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【Destination】プロローグ
第10話 怨魔(えんま)
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地獄の使者ベルゴルド軍の上陸により、焦土と化したジャポル。激しい戦火にさらされた国民は、平和な日常と夢や希望、明るい未来を奪われ絶望の淵へと追いやられていた。言葉では言いあらわせない苦難の日々。
愛する人を弄ばれようと、連れ去られようと、武器を持った屈強な軍人に太刀打ちする術はなく、されるがまま。
ベルゴルド兵は目の前で妻が犯され、発狂する夫の髪の毛を掴んで顔をあげさせ「お前の妻は俺たちのものに満足し、涙を流して悦んでいる。一緒に喜んでやれ!この状況を目に焼きつけろ。妻ひとり守れない弱者よ」と頭に銃を突きつけ、笑うよう強要。
数人のベルゴルド兵に弄ばれたあと、妻は胸を撃ち抜かれて射殺、夫は釈放されるが正気を保てず生き地獄を味わう。
こうした非人道的な暴力行為は日を追うごとにエスカレート。生き残った者たちは、己の無力さに絶望、集団自決する事態が相次いだ。
深い悲しみと込みあげる怒りをこらえながら、ジャポル人はサイカン地方、カサイの村の山奥にある小屋を訪問。
この村には、古くから伝わる技術を受け継いだ、質の良い武具を作る技術者がいた。彼らが作った防具は銃弾や刃物をとおさず、武器は敵の鎧ごと両断する切れ味。ジャポル国民は職人に武器の製造を依頼するが。
「どんな理由があろうとも、人殺しの道具は作らない」と申し入れを拒否する職人。しかし、「なんとしてもジャポルを守りたい」という国民の強い思いに心を揺り動かされ、やむを得ず武具製造を承諾。
武器を手にしたジャポル国民は、国の警察とSDF(Self Defense Forces)に入隊を認めてもらえるよう志願しに行く。
SDFとはジャポル独自の組織で、その主たる任務は他国の侵略ではなく自国の平和と独立を守ること。警戒監視態勢を維持し、非常事態の発生を未然に防ぐのが役目で実戦の経験は皆無。
だが、名工が平和への願いを込めて作った武具を手にジャポル国民と一致団結。勇気を振り絞り、愛する者のため、愛する国のため、自国の未来のため、自らの命を懸けた戦闘を決意。
「数日ともたず、涙を流して降伏するだろう」それが大方の予想で、だれもがそう信じて疑わなかった。だが、ジャポル人はその予想を大きく覆す。
凄まじい気迫で世界最強クラスのベルゴルド軍を相手に善戦、互角以上の戦いを展開。
全面侵攻による迅速な勝利を見込んでいたベルゴルドは、弱小国であるジャポルからの反撃を想定しておらず、苦戦を強いられ驚きと戸惑いを隠せなかった。
その後もジャポル軍は、一度奪われた土地を取り返し、ベルゴルド軍の攻撃を跳ね返し続けた。
「このまま勝利をおさめるのではないか」それほど勢いのあったジャポル軍の前に、突如として正体不明の化け物が現れる。
その化け物がいつ、どこで、どのようにして生まれたのか、どこからやって来たのかは一切不明。
化け物は人よりも獣に近い姿をしており、理性や知性をもたない。言葉を扱えず話し合いは通用しない。人間よりも二回りほど大きな体、猛獣のような牙と刃物のような爪、そして、人智を遥かに超える身体能力と腕力をもつ。
人間を見るとこの世の者とは思えぬ雄叫びをあげながら、怨みを晴らすかのように、人の体を牙と爪でひき裂いて殺し、肉から骨にいたるまで、すべて喰らい尽くす。それは老若男女問わず、ベルゴルド軍であろうと見境はない。
腕力だけではなく、凄まじい生命力も兼ね備えており頭を銃で撃ち抜いても、体を半分に斬り裂いても、首を切り落としても、たちまち傷を回復させて襲いかかってくる。
槍で心臓を潰したときのみ、わずかに回復を遅らせることは可能だったが、それでも逃げる時間を稼ぐのが精一杯。
怨みをはらすかのように、人を殺して喰らう姿から、その魔物はいつしか怨魔えんまと呼ばれ、人々から忌み嫌われ恐れられる存在となる。
そんななか、ジャポルの生物化学研究チームは、軍が命懸けで採取した血液をもとに、怨魔の生態系、身体の作りについて分析をはじめる。
その結果、細胞は一定の状態で若返りを繰り返し老化による弱体化がない、毒素や病原菌、酸を打ち込んでも解毒・回復すると解明。
徹底した調査を続けるが、なぜ、ほかの動物には目もくれず人だけを襲い捕食するのか、不老不死の秘密、繁殖方法、生まれた起源、倒しかたなど肝心なことは、なにひとつわからず。
最終的にチームが導きだした答えは、「怨魔には寿命がなく、何十年、何百年でも生きる、毒やウイルスによる攻撃は無意味。化け物にはそれぞれ個体差があり、体の大きさが微妙に違い、同じ風貌をしたものはいない」という単純明快なことのみ。
だが、ある日、怨魔が火災の起こった建物を極度に恐れ近づこうとしない姿を目撃した男がいた。このことから、怨魔の弱点は「炎」ではないかとの声があがる。
その推測どおり、炎を用いて体を焼き尽くすと怨魔は絶命。失意のドン底にいたジャポル人は、怨魔を倒す方法を知り、希望の光を見いだす。
しかし、この戦時中、ガソリンや灯油などの燃料はかなりの貴重品。大きな体をもつ怨魔を焼き尽くすのは容易ではない。
一匹倒すのもひと苦労な相手に、群れとなってかかって来られると対処できず、次々とあらわれる怨魔に状況は好転するどころか悪化する一方。
無作為に暴れまわる怨魔を見たベルゴルド軍は、これを好機ととらえ、いったん様子見。
「戦争にルールは存在しない。勝利という結果こそがすべて」それがベルゴルドの絶対的しきたり。
武具をもつ者が怨魔に殺され、無力な女や子供、老人だけが残っている村と街を中心に襲撃する戦法に打ってでる。
火炎放射器、爆薬などの火器を多く所有するベルゴルドにとって、怨魔はこのうえない援軍となり追い風となる。
愛する人を弄ばれようと、連れ去られようと、武器を持った屈強な軍人に太刀打ちする術はなく、されるがまま。
ベルゴルド兵は目の前で妻が犯され、発狂する夫の髪の毛を掴んで顔をあげさせ「お前の妻は俺たちのものに満足し、涙を流して悦んでいる。一緒に喜んでやれ!この状況を目に焼きつけろ。妻ひとり守れない弱者よ」と頭に銃を突きつけ、笑うよう強要。
数人のベルゴルド兵に弄ばれたあと、妻は胸を撃ち抜かれて射殺、夫は釈放されるが正気を保てず生き地獄を味わう。
こうした非人道的な暴力行為は日を追うごとにエスカレート。生き残った者たちは、己の無力さに絶望、集団自決する事態が相次いだ。
深い悲しみと込みあげる怒りをこらえながら、ジャポル人はサイカン地方、カサイの村の山奥にある小屋を訪問。
この村には、古くから伝わる技術を受け継いだ、質の良い武具を作る技術者がいた。彼らが作った防具は銃弾や刃物をとおさず、武器は敵の鎧ごと両断する切れ味。ジャポル国民は職人に武器の製造を依頼するが。
「どんな理由があろうとも、人殺しの道具は作らない」と申し入れを拒否する職人。しかし、「なんとしてもジャポルを守りたい」という国民の強い思いに心を揺り動かされ、やむを得ず武具製造を承諾。
武器を手にしたジャポル国民は、国の警察とSDF(Self Defense Forces)に入隊を認めてもらえるよう志願しに行く。
SDFとはジャポル独自の組織で、その主たる任務は他国の侵略ではなく自国の平和と独立を守ること。警戒監視態勢を維持し、非常事態の発生を未然に防ぐのが役目で実戦の経験は皆無。
だが、名工が平和への願いを込めて作った武具を手にジャポル国民と一致団結。勇気を振り絞り、愛する者のため、愛する国のため、自国の未来のため、自らの命を懸けた戦闘を決意。
「数日ともたず、涙を流して降伏するだろう」それが大方の予想で、だれもがそう信じて疑わなかった。だが、ジャポル人はその予想を大きく覆す。
凄まじい気迫で世界最強クラスのベルゴルド軍を相手に善戦、互角以上の戦いを展開。
全面侵攻による迅速な勝利を見込んでいたベルゴルドは、弱小国であるジャポルからの反撃を想定しておらず、苦戦を強いられ驚きと戸惑いを隠せなかった。
その後もジャポル軍は、一度奪われた土地を取り返し、ベルゴルド軍の攻撃を跳ね返し続けた。
「このまま勝利をおさめるのではないか」それほど勢いのあったジャポル軍の前に、突如として正体不明の化け物が現れる。
その化け物がいつ、どこで、どのようにして生まれたのか、どこからやって来たのかは一切不明。
化け物は人よりも獣に近い姿をしており、理性や知性をもたない。言葉を扱えず話し合いは通用しない。人間よりも二回りほど大きな体、猛獣のような牙と刃物のような爪、そして、人智を遥かに超える身体能力と腕力をもつ。
人間を見るとこの世の者とは思えぬ雄叫びをあげながら、怨みを晴らすかのように、人の体を牙と爪でひき裂いて殺し、肉から骨にいたるまで、すべて喰らい尽くす。それは老若男女問わず、ベルゴルド軍であろうと見境はない。
腕力だけではなく、凄まじい生命力も兼ね備えており頭を銃で撃ち抜いても、体を半分に斬り裂いても、首を切り落としても、たちまち傷を回復させて襲いかかってくる。
槍で心臓を潰したときのみ、わずかに回復を遅らせることは可能だったが、それでも逃げる時間を稼ぐのが精一杯。
怨みをはらすかのように、人を殺して喰らう姿から、その魔物はいつしか怨魔えんまと呼ばれ、人々から忌み嫌われ恐れられる存在となる。
そんななか、ジャポルの生物化学研究チームは、軍が命懸けで採取した血液をもとに、怨魔の生態系、身体の作りについて分析をはじめる。
その結果、細胞は一定の状態で若返りを繰り返し老化による弱体化がない、毒素や病原菌、酸を打ち込んでも解毒・回復すると解明。
徹底した調査を続けるが、なぜ、ほかの動物には目もくれず人だけを襲い捕食するのか、不老不死の秘密、繁殖方法、生まれた起源、倒しかたなど肝心なことは、なにひとつわからず。
最終的にチームが導きだした答えは、「怨魔には寿命がなく、何十年、何百年でも生きる、毒やウイルスによる攻撃は無意味。化け物にはそれぞれ個体差があり、体の大きさが微妙に違い、同じ風貌をしたものはいない」という単純明快なことのみ。
だが、ある日、怨魔が火災の起こった建物を極度に恐れ近づこうとしない姿を目撃した男がいた。このことから、怨魔の弱点は「炎」ではないかとの声があがる。
その推測どおり、炎を用いて体を焼き尽くすと怨魔は絶命。失意のドン底にいたジャポル人は、怨魔を倒す方法を知り、希望の光を見いだす。
しかし、この戦時中、ガソリンや灯油などの燃料はかなりの貴重品。大きな体をもつ怨魔を焼き尽くすのは容易ではない。
一匹倒すのもひと苦労な相手に、群れとなってかかって来られると対処できず、次々とあらわれる怨魔に状況は好転するどころか悪化する一方。
無作為に暴れまわる怨魔を見たベルゴルド軍は、これを好機ととらえ、いったん様子見。
「戦争にルールは存在しない。勝利という結果こそがすべて」それがベルゴルドの絶対的しきたり。
武具をもつ者が怨魔に殺され、無力な女や子供、老人だけが残っている村と街を中心に襲撃する戦法に打ってでる。
火炎放射器、爆薬などの火器を多く所有するベルゴルドにとって、怨魔はこのうえない援軍となり追い風となる。
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