ。
上の兄と姉が一人暮らしをして、私立の理系の大学に通っていたので学費も相当必要だったと思う。
姉は自立して今年から働いていたが、兄はまだ大学の二回生だった。
だから明里が家にいるときは、祖父の介護を引き受ける形になっていた。
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