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10そして……
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歌声がベールを揺らす。
膨らんだ胎に手を置いた女の口から、この世のものとは思えないほど美しい子守歌が甘く響く。
いつ赤子が産まれてもおかしくないほどに膨らんだ胎を愛しそうに撫でて女は歌う。
「~~~~♪」
びちゃりと水音がして女の胎から赤子が産まれる。
「クスクスクス」
幾人も産み落とし、やっと産まれた女に似た面差しの、ピンクブロンドと甘い香りを持つ娘。
そう聞かされて女は満足そうに目を閉じる。
「やっと……」
眠れる、と呟いて女は呼吸を止めた。
空っぽの棺の周りを男たちの棺が囲む。
雲一つなお青空の下、真っ白な花束を抱えたベールに包まれた女がそれを見下ろす。
ピンクブロンドが風に揺れ、ベールを揺らす。
「クスクス」
甘い、甘い笑い声と共に抱えられていた花束が空中に放り出されパラパラと意味のない墓に落ちていく。
「クスクス」
ひと際強く吹いた風がベールを持ち上げ、女の顔を陽の下に晒す。
「クスクス」
それは、どこまでも美しく蠱惑的な、女の顔。
バサリと羽音が響き、白と黒の羽根が舞う。
ベールが下りて女の顔が隠されると、女は墓から離れていく。
その後姿から甘い香りがしたが、風がそれを隠すように上へと舞い上がり、墓に舞い散った真っ白な花ですら、遠くに運ばれていった……。
膨らんだ胎に手を置いた女の口から、この世のものとは思えないほど美しい子守歌が甘く響く。
いつ赤子が産まれてもおかしくないほどに膨らんだ胎を愛しそうに撫でて女は歌う。
「~~~~♪」
びちゃりと水音がして女の胎から赤子が産まれる。
「クスクスクス」
幾人も産み落とし、やっと産まれた女に似た面差しの、ピンクブロンドと甘い香りを持つ娘。
そう聞かされて女は満足そうに目を閉じる。
「やっと……」
眠れる、と呟いて女は呼吸を止めた。
空っぽの棺の周りを男たちの棺が囲む。
雲一つなお青空の下、真っ白な花束を抱えたベールに包まれた女がそれを見下ろす。
ピンクブロンドが風に揺れ、ベールを揺らす。
「クスクス」
甘い、甘い笑い声と共に抱えられていた花束が空中に放り出されパラパラと意味のない墓に落ちていく。
「クスクス」
ひと際強く吹いた風がベールを持ち上げ、女の顔を陽の下に晒す。
「クスクス」
それは、どこまでも美しく蠱惑的な、女の顔。
バサリと羽音が響き、白と黒の羽根が舞う。
ベールが下りて女の顔が隠されると、女は墓から離れていく。
その後姿から甘い香りがしたが、風がそれを隠すように上へと舞い上がり、墓に舞い散った真っ白な花ですら、遠くに運ばれていった……。
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作者さんの他の作品からこの作品まで辿って来ました!とても引き込まれもっとみたい!という思いでいっぱいになりました。ありがとうございます。
他の作品からよくぞここまで!ありがとうございます!
ひきこまれたわ〜。面白かった!
ありがとうございます(*´ω`*)
南の町に行かされた親子の末路を見てみたいです。
ありがとうございます(*´ω`*)