真実の愛の犠牲になるつもりはありませんー私は貴方の子どもさえ幸せに出来たらいいー

春目

文字の大きさ
21 / 77

16.難航するルークの家庭教師探し

しおりを挟む






ルークの為に立ち上がったマリィの行動は早かった。

ドレスを買い、化粧をし、立派な淑女の格好をすると、様々なサロンに顔を出した。

しかも、ただのサロンではない。社交界の顔役や知識人が集う名のあるサロンだ。ツテや知り合いはいなかったが美しいと今でも評判のマリィは幸い何処でも歓迎された。

マリィはサロンで様々な人々と交流しながら侍女と、そして、家庭教師を探した。

さりげなく侍女を探していると言えば、幸い直ぐに侍女は見つかった。

ケイト・グリーンという名前の彼女は伯爵家の14人兄弟の3女で末っ子だそうだが、他の家族はお淑やかで品のある者ばかりだというのに、社交界でも有名なじゃじゃ馬娘で、そのやんちゃで豪胆な性格から働き口に困っていたらしい。

気力も体力のある彼女ならルークと張り合えるだろう、とマリィは彼女を見込み、即採用した。

ケイトはマリィの見込んだ通り、ルークと張り合える良い侍女だった。ルークと出会うと直ぐに追いかけっこを初め、急に隠れんぼを始めるルークも彼女曰く野生の勘で瞬殺する勢いで見つけ出した。
またルークの周りで起こる一般人からしたら不可思議な現象も、素直な彼女は直ぐに受け入れてくれた。

「この家、妖精が住んでいるのですのね! まぁ、絵本みたい!」

ケイトは本当に良い侍女だった。
だが、ルークはケイトがいると今までのような隠れんぼが上手くいかないからか毎日悔しさを滲ませ対抗心を燃やしていた。

「今日こそケイトに見つからないようにするんだ」

屋敷はケイトが来てから更に賑やかになった。毎日のようにルークとケイトは走り回り、ルークは悔しそうだったが楽しそうだった。


こうして侍女は見つかった。
だが、問題は家庭教師だった。


とあるサロン。
マリィはその顔に微笑みを浮かべながらも内心、うんざりとしていた。

「マリィ夫人が家庭教師を探していると噂に聞きまして、丁度うちの独身の三男が……いえ、選ぶのはマリィ夫人ですから、でも、お耳に入れたく……」
「お、俺はどうですか! 学院卒業してますし、貴族教育だって受けてますから……それに、貴方を支えたりとか……」
「私の知り合いに丁度いいのがいますよ。ベルクス侯爵のところの次男。貴方を好いていると昔から……えっ、そういうのじゃない?」

マリィはうんざりしていた。
そう、探しても探しても明らかに下心を持った人間しか来ないのだ。
あわよくばマリィと……と思う不届き者が多すぎる。
マリィが欲しいのはルークを真面目に見てくれる家庭教師である。だが、男女問わず家庭教師を探しているのに、家庭教師の話で近づいてくるのは下心丸出しの男ばかり。

マリィはこの日ばかりは自分を呪った。

(まるで大河で砂金を探すようだわ……。全くまともな人が来ない。
私、貴方達の為に綺麗なわけじゃないのよ!
うぅ、どうしよう……)

ルークも6歳だ。早い子では4歳から始める貴族の子弟教育を始めるにはギリギリの年齢になる。
マリィは焦った。

(やっぱり陛下を頼る……? ううん、それは最終手段。あんな狸が手配する家庭教師なんてどんなのか分からないし……)

マリィは近寄ってくる下心丸出しの貴族達をどうにか捌いて全員に丁寧に断りながらお茶会をやり過ごした。

「はぁ、やっと終わった……」

お茶会が終わる頃にはマリィは疲れていた。疲労感が拭えないままマリィは馭者の手を借り、馬車に乗る。

(色んなサロンに顔を出したけど、結局、見つからず終いだわ。
私、高望みしているのかしら……?)

マリィはため息を吐いた。

だが、その時だった。

「誰だ、貴様は!? 何をする!」

馭者の絶叫にマリィは顔を上げる。
その瞬間、マリィの視界は暗転した。




その夜、ズィーガー公爵家別邸に、緊急の知らせが届いた。

「ルーク様! マリィ様が、マリィ様が……!」

血相を変えて食堂に帰ってきたケイトに、侍女達と乳母と一緒に夕飯を取っていたルークは唯ならぬ嫌な予感を感じ青ざめる。

「どうしましょう……! マリィ様が賊に攫われたと……警備隊から連絡が……!」

その言葉に侍女達は悲鳴を上げ、乳母はふらつき、ルークは……その顔から一切の表情が抜け落ちた。





しおりを挟む
感想 73

あなたにおすすめの小説

初夜に暴言を吐いた夫は後悔し続ける──10年後の償い【完結保証】

星森 永羽
恋愛
王命により、辺境伯ロキアのもとへ嫁いだのは、金髪翠眼の美しき公爵令嬢スフィア。 だが、初夜に彼が告げたのは、愛も権限も与えないという冷酷な宣言だった。噂に踊らされ、彼女を「穢れた花嫁」と罵ったロキア。 しかし、わずか一日でスフィアは姿を消し、教会から届いたのは婚姻無効と慰謝料請求の書状──。 王と公爵の怒りを買ったロキアは、爵位も領地も名誉も奪われ、ただの補佐官として生きることに。 そして十年後、運命のいたずらか、彼は被災地で再びスフィアと出会う。 地位も捨て、娘を抱えて生きる彼女の姿に、ロキアの胸に去来するのは、悔恨と赦しを乞う想い──。 ⚠️本作はAIの生成した文章を一部に使用しています。

結婚したけど夫の不倫が発覚して兄に相談した。相手は親友で2児の母に慰謝料を請求した。

佐藤 美奈
恋愛
伯爵令嬢のアメリアは幼馴染のジェームズと結婚して公爵夫人になった。 結婚して半年が経過したよく晴れたある日、アメリアはジェームズとのすれ違いの生活に悩んでいた。そんな時、机の脇に置き忘れたような手紙を発見して中身を確かめた。 アメリアは手紙を読んで衝撃を受けた。夫のジェームズは不倫をしていた。しかも相手はアメリアの親しい友人のエリー。彼女は既婚者で2児の母でもある。ジェームズの不倫相手は他にもいました。 アメリアは信頼する兄のニコラスの元を訪ね相談して意見を求めた。

結婚初夜、「何故彼女が死んでお前が生きているんだ」と夫に言われました

ましゅぺちーの
恋愛
侯爵令嬢のアリサは婚約者だった王太子テオドールと結婚した。 ちょうどその半年前、アリサの腹違いの妹のシアは不慮の事故で帰らぬ人となっていた。 王太子が婚約者の妹のシアを愛していたのは周知の事実だった。 そんな彼は、結婚初夜、アリサに冷たく言い放った。 「何故彼女が死んでお前が生きているんだ」と。

遡ったのは君だけじゃない。離縁状を置いて出ていった妻ーー始まりは、そこからだった。

沼野 花
恋愛
私は、夫にも子供にも選ばれなかった。 その事実だけを抱え、離縁を突きつけ、家を出た。 そこで待っていたのは、最悪の出来事―― けれど同時に、人生の扉がひらく瞬間でもあった。 夫は愛人と共に好きに生きればいい。 今さら「本当に愛していたのは君だ」と言われても、裏切ったあなたを許すことはできない。 でも、子供たちの心だけは、必ず取り戻す。 妻にも母にもなれなかった伯爵夫人イネス。 過去を悔いながらも、愛を手に入れることを決めた彼女が辿り着いた先には――

【完結】もう…我慢しなくても良いですよね?

アノマロカリス
ファンタジー
マーテルリア・フローレンス公爵令嬢は、幼い頃から自国の第一王子との婚約が決まっていて幼少の頃から厳しい教育を施されていた。 泣き言は許されず、笑みを浮かべる事も許されず、お茶会にすら参加させて貰えずに常に完璧な淑女を求められて教育をされて来た。 16歳の成人の義を過ぎてから王子との婚約発表の場で、事あろうことか王子は聖女に選ばれたという男爵令嬢を連れて来て私との婚約を破棄して、男爵令嬢と婚約する事を選んだ。 マーテルリアの幼少からの血の滲むような努力は、一瞬で崩壊してしまった。 あぁ、今迄の苦労は一体なんの為に… もう…我慢しなくても良いですよね? この物語は、「虐げられる生活を曽祖母の秘術でざまぁして差し上げますわ!」の続編です。 前作の登場人物達も多数登場する予定です。 マーテルリアのイラストを変更致しました。

悪役断罪?そもそも何かしましたか?

SHIN
恋愛
明日から王城に最終王妃教育のために登城する、懇談会パーティーに参加中の私の目の前では多人数の男性に囲まれてちやほやされている少女がいた。 男性はたしか婚約者がいたり妻がいたりするのだけど、良いのかしら。 あら、あそこに居ますのは第二王子では、ないですか。 えっ、婚約破棄?別に構いませんが、怒られますよ。 勘違い王子と企み少女に巻き込まれたある少女の話し。

初耳なのですが…、本当ですか?

あおくん
恋愛
侯爵令嬢の次女として、父親の仕事を手伝ったり、邸の管理をしたりと忙しくしているアニーに公爵家から婚約の申し込みが来た! でも実際に公爵家に訪れると、異世界から来たという少女が婚約者の隣に立っていて…。

白い結婚の末、離婚を選んだ公爵夫人は二度と戻らない』

鍛高譚
恋愛
白い結婚の末、「白い結婚」の末、私は冷遇され、夫は愛人を溺愛していた――ならば、もう要らないわ」 公爵令嬢 ジェニファー・ランカスター は、王弟 エドワード・クラレンス公爵 のもとへ政略結婚として嫁ぐ。 だが、その結婚生活は冷たく空虚なものだった。夫は愛人 ローザ・フィッツジェラルド に夢中になり、公爵夫人であるジェニファーは侮辱され、無視され続ける日々。 ――それでも、貴族の娘は耐えなければならないの? 何の愛もなく、ただ飾り物として扱われる結婚に見切りをつけたジェニファーは 「離婚」 を決意する。 しかし、王弟であるエドワードとの離婚は容易ではない。実家のランカスター家は猛反対し、王宮の重臣たちも彼女の決断を 「公爵家の恥」 と揶揄する。 それでも、ジェニファーは負けない。弁護士と協力し、着々と準備を進めていく。 そんな折、彼女は北方の大国 ヴォルフ公国の大公、アレクサンダー・ヴォルフ と出会う。 温かく誠実な彼との交流を通じて、ジェニファーは 「本当に大切にされること」 を知る。 そして、彼女の決断は、王都の社交界に大きな波紋を呼ぶこととなる――。 「公爵夫人を手放したことを、いつか後悔しても遅いわ」 「私はもう、あなたたちの飾り人形じゃない」 離婚を巡る策略、愛人の凋落、元夫の後悔――。 そして、新たな地で手にした 「愛される結婚」。

処理中です...