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序章
仲間入り
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若干の戸惑いはあったものの、断る理由が見つからなかったミラは旅一楽座に入団。
「よし!では改めて、<夢語り>へようこそミラちゃんっ!」
「<夢語り>…、それがこの旅一楽座の名前何ですか?」
「もうっ、堅っ苦しい敬語ナシナシ。
<夢語り>ってのはね、うちらがいろ~んな国を渡り歩いて得た話を語り歩く…つまり夢物語を沢山の人に聞かせてんのよ。
本当にあった話に空想や幻想をスパイスしてね?
うちらはそれを生業にしてるって訳!」
「どんな話でも良いんだ。
有名な話で言えば、勇者が仲間達と共に苦難を乗り越えて魔王を討ち滅ぼす話や、とある騎士と王女が禁断の恋の末に駆け落ちした話、後は―」
「魔女が人間の男に恋をした悲しいお話し…ある。」
アロウの背後からピョコっと顔を出したのは綺麗な女の子。ただし、無表情で人形みたいな顔で少し怖い。
「わっ?!ノアっ、脅かすな!」
「…いいお話し、ばかり…無い。」
少し空気がシーン…とした。
「ま、ノアの言う通り良い話ばっかじゃないけどね、それも人によって好みが多種多様だからお客の雰囲気や要望でって感じ。」
レダンはノアの頭を撫でながらそう教えてくれた。
★★★
ルーゼ王国へ向かう途中、一通り説明を聞き終えるとキュスラよりミラも次の公演に出たらどうかと提案が上がる。
結果、多数決で出ることとなり3つ歳上のバーバラが道中の空き時間に指導してくれる事となった。
「ふん、この私があんたの為に指導してあげるんだからありがたく思いなさい!」
「は、はい!
ご指導とご鞭撻の程宜しくお願いします。」
バーバラの迫力で思わずあの頃の癖が出てしまったことに気付かないまま頭を下げるミラ。
これを見たバーバラは訝しむ事なく、寧ろ好意的に捉えた。
「あら素直な子は好きよ、いいわっ!<夢語り>の舞姫の名にかけてあんたを舞台に立たせても恥ずかしくない踊りを叩き込むわっっ、覚悟なさい!!」
ストロベリーブロンズの髪を優雅に払いビシッと指差さしたバーバラはやる気に満ちていた…それはそれはいい笑顔で。
選択を間違えたかも…と思わせるくらいに。
それからしばらくの間、旅をしながらバーバラの猛特訓と稽古に励んだ。体の基礎から鍛えなければならず、毎夜ばったりと倒れてるように寝床につき日の出と共に起きてまた特訓。
しかしミラは弱音を吐かなかった。
バーバラの指導の仕方が良かったということもあるが、今まで努力を人一倍していた彼女からしてみれば序の口だと思っていた。
『我が主、また無理をしてはおらぬか?』
「え…?ふふっ、無理なんてしてないよ?
だって頑張った分だけバーバラさんは誉めてくれるの、まるで自分のことのように喜んでくれるから…今、凄く楽しい。」
するとセラフィは穏やかな笑みを浮かべ、『それは良き事だ。』と言い私を眠りに誘う歌を歌ってくれた。
『望む明日が幸多からん事をー。』
次の日。
バーバラの後ろに着いていき旅一楽座の皆の前に立つ。
そう、御披露目だ。
「さて私の弟子の御披露目会よっ、あんた達はその目を見開いてしっかり見なさい!そして感嘆しなさい!!」
「出たっ、バーバラ姉貴のえび反り!」
「だまらっしゃい!」
天幕の向こう側がやけに騒がしい……どうしよう、今になって緊張してきた。
『大丈夫っすよ、ミカエラちゃんは十分練習してきたんすからもっと自信を持つっす。』
『そうですよ主様、それに私達もお供します故…安心して舞踊を楽しんで下さいませ。』
「そうだね、皆…ここにいてくれるもの。」
『我が主、失敗に怯えなくとも良い。
ここは例え失敗したとしても誰も咎める者はおらぬ。…そうであろう?』
ーそうだ。
私は何に怯えていたんだろう?
失敗しても、いいんだ。もう怖がらなくていいんだ。
「そっか……。ありがとう、セラフィ!
皆も一緒に楽しもうねっ!」
さっきまで重かった足取りが、いつの間にか軽くなっていた。
「よし!では改めて、<夢語り>へようこそミラちゃんっ!」
「<夢語り>…、それがこの旅一楽座の名前何ですか?」
「もうっ、堅っ苦しい敬語ナシナシ。
<夢語り>ってのはね、うちらがいろ~んな国を渡り歩いて得た話を語り歩く…つまり夢物語を沢山の人に聞かせてんのよ。
本当にあった話に空想や幻想をスパイスしてね?
うちらはそれを生業にしてるって訳!」
「どんな話でも良いんだ。
有名な話で言えば、勇者が仲間達と共に苦難を乗り越えて魔王を討ち滅ぼす話や、とある騎士と王女が禁断の恋の末に駆け落ちした話、後は―」
「魔女が人間の男に恋をした悲しいお話し…ある。」
アロウの背後からピョコっと顔を出したのは綺麗な女の子。ただし、無表情で人形みたいな顔で少し怖い。
「わっ?!ノアっ、脅かすな!」
「…いいお話し、ばかり…無い。」
少し空気がシーン…とした。
「ま、ノアの言う通り良い話ばっかじゃないけどね、それも人によって好みが多種多様だからお客の雰囲気や要望でって感じ。」
レダンはノアの頭を撫でながらそう教えてくれた。
★★★
ルーゼ王国へ向かう途中、一通り説明を聞き終えるとキュスラよりミラも次の公演に出たらどうかと提案が上がる。
結果、多数決で出ることとなり3つ歳上のバーバラが道中の空き時間に指導してくれる事となった。
「ふん、この私があんたの為に指導してあげるんだからありがたく思いなさい!」
「は、はい!
ご指導とご鞭撻の程宜しくお願いします。」
バーバラの迫力で思わずあの頃の癖が出てしまったことに気付かないまま頭を下げるミラ。
これを見たバーバラは訝しむ事なく、寧ろ好意的に捉えた。
「あら素直な子は好きよ、いいわっ!<夢語り>の舞姫の名にかけてあんたを舞台に立たせても恥ずかしくない踊りを叩き込むわっっ、覚悟なさい!!」
ストロベリーブロンズの髪を優雅に払いビシッと指差さしたバーバラはやる気に満ちていた…それはそれはいい笑顔で。
選択を間違えたかも…と思わせるくらいに。
それからしばらくの間、旅をしながらバーバラの猛特訓と稽古に励んだ。体の基礎から鍛えなければならず、毎夜ばったりと倒れてるように寝床につき日の出と共に起きてまた特訓。
しかしミラは弱音を吐かなかった。
バーバラの指導の仕方が良かったということもあるが、今まで努力を人一倍していた彼女からしてみれば序の口だと思っていた。
『我が主、また無理をしてはおらぬか?』
「え…?ふふっ、無理なんてしてないよ?
だって頑張った分だけバーバラさんは誉めてくれるの、まるで自分のことのように喜んでくれるから…今、凄く楽しい。」
するとセラフィは穏やかな笑みを浮かべ、『それは良き事だ。』と言い私を眠りに誘う歌を歌ってくれた。
『望む明日が幸多からん事をー。』
次の日。
バーバラの後ろに着いていき旅一楽座の皆の前に立つ。
そう、御披露目だ。
「さて私の弟子の御披露目会よっ、あんた達はその目を見開いてしっかり見なさい!そして感嘆しなさい!!」
「出たっ、バーバラ姉貴のえび反り!」
「だまらっしゃい!」
天幕の向こう側がやけに騒がしい……どうしよう、今になって緊張してきた。
『大丈夫っすよ、ミカエラちゃんは十分練習してきたんすからもっと自信を持つっす。』
『そうですよ主様、それに私達もお供します故…安心して舞踊を楽しんで下さいませ。』
「そうだね、皆…ここにいてくれるもの。」
『我が主、失敗に怯えなくとも良い。
ここは例え失敗したとしても誰も咎める者はおらぬ。…そうであろう?』
ーそうだ。
私は何に怯えていたんだろう?
失敗しても、いいんだ。もう怖がらなくていいんだ。
「そっか……。ありがとう、セラフィ!
皆も一緒に楽しもうねっ!」
さっきまで重かった足取りが、いつの間にか軽くなっていた。
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