真実の愛の犠牲になるつもりはありませんー私は貴方の子どもさえ幸せに出来たらいいー

春目

文字の大きさ
35 / 77

30. 災害後の顛末

しおりを挟む




ドラゴンが猛威を振るい街を破壊し、フィルバートによって救われたあの夜から早2週間。

セレスチアを襲ったあの災害は、ドラゴンは結界を突き破り王都を襲ってきたことになり、人々が救われたあの瞬間は神の奇跡が起こったことになった。

新聞では大々的に神自らセレスチアを救ったと書かれ、紙面は生存した人々の喜びの声で溢れている。
一方、新聞の隅にはズィーガー公爵の娘が国王をおじさんと呼び不敬罪を犯したこと、生みの親であるズィーガー公爵の愛人のシルヴィーが娘の代わりに罰を受け、投獄されたことが書かれていた。

だが、世間はドラゴン災害の話で持ち切りであり、クリフォード達のことは全く話題に上がることもなかった。

もうクリフォードとシルヴィーのことは世間では遠い過去のことになっていたのだ。

だから、彼らの行く末など誰も興味ない上に覚えてすらいない。

彼らのことを覚えているのは当事者と被害者と、そして、今現在進行形で迷惑を被っているマリィ達ぐらいである。





「はぁ……あの馬鹿……」

マリィは誰もいなくなったダイニングルームでため息を吐きながら新聞を読んでいた。

不快な気持ちを押し流すように紅茶に口をつけ、文章に沿って目を動かす。

新聞の隅に書かれたそれを見て、マリィは予想通りやらかしたなと思った。

クリフォードはあれから5年経っているのに本当に相変わらずだ。

(あの人、多分、心の中がずっとシルヴィーに出会った頃のままなのでしょうね。
一番自分が調子に乗っていた時代のままだから、周りがどれだけ冷めた目で見ているか分からないんだわ。
本当可哀想な人……頭がね。
シルヴィーは不幸なことになってしまったけど、こんな人から解放されて逆に良かったのではないかしら)

マリィは新聞を閉じるとゴミ箱に捨てた。

すると、ダイニングルームに侍女が駆け込んできた。

その後ろからルークもやってきて、ひょっこりと顔を出した。

「奥様、緊急の便りが来ました!」

「緊急?」

「はい、王城にルーク様を連れて登城せよ、と。国王陛下からの緊急招集です。
おそらく……ルーク様と、ルーク様の今後についてのお話し合いかと」

その言葉にマリィは驚き、しかし、直ぐに納得した。

(そうよね……あの人ならあのドラゴンがルークのせいだって分かるわよね……)

隠していたわけではないが、あまりバレたくない話ではある。

あの国王のことだ。ルークの力が危険だと判断したら……もしくは、ルークの力を有用だと判断したら、マリィからルークを取り上げるかもしれない。

「そうなったら戦いね……」

「奥様……。
お気持ちは分かりますが、シルヴィー様のことがありますから、お気を付けて下さいませ」

「大丈夫よ。不敬罪になんてならないわ。ただルークに何かしようものなら全力で遠慮なく抵抗するだけだから」

「それはようございま……ん? 奥様……?」

訝しむ侍女を置いて、マリィは先程から不安そうな面持ちでこちらを見ていたルークに近づき、その身体を抱きしめた。

「大丈夫よ。ルーク。何があっても貴方を守るわ」

その声はとても頼もしいものだったが、その腕の中でルークは俯いた。

「でも……国王陛下って怖いんでしょう? みんな言ってたよ。何を考えてるか分からないって……」

「確かに分からない人ね。でも、怖がることはないわ。
私もいるし、それに多分だけど……」

マリィはあくまで勘だが、この緊急招集には自分達だけが呼ばれているとは思えなかった。

あの国王だ。あの場にいた当事者全員、呼んでいるはすだ。

そうだから……。

「きっと参加しているはずよ。私達をずっと助けてくれた。フィルバート様が……」

その名前が出た瞬間、ルークの表情は明るいものになった。














しおりを挟む
感想 73

あなたにおすすめの小説

遡ったのは君だけじゃない。離縁状を置いて出ていった妻ーー始まりは、そこからだった。

沼野 花
恋愛
私は、夫にも子供にも選ばれなかった。 その事実だけを抱え、離縁を突きつけ、家を出た。 そこで待っていたのは、最悪の出来事―― けれど同時に、人生の扉がひらく瞬間でもあった。 夫は愛人と共に好きに生きればいい。 今さら「本当に愛していたのは君だ」と言われても、裏切ったあなたを許すことはできない。 でも、子供たちの心だけは、必ず取り戻す。 妻にも母にもなれなかった伯爵夫人イネス。 過去を悔いながらも、愛を手に入れることを決めた彼女が辿り着いた先には――

【完結】もう…我慢しなくても良いですよね?

アノマロカリス
ファンタジー
マーテルリア・フローレンス公爵令嬢は、幼い頃から自国の第一王子との婚約が決まっていて幼少の頃から厳しい教育を施されていた。 泣き言は許されず、笑みを浮かべる事も許されず、お茶会にすら参加させて貰えずに常に完璧な淑女を求められて教育をされて来た。 16歳の成人の義を過ぎてから王子との婚約発表の場で、事あろうことか王子は聖女に選ばれたという男爵令嬢を連れて来て私との婚約を破棄して、男爵令嬢と婚約する事を選んだ。 マーテルリアの幼少からの血の滲むような努力は、一瞬で崩壊してしまった。 あぁ、今迄の苦労は一体なんの為に… もう…我慢しなくても良いですよね? この物語は、「虐げられる生活を曽祖母の秘術でざまぁして差し上げますわ!」の続編です。 前作の登場人物達も多数登場する予定です。 マーテルリアのイラストを変更致しました。

愛された側妃と、愛されなかった正妃

編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。 夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。 連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。 正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。 ※カクヨムさんにも掲載中 ※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります ※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。

結婚したけど夫の不倫が発覚して兄に相談した。相手は親友で2児の母に慰謝料を請求した。

佐藤 美奈
恋愛
伯爵令嬢のアメリアは幼馴染のジェームズと結婚して公爵夫人になった。 結婚して半年が経過したよく晴れたある日、アメリアはジェームズとのすれ違いの生活に悩んでいた。そんな時、机の脇に置き忘れたような手紙を発見して中身を確かめた。 アメリアは手紙を読んで衝撃を受けた。夫のジェームズは不倫をしていた。しかも相手はアメリアの親しい友人のエリー。彼女は既婚者で2児の母でもある。ジェームズの不倫相手は他にもいました。 アメリアは信頼する兄のニコラスの元を訪ね相談して意見を求めた。

【完結】旦那様、その真実の愛とお幸せに

おのまとぺ
恋愛
「真実の愛を見つけてしまった。申し訳ないが、君とは離縁したい」 結婚三年目の祝いの席で、遅れて現れた夫アントンが放った第一声。レミリアは驚きつつも笑顔を作って夫を見上げる。 「承知いたしました、旦那様。その恋全力で応援します」 「え?」 驚愕するアントンをそのままに、レミリアは宣言通りに片想いのサポートのような真似を始める。呆然とする者、訝しむ者に見守られ、迫りつつある別れの日を二人はどういった形で迎えるのか。 ◇真実の愛に目覚めた夫を支える妻の話 ◇元サヤではありません ◇全56話完結予定

結婚初夜、「何故彼女が死んでお前が生きているんだ」と夫に言われました

ましゅぺちーの
恋愛
侯爵令嬢のアリサは婚約者だった王太子テオドールと結婚した。 ちょうどその半年前、アリサの腹違いの妹のシアは不慮の事故で帰らぬ人となっていた。 王太子が婚約者の妹のシアを愛していたのは周知の事実だった。 そんな彼は、結婚初夜、アリサに冷たく言い放った。 「何故彼女が死んでお前が生きているんだ」と。

初夜に暴言を吐いた夫は後悔し続ける──10年後の償い【完結保証】

星森 永羽(ほしもりとわ)
恋愛
王命により、辺境伯ロキアのもとへ嫁いだのは、金髪翠眼の美しき公爵令嬢スフィア。 だが、初夜に彼が告げたのは、愛も権限も与えないという冷酷な宣言だった。噂に踊らされ、彼女を「穢れた花嫁」と罵ったロキア。 しかし、わずか一日でスフィアは姿を消し、教会から届いたのは婚姻無効と慰謝料請求の書状──。 王と公爵の怒りを買ったロキアは、爵位も領地も名誉も奪われ、ただの補佐官として生きることに。 そして十年後、運命のいたずらか、彼は被災地で再びスフィアと出会う。 地位も捨て、娘を抱えて生きる彼女の姿に、ロキアの胸に去来するのは、悔恨と赦しを乞う想い──。 ⚠️本作はAIの生成した文章を一部に使用しています。

【完結】旦那様、わたくし家出します。

さくらもち
恋愛
とある王国のとある上級貴族家の新妻は政略結婚をして早半年。 溜まりに溜まった不満がついに爆破し、家出を決行するお話です。 名前無し設定で書いて完結させましたが、続き希望を沢山頂きましたので名前を付けて文章を少し治してあります。 名前無しの時に読まれた方は良かったら最初から読んで見てください。 登場人物のサイドストーリー集を描きましたのでそちらも良かったら読んでみてください( ˊᵕˋ*) 第二王子が10年後王弟殿下になってからのストーリーも別で公開中

処理中です...