真実の愛の犠牲になるつもりはありませんー私は貴方の子どもさえ幸せに出来たらいいー

春目

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29.聖女の真実

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確かにずっとシルヴィーは気になっていた。

ルークといい、ナディアといい、自分は特異な力を持つ子どもしか産まなかった。
あの妙な力を持った子ども達……ルークもそうだが、ナディアも本当に変だった。あの子は生まれた瞬間から、

青ざめた顔を向けるシルヴィーに国王は口角を上げた。

「ゾッとしたでしょ? 彼らは全く年相応の子どもじゃないし、変な力を使うからね。恐ろしくて訳が分からなくて自分を責めて……この5年、まともに生きられなくなるくらいに追い詰められていたでしょう?」

「……っ」

「何故こうなったのか。考えて君は気づいた。
聖女としての生を全うせず、として生きようとした。
その結果、幸せを終わらせ人を殺したんだ。
自分が悪いよね、本当。
 私からすれば、やっと気づいてくれたという感じだけど、君は偉いよ。自分を省みる事が出来たのだからね。
まぁ、はっきりさせておくと今の教会の連中も悪い。
本来聖女とはなんだったのか、聖女に処女を厳守するのは何故か、全く君に教えなかったんだから。
しかも、彼らは聖女の管理も怠った。聖女が人間と関わる時は気をつけろと厳命されているはずなんだけどね?
結果、君は過ちを犯し、人としては歪なあの2人を産んだ。仕方がないね」

「管理……?厳命……?」

彼の言い方はまるで聖女がそこまで尊いものではないような……いや、元々を語るような言い方だった。
そして、あのような子どもが産まれるのも当然だとも言っていて……。

そして、そう語る国王は笑っていた。楽しげに、それはもう楽しげに。
それとは反対に、シルヴィーは血の気が引いていく。

「あぁ、そういえば、君、孤児だったよね。君さ、自分の両親が誰だか調べたことある?」

ふいに聞かれたその質問。
シルヴィーは既に嫌な予感がしていた。

「い、いいえ……」

「そうなんだ。
まぁ、調べても絶対出てこないよ。生まれながらのピンクブロンドの人間なんて世界に今、君だけだからね」

「……え?」

「そうなると気になるね?
君は両親もいないのによく生きていけたな、って?
きっと最初から知恵を持ち言葉を話せる状態で生まれたからだろうね。
人間がかかる病気は全くかかることないし、怪我だって自分で治せるし、自分に害を成す外敵の対処だって出来る。
ワオ、君はなんて完璧な存在なんだろうね? 人間じゃそんなことできないよ」

「…………っ」

シルヴィーの手が震えて止まらない。何か、嫌な……否、とんでもない事実を今、突きつけられている。 

しかし、突きつけられているそれらを知らなくてはならないとシルヴィーは直感した。

不安と焦燥で喉が潰れる感覚を味わいながらシルヴィーはどうにか震える声で聞いた。

「私は……子を孕んでは、いけなかった……いえ、処女を散らさなければ、良かったのですか?」

「そうだよ?
そうすれば聖女は救世主でいられるからね。
かつての人類はとても賢い。どうやったら皆共存して、どうしたら幸せに生きられるか、真剣に考えた結果、今があるんだからね。
……ねぇ? 避妊薬は使えなかっただろう?
あれ、だから仕方がないんだよね」

「…………っ」

シルヴィーの額から滝のような汗が流れる。呼吸は乱れ、髪が振り乱れる。

視界が歪む。

次第に立っていられなくなりシルヴィーは床に倒れた。

そんなシルヴィーなど目もくれず国王は「そうそう……」と何でもない話のように話し出した。

「聖女の任を解かれる聖女ってさ。どうなるか分かるかい?
基本2択なんだ。 
聖女が何らかの理由で働けなくなったら、特別な儀式をして俗世で人として生きられるようにしてから解任する……そちらの方が圧倒的に多いんだけど、やっぱり度々君みたいに間違いを犯す聖女がいてね。
まぁ、神が許すわけがないのさ。
清貧と節制、高潔と奉仕を求めているのに、身勝手な理由で辞めちゃうんだもの。
シルヴィー、君は13年経つ前に気づいたからね。これは私からの慈悲だ。
……君には

「……っ」

「ふふっ、でも、まぁ丁度良かったんじゃない?
今日、君の娘がやらかしてくれてさ。
君は地下牢行きだけど、俗世と引き離された君はもう罪を重ねないで済む。
このまま何もせずにいれば、神も君にこれ以上罪を問うことはしないだろう。
対して、クリフォードは本当に馬鹿だよ。
簡単に真実の愛シルヴィーを手放しちゃってさ。
初志貫徹なんてしないだろうし、私がヒントを与えても気づかないとも思っていたけど、あの子は本当に愚かだ……。
こんな結果になるのなら、フィルバートだってあんなことしなかっただろうに」

「……」

力が入らない身体をどうにか起こし、シルヴィーは這い上がる。やっとの思いで床に座り、玉座にいるその人を見上げた。


「貴方は……何者ですか……?」


シルヴィーは気になっていた。
彼の目線はあまりにも俯瞰的すぎる。
全て盤上の遊戯を行うように、そのルールを理解し、ロジックを読み、そして……その未来さきが見えている。
そして、その立ち位置はまるで……。

か細い声でやっとの思いで発せられたその問いは、玉座にいるその人に向けられ、そして、その人に届く。

その人は端正な顔立ちに笑みを浮かべ、その目を、宝石の色をした目に絶望するシルヴィーを映した。


「私はセレスチア国王だよ。シルヴィー。 
正真正銘、この国の王様だ」


彼の言葉には嘘はなかった。

だが、彼は決して
















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