真実の愛の犠牲になるつもりはありませんー私は貴方の子どもさえ幸せに出来たらいいー

春目

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61. 後始末

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セロンは、泣き腫らした顔のマリィと、心配そうにマリィを見上げるルークを慮り、馬車まで送ることにした。

ゆっくりと歩く2人に歩幅を合わせセロンは歩きながらマリィに謝罪した。

「ズィーガー夫人、僕の妻が……アーネットが申し訳なかった。
貴方にもルークくんにも怖い思いをさせてしまった」

「いいえ。悪いのはあの方ですから……」

そう言ってセロンの謝罪を断るが、マリィの表情はとても暗く複雑だった。ショックと不安が混ざった彼女の表情にセロンはなんとも言えない顔になる。

「はぁ、後悔先に立たずだな……貴方と兄様の噂を聞いた時点で僕はあの人を気にかけるべきだった。
僕は……あの人がどれだけ兄様を愛していたか知っていたのだから。きっと今回のことだって未然に防げたはずだ……。
僕は自分のことしか考えていなかった。
先程のことも、君の家の馭者がズィーガー夫人が一向に来ないと報告に来なければ一生気づかなかっただろう。
……そうなれば何が起こったか……」

セロンの目がルークに向く。
その目にルークは体を震わせたが、セロンは直ぐに視線を外しため息を吐いた。

「何がともあれ貴方達が無事で良かった。
アーネットは後日、正式に処分を下す。
公爵夫人に暴行、そして、殺人未遂を起こしたんだ。しかも、この王城で。
然るべき罰を彼女は受けるべきだと思う。
詳しい処分内容は全て後日決定されるが、一先ず、貴方達親子への接見禁止令は必ず出そう。
ズィーガー夫人、それで少しは安心できるだろうか?」

「十分ですわ……。ありがとうございます」

セロンは判断が早い。的確な判断を瞬時してマリィ達の不安を取り除いてくれる。
マリィは心の底から感謝した。

「……ありがとうございます」

「いいさ。後日貴方とアーネットの両方に事情聴取し、処分や慰謝料などの話し合いを始めようと思う。辛いだろうが協力してくれると助かる」

「……慰謝料……。アーネット様が全面的に悪いと、そういうことにするつもりですか……?」

「当然だろう。これを機にあの人はもう一度自分の立場を自覚すべきだ。どんなに愛していてもその恋は永遠に叶わないということも含めてな」

力強く頷くセロンに、マリィは安心した。彼はやはり素晴らしい王太子だ。

歩いている内に3人は乗車場に着いた。
乗車場には既にズィーガー公爵家の馬車がマリィとルークを待っていた。
セロンは2人が馬車に乗り込むのを見届けるとマリィに告げた。

「気をつけて帰ってくれ。
あと、兄様に早めのうちに王城に登城するよう伝言してくれると助かる」

「伝言承りましたわ。でも……登城って何故ですか?」

「元を辿れば、兄様にも原因はある。だからきちんと今後について話したい。
貴方と来るとまた混乱を呼ぶだろうから、必ず一人で来てくれとも伝えてくれると嬉しい」

「わかりました。今日はありがとうございました。
最後は貴方に助けていただきましたね……」

セロンに向かいマリィは微笑みを浮かべた。

暗がりでも分かる美しい笑みに、セロンは目を見開き、困ったように目を逸らし頭をかいた後……ぎこちないながらも、微笑み返した。

「……お互い様だ、ズィーガー夫人。
今日は色々あったんだ。ゆっくり休んでくれ」

セロンがそう告げれば、セロンの意思を汲んだようにタイミング良く馬車の扉が閉められ、馬車は発車する。

セロンはその馬車を見えなくなるまで見送った。

誰もいなくなった乗車場。静寂と明かりの光だけがあるその空間で、セロンはため息を吐いた。

「アーネットはなんてことをしてくれたんだ。聖女祭だってあるのに……」

「本当困った子だよね~私も困ってしまうよ」

「っ!」

その聞き慣れた声にセロンはすぐさま後ろを振り返る。

そこにはセロンにニコニコと嫌な予感がするほど良い笑みを浮かべた国王がいた。




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