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第十五章 レニとユーリの神隠し

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魔石鉱山に行きたいというレニ様に付き合うと
言ったら、レンさんとキリウさんに驚かれた。

「ええ⁉︎危ないよ、魔物も出るし薄汚いし、
あんな所女の子の行くような所じゃないから!」

キリウさんの言葉にレンさんも頷く。

「子どもにはちょっと危険だと思う。俺たちが
行こうとしてる鉱山はただの魔石鉱山じゃないよ。
竜がいるかも知れないからね。」

山の中にいる竜・・・。

「土竜ですか?」

それなら見たことがある、と言ったらまた驚かれた。

「なんで知ってんの・・・⁉︎え?イスラハーンだと
よく見るとか?こっちじゃ滅多に見ないんだけど。」

ぽかんとしたキリウさんを、まるで表情豊かな
シグウェルさんを見てるみたいで面白いなあと
思いながら続きを話す。

「土竜はつがいで行動することが多いから気を付けて
対処しないといけないんですよね?石化の息を吐く
けど、その範囲を見極めて攻撃すれば慌てなくても
大丈夫だったはずです。まず足を狙って動けなくして
石化範囲を固定してからその後に石化の息を吐けない
ように喉を切ればいいんだったかな・・・」

エル君受け売りの知識とリオン様達の討伐方法を
思い出す。

「あ、そういえば石化の息を吐くタイミングに
合わせて何か別のものをわざとそこに投げつけて
それを石化させれば、すぐに次の石化攻撃は出来ない
からその後は爪とか尻尾に気を付けて対処する方法も
あります!」

石化ブレスを吐いた土竜の前に、二頭まとめて
ラーデウルフを蹴り上げたあの時のレジナスさんは
凄かった。

その時のことを思い出しながら笑顔でそう言えば、
レンさんに頭をくしゃくしゃに撫でられる。

「すごいじゃん!めっちゃ詳しい‼︎」

どう見ても20歳そこそこなレンさんに実年齢では
絶対私の方が年上なのに子ども扱いをされ、複雑な
気分で黙ってなすがままになる。

リオン様達に撫でられ褒められるのと違って、同じ
世界から来ている人にそうされるのはなんだか変な
感じだ。

そう思いながら見上げれば、リオン様そっくりな
レンさんの綺麗な青い瞳と目が合った。

私はイリューディアさんに元の姿とまるきり違う
この姿をもらったけど、純日本人なはずのレンさんの
瞳が外国人のように青いのもグノーデルさんに関係
しているのかな?

そう思いながら見つめていたら、レンさんも私を
じっと見つめてきた。

「なんかユーリちゃんて不思議だね、会ったのは
初めてなのに全然そんな感じがしない・・・。
なんだろう、目かな。その瞳を見てるとデンさんに
見られてるみたいな気がする。」

「レンさんの目も青くて綺麗です!それは勇者様
だからですか?」

「あ、そうそう。元々は黒かったんだけどデンさんに
力をもらったら何故か青くなっちゃった。」

二人でお互いの目を覗き込みながら話していたら
キリウさんがレンさんの前に、レニ様が私の前に
割り込んできた。

「ちょ、止めてレン!お前の前には嫁候補が列を
なして待ってるだろ、わざわざオレのお嫁さんを
取らないで‼︎」

「何してるんだユーリ!いくら勇者様だからって
お前から口説いてどうする⁉︎そういうのは叔父上
とかに言えよ‼︎それに青い目がいいなら俺だって!」

いや、口説いたんじゃなくて日本人なのに青い目
だから気になったんだってば。

そんなのレニ様に言ったところで仕方ないけど。

そしたらそんなレニ様の言葉をキリウさんは
聞き逃さなかった。

「えっ⁉︎ユーリちゃんはレニ君の叔父さんといい
感じなの⁉︎いくつ年上?それならオレが旦那さん
でも全然いいよね⁉︎」

・・・レニ様が変なことを言うからめんどくさい
ことになった。

私に食い下がるキリウさんを見てレンさんは呆れて
いる。

「キリウさんが必死過ぎてなんか俺、涙が出そう。
そんなに頑張らなくても黙ってればかっこいいんだし
すぐにお嫁さんなんか見つかりますよ。」

「ほらほら、ユーリちゃん聞いた⁉︎勇者様お墨付きの
優良物件がオレです!家良し、顔良し、腕も良しと
三拍子揃っている上にお嫁さんのことは大事にするし
毎日ちゃんと綺麗だよかわいい愛してる、君しか
いないって言うからね!」

レンさんの言葉に胸を張ったキリウさんは鼻を高く
して自画自賛してるけど・・・

「えーと、黙ってればの話ですよね?ちょっと
黙りましょうか、そうしたらカッコよく見えてくる
のかも・・・」

ツッコミを入れずにいられない。なんだろう、この
残念なシグウェルさんを見せられている感じは。

相対的に勇者様であるレンさんが立派な人に見えて
しまう。

「またオレに黙れって言った⁉︎かわい過ぎるでしょ、
年下なのになぜか姉さん女房感があるのもいいねぇ、
やっぱりちょっと叱られてみたい!」

ふふー、と嬉しそうに笑ってるのは何故なのか。

その様子にレニ様が「魔導士団長の顔でおかしな事を
言ってるの、すごく怖いぞ・・・」と私の影に隠れて
しまった。

なので仕方なくレニ様の代わりに私が頭を下げる。

「危険な中、迷惑かも知れませんけどぜひ一緒に
連れて行ってください、お願いします!勇者様と
一緒に手に入れた魔石なんて、帰ってからとても
自慢出来るし家宝として代々大切にしますから。
よろしくお願いします。」

とりあえずレニ様のお願いが叶えば帰れるのかどうか
試すにも、『勇者様の魔石』は絶対手に入れなければ
ならない。

それでも何も起きなければ、その時はまたレンさんに
お願いしてこの時代の勇者様の泉に連れて行って
もらおう。

そうしたらレンさんはキリウさんと顔を見合わせて
心配そうに眉根を寄せて言った。

「・・・どうしても、って言うなら仕方ないけど。
こんな森の中に子ども二人を残していくわけにも
いかないし。でも大丈夫?すぐに帰らなくて君達の
国の人達は心配しない?」

やった。同行の許可が出た。ほっとした私の後ろから
ぴょこっとレニ様が顔を出した。

「だっ、大丈夫です!ユーリの転移魔法があれば
道を辿って戻るのは一瞬だし、家には帰りが遅くなる
って転移魔法がついた便箋で手紙も出しますから!」

憧れの勇者様と一緒に行動できるチャンスだから
レニ様も必死だ。

「分かったよ、なるべく危なくないように俺たちが
守るからね。鉱山へはここからだとあと半日程度で
着くと思うし頑張ろうね。」

そう言って爽やかな笑顔を見せるレンさんは勇者様
らしく頼もしい。さすがだ。

そしてその爽やかな笑顔は頼もしいのに無邪気さも
あってなんだかかわいい。

きっとこういうところに世の女子達はクラっとくる
のかも知れない。ギャップ萌えみたいなやつだ。

それなのに、そのレンさんよりどう見ても年上の
キリウさんはまた私に向かって

「とびきり上等な魔石を手に入れたら素敵な結婚指輪
を作ろうね。そのためにも、まずはユーリちゃんの
指のサイズを知りたいからその白くてかわいい手を
出してくれるかな?」

なんて言ってきた。こちらはギャップ萌えどころか
顔の良さを台無しにする残念な喋りだ。

その様子に、思わず今日3回目の黙れを言いそうに
なった私は我慢してレンさんの作ってくれたおいしい
スープと一緒にぐっと言葉を飲み込んだのだった。




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