真実の愛の犠牲になるつもりはありませんー私は貴方の子どもさえ幸せに出来たらいいー

春目

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30. 災害後の顛末

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ドラゴンが猛威を振るい街を破壊し、フィルバートによって救われたあの夜から早2週間。

セレスチアを襲ったあの災害は、ドラゴンは結界を突き破り王都を襲ってきたことになり、人々が救われたあの瞬間は神の奇跡が起こったことになった。

新聞では大々的に神自らセレスチアを救ったと書かれ、紙面は生存した人々の喜びの声で溢れている。
一方、新聞の隅にはズィーガー公爵の娘が国王をおじさんと呼び不敬罪を犯したこと、生みの親であるズィーガー公爵の愛人のシルヴィーが娘の代わりに罰を受け、投獄されたことが書かれていた。

だが、世間はドラゴン災害の話で持ち切りであり、クリフォード達のことは全く話題に上がることもなかった。

もうクリフォードとシルヴィーのことは世間では遠い過去のことになっていたのだ。

だから、彼らの行く末など誰も興味ない上に覚えてすらいない。

彼らのことを覚えているのは当事者と被害者と、そして、今現在進行形で迷惑を被っているマリィ達ぐらいである。





「はぁ……あの馬鹿……」

マリィは誰もいなくなったダイニングルームでため息を吐きながら新聞を読んでいた。

不快な気持ちを押し流すように紅茶に口をつけ、文章に沿って目を動かす。

新聞の隅に書かれたそれを見て、マリィは予想通りやらかしたなと思った。

クリフォードはあれから5年経っているのに本当に相変わらずだ。

(あの人、多分、心の中がずっとシルヴィーに出会った頃のままなのでしょうね。
一番自分が調子に乗っていた時代のままだから、周りがどれだけ冷めた目で見ているか分からないんだわ。
本当可哀想な人……頭がね。
シルヴィーは不幸なことになってしまったけど、こんな人から解放されて逆に良かったのではないかしら)

マリィは新聞を閉じるとゴミ箱に捨てた。

すると、ダイニングルームに侍女が駆け込んできた。

その後ろからルークもやってきて、ひょっこりと顔を出した。

「奥様、緊急の便りが来ました!」

「緊急?」

「はい、王城にルーク様を連れて登城せよ、と。国王陛下からの緊急招集です。
おそらく……ルーク様と、ルーク様の今後についてのお話し合いかと」

その言葉にマリィは驚き、しかし、直ぐに納得した。

(そうよね……あの人ならあのドラゴンがルークのせいだって分かるわよね……)

隠していたわけではないが、あまりバレたくない話ではある。

あの国王のことだ。ルークの力が危険だと判断したら……もしくは、ルークの力を有用だと判断したら、マリィからルークを取り上げるかもしれない。

「そうなったら戦いね……」

「奥様……。
お気持ちは分かりますが、シルヴィー様のことがありますから、お気を付けて下さいませ」

「大丈夫よ。不敬罪になんてならないわ。ただルークに何かしようものなら全力で遠慮なく抵抗するだけだから」

「それはようございま……ん? 奥様……?」

訝しむ侍女を置いて、マリィは先程から不安そうな面持ちでこちらを見ていたルークに近づき、その身体を抱きしめた。

「大丈夫よ。ルーク。何があっても貴方を守るわ」

その声はとても頼もしいものだったが、その腕の中でルークは俯いた。

「でも……国王陛下って怖いんでしょう? みんな言ってたよ。何を考えてるか分からないって……」

「確かに分からない人ね。でも、怖がることはないわ。
私もいるし、それに多分だけど……」

マリィはあくまで勘だが、この緊急招集には自分達だけが呼ばれているとは思えなかった。

あの国王だ。あの場にいた当事者全員、呼んでいるはすだ。

そうだから……。

「きっと参加しているはずよ。私達をずっと助けてくれた。フィルバート様が……」

その名前が出た瞬間、ルークの表情は明るいものになった。














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