ただ、君のそばで

森の妖精

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ゲスい

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 目が覚めて時計を見たら16時になっていた。相変わらず身体は重いし頭はぼーっとしているが、暖かい。
 
 そっと起き上がり額に手を当ててみる。額には冷えピタが貼ってあり、布団がかけられていた。
エアコンも付いていた。
 
 ベット脇の机には、ミネラルウォーターと風邪薬、それにオレンジジュース、ヨーグルトやゼリーなどが置いてあり、俺が早朝買って投げっぱなしだったカップラーメンは台所に丁寧に置いてあった。
 
 ミネラルウォーターの下に名刺と置き手紙があった。

 (勝手に部屋へ入ってすみません。ふらふらしていたのでベットまで運びました。少し何か召し上がって、お薬を飲んでゆっくり休んでください。玄関にあった部屋の鍵はポストの奥に置いておきます。 また伺います。    小高 亮介 )
 
 薬の箱が開いている。
俺、薬飲んだのか?熱で朦朧としてたからか、記憶が無い。考えながら無意識にそっと唇を触っていた。
 

 ――――その夜、しっかりと寝たおかげか、薬が効いたのか、夜勤の仕事には何とか行けるようだ。休む訳にはいかない。
 
 見ず知らずの男に世話になってしまい、情けないような、バツが悪いような思いだったが、あの部屋を1週間でで出なくてはいけない事の方が重大で頭がいっぱいだった。
実家に世話になる訳にはいかない。実家はすでに兄貴が結婚し、奥さんと子ども2人が暮らしている。
 
 俺は、あんな形で家を出たのだから、元より実家を頼るのは無駄だった。

 「おーい、一ノ瀬!このラインまで掘っといて!」
 と指示されて、スコップとツルハシを使い分けて交差点信号脇の歩道の掘削、整地作業をまかせれた。重機が入れない狭い場所では特に新人の出番だ。これが、冬は夜に地面が凍ってたりするとなかなか掘れない…。

  街は、寒くなるにつれ、煌びやかになっていく。クリスマスの装飾で歩いている人々も寒いのに表情は豊かだった。
信号が変わり、車が停まった。

 何となく停まった車の運転席に目をやる。運転席には今朝、うちに尋ねて来たアイツ、名前なんだっけ?りょう何とかと書いてあった気がする。
助手席には、女が座っていた。
明らかに年上の女は、派手な黒のスーツで耳にぶら下げた大きなイヤリングが何とも都会的だった。
女の赤い爪が亮介の胸あたりをなぞってるのが見えた。

 俺はツルハシを上に上げたまま、りょう…何とかの方を見ていた。
時間にすればほんの1~2秒ほどだと思うが、2人の全容を見た気がした。
 
 亮介は困ったような、それでいて爽やかな笑顔で首を傾げて何か答えているが、その時信号が変わり車は走り去って行った。
 
 へぇー。アイツ、結構ゲスいな。
 俺はそんな事を考えながら地面を掘った。
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