雨のふる星、遠い星

依久

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14話 発作

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雨星  14話


アスランにとってのメリット…。


あたしが難しい顔をしたら、宿題な!と言い残しアスランは去って行った。



いけない!
あたしも仕事に戻らなきゃ帰れない…。



「シルヴィア、どこまでコーヒー買いに行ってたの?」
「あ、アリス」
「お先に~」
「お疲れ様」
「あ、そうそう。アスラン戻って来てるわよ」
「え?あ、そうなの?」



思わず空惚けてしまった。
だって間接キスしちゃった事、まだ動揺している。
男は初めてじゃないでしょっ!
と、自分にツッコミを入れた。



あたしは仕事に戻り、黙々とキーボードの上に指を滑らせた。



黙々と仕事をしないと余計なことを考えてしまう。



エルダの事。




それから、アスランがなにを考えてあたしにルル型をプレゼントしようとしたのか。



彼に贈り物をされるような心当たりはない。



オムレツを食べさせてもらったお礼に、あたしが彼にプレゼントをする、という方が話の筋が通る。



うっかりすると、心の中で、なぜ?なぜ?と疑問符ばかりが浮かぶ。



こうして仕事があるのは有難い。
あたしみたいな人間は、時間が出来ると物事を悪い方へと考えてしまう。



それは、あの事故が大きく絡んでいる。








頭の中で閃光が煌めいた。
それはとても美しかった。
たくさんの命を燃やしたその光は、恐ろしいほど美しかった。



あたしは、ぶるりと身を震わせた。
事故の一件から逃げてきたのにわざわざ思い出して自分を追い詰めてどうするのよ…。



一度ぐらついた気持ちはどんどん傾いでいく。




ダレカタスケテ!



すでにキーボードの上の手は止まり、コンピュータの画面は見えているのにそこに写っている数字がただの模様に見えた。




ああ、ダメ。
ここは職場。せめて家に帰らなくては…。




あたしは発作の前兆を感じた。




心臓がバクバクする。
呼吸が速くなる。




まずい!




デスクの引き出しからハンドタオルを取り出すと口元にあてた。



過呼吸…



ゆっくり、ゆっくり、落ち着いて、落ち着いて…………



「シルヴィア!」
「あ……」
「様子が変だけど、どうしたんだ?」




あたしはハンドタオルを口元にあてたまま固まってしまった。




見られたくなかった。
ずっとおさまっていたから薬は持っていなかった。




「過呼吸だな。病院へ行くぞ」




アスランはコンピュータの電源を落とした。




「もう、女子社員は誰も残っていない。ロッカーについて行くから荷物、取りに行こう!」
「放っておいて……」
「そんな事出来るかよ。過呼吸、軽く見るとえらい目にあうぞ。先に救急外来に予約を入れる。落ち着き次第動くぞ」




アスランは、あたしを支えながらロッカーまで付き合ってくれタクシーを呼んでくれた。




「一人で行ける」
「今日は甘えとけ!」




アスランは、あたしをタクシーに押し込むと行き先入力してスタートキーを押した。




タクシーに内蔵されているナビが反応して自動運転で動き出した。









 

検査結果は特に異常はなく、精神的なものだろうと抗うつ剤を処方された。




その後、一人には出来ないからとアスランが半ば強制的にあたしを自分の家に連れ込んだ。




前と同じようにあたしはアスランのベッドをソファーがわりにして腰掛けていた。




目の前には処方された薬とお水を持ったアスランが立っていた。




また、これを飲むのか。
嫌だな……。




「薬だ。飲んどけ」




あたしは、駄々っ子みたいにふるふると首を振った。




「気持ちが安定するのを薬に助けてもらうんだ。それと並行してキチンと心療内科受診する事!わかった?」
「アスラン、お医者様よりうるさい」
「黙れ、病人。今日は泊まっていけ」
「あたしの事なんか放っておいてよ」
「放っておけるかよ」
「あたしなんて……」




どうなってもいいの……。




「ふうん、飲むのが嫌なら俺が飲ませてもいいよな?」
「飲ませるって…」
「決まってる。口移ししかないだろうが!」
「その薬、すごく不味いから」




あたしの言葉を無視して、アスランは口に水を含んだ。



そしてあたしの口を開け薬を放り込んだ。
アスランの綺麗な顔が近づいて来たのであたしは彼からコップを取り上げると自分で水を飲んだ。




口内に不味い味が広がり、吐き出したくなるのを我慢してゴクリと飲みこんだ。




アスランはしてやったりとニヤリとすると間髪入れずキャンディを取り出しあたしの口の中に放り込んだ。




「美味しい…」



なぜだか涙が溢れた。




頼る人もいないこの星でこんなふうに親切にされた事なんか無かった。




ぷつんと糸が切れたように泣くあたしの背中を彼は優しくさすってくれた。


つづく

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