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第一章
第22話 帰る
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「昭先輩!」
改札を出たところで、私たちの方に女の子が走り寄ってきた。
同じ学校のジャージを着ているところを見ると後輩なんだろう。
「真菜か……」
そういうと、遠慮がちに大門君が私を振り返った。
あ、テニス部の後輩だ。
明里は思い出した。
大門君はテニス部の後輩と付き合っている。そうだった。なんで今まで思い出さなかったんだろう。こんな重要なこと忘れてたなんて……
「センパーイ何処に行ってたんですか?わぁすごい荷物」
彼女は無邪気な笑顔を大門君に向けてそう訊ねた。
「あ、それじゃ、また明日ね!」
明里は元気よく大門君に言うと、家の方へ歩き出した。走ったといってもおかしくないスピードで後ろを振り返らず真っ直ぐに。
頭の中はグシャグシャに脳が掻き回されたような状態だ。何も考えられない。いや、考えてはいけない。
今は……我慢だ。
その夜、明里はスマホの電源を切った。
朝までの時間は短い。明日また学校で大門君に会う。
それまでにいろいろ頭の中を整理しなければならない。
彼女がいる人と旅行へ行った。
してはいけなかった。大門君の優しさに甘えてしまった。
異性だけど友人という定義で大丈夫だろうか。二人で旅行して、手を繋いで帰ってくるなんて彼女への裏切りだし、知らなかったとはいえ……いや……知っていただろう。
そう、自分は思い出さなかっただけだ。
なんて愚かなんだろう。
彼は私とは違う。彼は学校では人気者だ。そんなには目立つタイプじゃないけど、部活も頑張ってるし友達だって多い。
私とは違う世界の人だ。
彼女は大門君のことを『昭先輩』と呼んだ。大門君は『真菜』と……
付き合っていると聞いたとき、青春してるな~って思ったんだ。その事を忘れていたなんて。
そう彼らが青春してるところに私が横から割り込んだ。
おじいちゃんの事を理由に、まるで可哀想な子のように大門君の同情を得ようとしたんだ。
酷い人間。ただ自分の思いを聞いてもらうために利用した。北海道まで付き合わせた。帰るように説得できたし、無視すればよかった話だ。
それをしなかったのは自分だった。
翌朝明里は熱を出した。
学校へは行けなかった。
改札を出たところで、私たちの方に女の子が走り寄ってきた。
同じ学校のジャージを着ているところを見ると後輩なんだろう。
「真菜か……」
そういうと、遠慮がちに大門君が私を振り返った。
あ、テニス部の後輩だ。
明里は思い出した。
大門君はテニス部の後輩と付き合っている。そうだった。なんで今まで思い出さなかったんだろう。こんな重要なこと忘れてたなんて……
「センパーイ何処に行ってたんですか?わぁすごい荷物」
彼女は無邪気な笑顔を大門君に向けてそう訊ねた。
「あ、それじゃ、また明日ね!」
明里は元気よく大門君に言うと、家の方へ歩き出した。走ったといってもおかしくないスピードで後ろを振り返らず真っ直ぐに。
頭の中はグシャグシャに脳が掻き回されたような状態だ。何も考えられない。いや、考えてはいけない。
今は……我慢だ。
その夜、明里はスマホの電源を切った。
朝までの時間は短い。明日また学校で大門君に会う。
それまでにいろいろ頭の中を整理しなければならない。
彼女がいる人と旅行へ行った。
してはいけなかった。大門君の優しさに甘えてしまった。
異性だけど友人という定義で大丈夫だろうか。二人で旅行して、手を繋いで帰ってくるなんて彼女への裏切りだし、知らなかったとはいえ……いや……知っていただろう。
そう、自分は思い出さなかっただけだ。
なんて愚かなんだろう。
彼は私とは違う。彼は学校では人気者だ。そんなには目立つタイプじゃないけど、部活も頑張ってるし友達だって多い。
私とは違う世界の人だ。
彼女は大門君のことを『昭先輩』と呼んだ。大門君は『真菜』と……
付き合っていると聞いたとき、青春してるな~って思ったんだ。その事を忘れていたなんて。
そう彼らが青春してるところに私が横から割り込んだ。
おじいちゃんの事を理由に、まるで可哀想な子のように大門君の同情を得ようとしたんだ。
酷い人間。ただ自分の思いを聞いてもらうために利用した。北海道まで付き合わせた。帰るように説得できたし、無視すればよかった話だ。
それをしなかったのは自分だった。
翌朝明里は熱を出した。
学校へは行けなかった。
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