モラトリアム

おてんば松尾

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第一章 

第13話 札幌

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札幌に着くまでの間、明里は忙しかった。
とにかく大門君の泊まる場所を確保しなければならない。自分が予約しているホテルに問い合わせてみた。
帰りの飛行機も同じ便で大門君の分を予約をする。

「さぶっ……」

そうでしょうとも、そうでしょう。真冬の北海道寒いに決まってる。大門君は荷物を何も持ってないし、旅行にくるかっこじゃない。何もかも腹立たしい。

今から準備するとしても、洋服とか鞄とか、気替えとか。普通に買ってたらまずお金がもたない。

「うわっ……めちゃ都会」

大門君は辺りを見回しながら「スゲー」とかずっといってる。
明里もすごい都会だなと思った。

明里は札幌で観光などはしたことがなかった。
お爺ちゃんが住んでいたのは紋別だ。ほとんど冬場は雪に覆われていて二月には最低気温マイナス三十六度とかの記録出しちゃうくらい寒い。札幌の比じゃない。だから大門君の今の服装、ジャンパー一枚じゃ死ぬだろう。

「どこに行く?とりあえず、時計台とか?」
大門君はどこで取ってきたのか、観光マップを手にして楽しそうだ。

「すすきの」

「え?すすきの?すすきのってすすきの?大人の遊び場?」

明里は大門君の目の前に立った。
明里は百七十センチ身長があるが大門君は百八十は越えてるだろう。デカい。
仰け反る形になりながら、顔を見上げた。

「まず、大門君が行きたい場所に行けるよう善処します。けれどその前に買い物が先。明日紋別に行くのオホーツク、流氷で有名なとこ。そこはマイナス三十度超えるくらい、ひょう、ひょう、氷点下。嫌かもしれないけど、古着で防寒着を揃える。予算五千円以内」

明里は嫌とは言わせないぞという感じで大門君に伝えた。
マイナス三十度超えるは流石に言い過ぎだけど。

「ああ、……えっと。わかった」

「それと、私も札幌は幼いころ来たことあるけど、記憶がないから初めても同然。何か聞かれても解らないから」

え、マジで?と大門君は少し驚いたようだった。

「友達がいるとか、親戚が住んでるとかじゃないのか……」

大通り公園は雪まつりの準備なのか石像が製作途中だった。まだ完成していないけどかなり迫力があった。ゆっくり見学したいけど、そこは通り過ぎて、すすきのを目指す。
比較的安くて、きれいで、洋服がいいっぱいあって、全国展開しているリサイクルショップに大門君と入った。

ブランドにこだわらなければ、リュックやヤッケが千円とかで売っている。しかもセール中で半額になっていた。
その場でタグを全部切ってもらってすぐに着ますと言ってリュックにすべて詰め込んだ。

「以外とお洒落に揃ったからびっくりだわ」
「俺、このアウター嫌なんだけど、ダサくね?」
「知り合いに遭遇しないし、いいんじゃない?逆に誰もが知ってるブランドの方がダサいよ」

「でもさ、プーマじゃなくてフーマって書いてる。PがFになってるぞ」

あ、ホントだ。と明里も買ってから思ったけど、自分が着る訳ではないのでいいやと思った。


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