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序章
旅一楽座
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しばらくして馬車に乗っていた人達が目を覚まし始め、辺りを見渡している。
状況を上手く整理できず慌てていたから近くにいた人に簡単な説明をする。
「そうか…感謝する。
君が助けに来てくれなければ全員魔物の餌になっていたところだった。
…あ。俺の名はアロウだ、名を聞いても良いだろうか。」
「はい、私はミ……ミラと言います。
怪我の具合はどうですか?まだ痛みますか?」
本名を言いそうになって咄嗟に偽名を言った。
アロウさんは目を見開き慌てて左腹部の状態を確認する。
「…傷が、消えている…!これもミラ殿が治してくれたのかっ!?」
「え…っと、私は女神様にお祈りをしただけで傷を治して癒してくれたのは全て、女神様のお力です。」
(フェアレィ様がいなかったら魔力使い果たして気絶してたかも…。また後でお礼の言葉を言おう。)
「そうか…重ねがさ「ちょっとアロウ!!いつまで彼女と話すつもり?
うちと変わってよっっ!」ゴハァッ!?」
アロウさんに横タックルをした背の高い女性が私の手を握った。
「あんたがミラちゃんっ?うちはレダン、気軽にレダって呼んでよ!
うわぁ~♪カワィイイ~っ、うちらを助けてくれて本当にありがと!」
「いや、今度レダン姉貴が独り占めしてどうすんの…。」
★★
沢山の人にお礼を言われ少しこそばゆい気持ちでいると、奥から凛々しい女性が現れて私の前に立った。
周りで騒いでいた人達は一斉に2人の間の道を開けて待つ。思わずキョロキョロしてしまった。
「あたしらを助けてくれたってのは、あんさんか?
細っこい体でようあれだけの数を退治してくれて…更に家族の傷まで治してくれたとはねぇ、命の恩人様には感謝しても足りないくらいさね。
とりあえず、あたしの仮テントに来てくれるかい?」
「はい、分かりました。」
ミカエラ改めミラは、素直に彼女の後ろを着いていく。
一際豪華なテントの前に立ち、中に入るよう手招きされて慌ててお邪魔する。
「ミラ、改めて言わせてくれ。
あたしらを助けてくれた事、これ程神の導きに感謝したことがないさね。
あたしはキュスラ、旅一楽座の座長をやっている者んだが……無様な姿を見せちまってざまぁないねぇ。」
「あれだけの数で奇襲をされたら誰だってあの状況に陥ります。
今回助かった一番の理由は誰一人逃げようとせず、仲間を守りながらも立ち向かった事だと私は思いました。」
「―そう…かい、ハハッそう言ってくれると少しばかり心が晴れるさね。」
「……。」
「どうした?あまり浮かない顔しとるね。
何かあったかい…?」
「え…?」
私の額にキュスラさんが手を伸ばしてくる。
「ここ、眉間に皺がよっとる。ミラは嘘つけない子だねぇ。」
「キュスラさんに聞いても良いですか?」
キュスラは彼女の問いに頷く。
「広場で言っていた「家族」ってあそこにいた人全員が家族何ですか?
…その、何て言うか。」
「言いたい事は分かるね、あいつらは皆血が繋がっていないさ。けど血が繋がってなくとも家族になれるさね。」
―血が繋がっていないのに家族。
私が知っている家族とあまりにも違い過ぎた。
家族とは血が繋がっているだけの、他人より少し近いだけの存在何だと…。
そう、思っていた。
「家族は来世に名誉と名声を残すためのもの、なのに血が繋がっていない家族は一体何を残すの?」
キュスラは何も言わず黙って聞くもミラはそれ以降黙ってしまった。
『我が主…、あれらは最早家族ではない。
我が主の心を蝕む、害でしかない存在。』
セラフィが優しく抱き締めてくれた。
「ミラもどうやら訳ありってやつさね…。
検索するつもりはないが精霊が側にいるとはいえ、一人旅は自殺行為さね。
そこで!あたしからミラに提案したいんだが、ミラ?あたしらと旅をしないか??」
『―貴様、我が主を利用する気か。』
「違うさ、ミラや精霊が強いから誘った訳じゃない。
血が繋がらない家族は何を残すか、あんさんの目で確かめたらどうさね?
それに、偏った知識や力は必ず己の身を滅ぼす脆い刃にさえ変わる…どうさね?」
"あたしらと旅をしないか?"
状況を上手く整理できず慌てていたから近くにいた人に簡単な説明をする。
「そうか…感謝する。
君が助けに来てくれなければ全員魔物の餌になっていたところだった。
…あ。俺の名はアロウだ、名を聞いても良いだろうか。」
「はい、私はミ……ミラと言います。
怪我の具合はどうですか?まだ痛みますか?」
本名を言いそうになって咄嗟に偽名を言った。
アロウさんは目を見開き慌てて左腹部の状態を確認する。
「…傷が、消えている…!これもミラ殿が治してくれたのかっ!?」
「え…っと、私は女神様にお祈りをしただけで傷を治して癒してくれたのは全て、女神様のお力です。」
(フェアレィ様がいなかったら魔力使い果たして気絶してたかも…。また後でお礼の言葉を言おう。)
「そうか…重ねがさ「ちょっとアロウ!!いつまで彼女と話すつもり?
うちと変わってよっっ!」ゴハァッ!?」
アロウさんに横タックルをした背の高い女性が私の手を握った。
「あんたがミラちゃんっ?うちはレダン、気軽にレダって呼んでよ!
うわぁ~♪カワィイイ~っ、うちらを助けてくれて本当にありがと!」
「いや、今度レダン姉貴が独り占めしてどうすんの…。」
★★
沢山の人にお礼を言われ少しこそばゆい気持ちでいると、奥から凛々しい女性が現れて私の前に立った。
周りで騒いでいた人達は一斉に2人の間の道を開けて待つ。思わずキョロキョロしてしまった。
「あたしらを助けてくれたってのは、あんさんか?
細っこい体でようあれだけの数を退治してくれて…更に家族の傷まで治してくれたとはねぇ、命の恩人様には感謝しても足りないくらいさね。
とりあえず、あたしの仮テントに来てくれるかい?」
「はい、分かりました。」
ミカエラ改めミラは、素直に彼女の後ろを着いていく。
一際豪華なテントの前に立ち、中に入るよう手招きされて慌ててお邪魔する。
「ミラ、改めて言わせてくれ。
あたしらを助けてくれた事、これ程神の導きに感謝したことがないさね。
あたしはキュスラ、旅一楽座の座長をやっている者んだが……無様な姿を見せちまってざまぁないねぇ。」
「あれだけの数で奇襲をされたら誰だってあの状況に陥ります。
今回助かった一番の理由は誰一人逃げようとせず、仲間を守りながらも立ち向かった事だと私は思いました。」
「―そう…かい、ハハッそう言ってくれると少しばかり心が晴れるさね。」
「……。」
「どうした?あまり浮かない顔しとるね。
何かあったかい…?」
「え…?」
私の額にキュスラさんが手を伸ばしてくる。
「ここ、眉間に皺がよっとる。ミラは嘘つけない子だねぇ。」
「キュスラさんに聞いても良いですか?」
キュスラは彼女の問いに頷く。
「広場で言っていた「家族」ってあそこにいた人全員が家族何ですか?
…その、何て言うか。」
「言いたい事は分かるね、あいつらは皆血が繋がっていないさ。けど血が繋がってなくとも家族になれるさね。」
―血が繋がっていないのに家族。
私が知っている家族とあまりにも違い過ぎた。
家族とは血が繋がっているだけの、他人より少し近いだけの存在何だと…。
そう、思っていた。
「家族は来世に名誉と名声を残すためのもの、なのに血が繋がっていない家族は一体何を残すの?」
キュスラは何も言わず黙って聞くもミラはそれ以降黙ってしまった。
『我が主…、あれらは最早家族ではない。
我が主の心を蝕む、害でしかない存在。』
セラフィが優しく抱き締めてくれた。
「ミラもどうやら訳ありってやつさね…。
検索するつもりはないが精霊が側にいるとはいえ、一人旅は自殺行為さね。
そこで!あたしからミラに提案したいんだが、ミラ?あたしらと旅をしないか??」
『―貴様、我が主を利用する気か。』
「違うさ、ミラや精霊が強いから誘った訳じゃない。
血が繋がらない家族は何を残すか、あんさんの目で確かめたらどうさね?
それに、偏った知識や力は必ず己の身を滅ぼす脆い刃にさえ変わる…どうさね?」
"あたしらと旅をしないか?"
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